疲労骨折

疲労骨折は、一度の強い力ではなく、小さな負担が繰り返し加わることで、骨に亀裂が生じるものです。

普通の骨折と大きく違う点が2つあります。

  1. 「折れた瞬間」がありません。 転んだ、ぶつけた、という記憶がないまま、いつの間にか痛みが出てきます。
  2. 初期はレントゲンに写りません。 そのため「異常なし」と言われ、練習を続けてしまうことがあります。

この2つが重なるため、疲労骨折は見逃されやすく、気づいたときには進行していることがあります。

なぜ折れるのか

骨は、生きた組織です。負担がかかると微細な損傷が生じますが、休んでいる間に体がそれを修復します。この「損傷」と「修復」のバランスが取れている限り、骨は壊れません。

ところが、次のような状況では、修復が追いつかなくなります。

  • 練習量が急に増えた(新チーム、新入生、大会前、合宿)
  • 休養日が少ない
  • 同じ動作を繰り返す競技(長距離走、サッカー、バスケットボール、野球、バレエ、剣道)
  • 硬い路面での練習
  • 靴が合っていない、すり減っている
  • フォームの偏り
  • 栄養やエネルギーが足りていない

つまり疲労骨折は、「使いすぎ」というより「回復が追いつかないうちに次の負担がかかった」状態です。

選手のがんばりや、指導が悪かったという話ではありません。 成長期であること、大会が近いこと、環境が変わったこと——複数の条件が重なって起こります。

起こりやすい場所

競技によって、負担のかかる場所が異なります。

  • すね(脛骨):長距離走、サッカー、バスケットボール。最も多い部位のひとつです
  • 足の甲(中足骨):ランニング、ダンス、バレエ
  • 腰(腰椎):腰椎分離症として知られ、体を反らす・ひねる競技(サッカー、野球、バレーボール、剣道)の中高生に多くみられます
  • 肋骨:ゴルフ、ボート、投球動作
  • 太もも(大腿骨)、骨盤(恥骨):長距離走
  • 腕(尺骨・橈骨):体操、テニス

症状

  • 運動をすると、同じ場所が痛む
  • 休むと軽くなり、再開すると戻る
  • 進行すると、日常生活でも痛むようになる
  • 押すと一点だけ、はっきり痛む場所がある
  • その部分が腫れる、熱をもつことがある
  • ケガをした記憶がない

「最初は練習の後半だけ痛かったのが、だんだん早い段階から痛むようになった」という経過は、進行しているサインです。

見逃されやすい理由

レントゲンに写らないことがある

疲労骨折の初期は、骨に細い亀裂が入っているだけで、レントゲンでははっきり写らないことがよくあります。骨が修復を始めて周囲に新しい骨ができてくると、ようやく写るようになります。

そのため、痛み始めてすぐの時期に撮ったレントゲンで「異常なし」と言われることは、珍しくありません。

ここが最も注意していただきたい点です。 「レントゲンで異常がないから大丈夫」と練習を続けると、亀裂が広がり、完全な骨折に至ることがあります。

症状が軽く、我慢できてしまう

痛みが強くないため、「そのうち治る」と続けてしまいがちです。とくに大会が近い時期には、選手自身が痛みを言い出さないこともあります。

対応

レントゲンで異常がなくても、症状と診察所見から疲労骨折が疑われる場合には、次のいずれかで確かめます。

  • 超音波(エコー)検査:骨の表面の変化や、周囲の反応を観察できます。当院では院内で行えます
  • 時間をおいてレントゲンを撮り直す:2〜3週間後に写ってくることがあります
  • MRI:早い段階から骨の内部の変化を捉えられます。連携医療機関での撮影となります

「異常なし」で終わらせず、症状が続く場合は必ず再度ご相談ください。

女性アスリートの方へ

女性の場合、疲労骨折の背景に、次の3つが関わっていることがあります。

① 利用可能エネルギー不足
運動量に対して食事からのエネルギーが足りていない状態です。体重を気にして食事を制限している場合だけでなく、練習量に食事が追いついていない場合にも起こります。

② 月経の異常
月経が来ない、間隔が空くといった状態が続くと、女性ホルモンが不足します。

③ 骨密度の低下
女性ホルモンには骨を守るはたらきがあるため、①②が続くと骨がもろくなります。

この3つは連鎖して起こることが知られており、疲労骨折を繰り返す原因になります。

「月経が止まっているのは、練習量が多いからで、むしろ調子がいい証拠」という考え方は誤りです。 これは体がエネルギー不足に対応しようとしているサインであり、骨をはじめ体のさまざまな面に影響します。

月経について診察で話すのは気が引けるかもしれませんが、疲労骨折を繰り返す方、なかなか治らない方にとっては重要な情報です。差し支えなければお伝えください。必要に応じて、婦人科と連携して対応します。

診断

問診では、いつから・どこが・どんなときに痛むか、競技と練習量、練習量が変わった時期、靴、食事の状況をうかがいます。女性の場合は月経の状況もお聞きすることがあります。

診察では、押して痛む場所を一点ずつ特定します。腫れ、熱感、その部位を叩いたときの痛みも確認します。

レントゲン、必要に応じて超音波(エコー)検査を行います。判断がつかない場合は、時間をおいて撮り直すか、MRIをご案内します。腰椎分離症が疑われる場合には、CTやMRIでの評価が必要になることがあります。

治療

基本は「負担をかけない期間をつくる」こと

疲労骨折は、原因となっている負担を取り除けば治る骨折です。逆にいえば、負担が続く限り治りません。

  • 競技の練習を休む:期間は部位と進行度によって異なります
  • 必要に応じて固定・松葉杖:体重をかけられない部位の場合
  • 痛みへの対応:内服・外用

ただし、完全に何もしないわけではありません。 痛みの出ない範囲で、上半身のトレーニング、体幹強化、水中運動などを行い、復帰に備えます。当院には理学療法士が常勤しており、保険診療の範囲で、この時期の運動指導を受けていただけます。

再発を防ぐために

疲労骨折は、同じ条件が続けば再び起こります。 治すことと同じくらい、原因を見直すことが大切です。

  • 練習量と休養のバランス
  • フォーム・体の使い方
  • 柔軟性・筋力のバランス
  • 靴・路面
  • 栄養とエネルギー
  • (女性の場合)月経の状況

リハビリテーションでは、これらの評価と、段階的な復帰の計画づくりを行います。

手術

治りにくい部位(腰椎分離症の一部、足の特定の骨など)や、完全骨折に至った場合には、手術が検討されることがあります。当院では手術は行っておりません。 必要と判断した場合には、専門的な治療を行う医療機関へご紹介します。

よくあるご質問

Q. 痛いけれど走れます。休まないとだめですか?
走れるかどうかではなく、骨が修復できているかどうかが問題です。痛みを我慢して続けると、亀裂が広がって完全な骨折に至ることがあります。状態を確かめたうえで判断しましょう。

Q. どのくらいで治りますか?
部位と進行度によって大きく異なります。数週間で復帰できるものもあれば、数か月を要するものもあります。診察の際に見通しをご説明します。

Q. レントゲンで異常なしと言われました。
初期の疲労骨折はレントゲンに写らないことがあります。症状が続く場合は、時間をおいて撮り直すか、他の検査で確かめる価値があります。

Q. 大会が近いのですが。
事情は遠慮なくお話しください。状態によっては、痛みを抑えながら出場を目指せる場合もあれば、続けると長期離脱になる場合もあります。 どちらなのかを診察で見極めたうえで、ご一緒に判断しましょう。

Q. 何科を受診すればよいですか?
運動時の骨の痛みは整形外科でご相談いただけます。当院では整形外科専門医が診察・検査を行い、必要に応じて追加の検査をご案内します。

お仕事中・通勤中のけがの場合は、労災保険での治療になります。くわしくは労災(お仕事中・通勤中のけが)をご覧ください。

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