交通事故後の痛み・むちうち

「事故のときは気が動転していて、痛みは感じなかった」「翌朝になって首が回らなくなった」「もう1週間たつが、頭痛とだるさが取れない」——交通事故のあとの体の不調は、事故の当日ではなく、数時間から数日たってから現れることが少なくありません。

そして事故のあとは、警察への連絡、保険会社とのやり取り、車の手配と、やるべきことが一度に押し寄せます。そのなかでご自身の体のことは後回しになりがちです。

このページでは、事故直後にしておいたほうがよいことと、受診の目安をご説明します。

痛みがなくても、早めに受診してください

事故の直後は、緊張や興奮状態の影響で痛みを感じにくくなることが知られています。「大丈夫だと思った」というのは、決して思い過ごしではなく、体の自然な反応です。

早めの受診をおすすめする理由は2つあります。

① 症状が後から出てくることがあるため
数時間から数日たって心身が落ち着いたころに、首や腰の痛み、頭痛、だるさが現れてくることは珍しくありません。

② 事故との関係を確かめておくため
時間が経ってから受診すると、その症状が事故によるものかどうかの判断が難しくなることがあります。事故のあと、できるだけ早い時期に一度受診しておくことには、医学的にも手続きのうえでも意味があります。

「たいしたことはないと思うが、念のため」という受診の仕方で構いません。

事故直後にしておきたいこと

① 警察へ届け出る

事故の大小にかかわらず、必ず警察へ連絡してください。届け出がないと、事故があったことの証明(交通事故証明書)が発行されません。

② 人身事故への切り替えを検討する

物損事故として届け出た場合でも、あとから体の症状が出てきたときには、人身事故への切り替えが必要になることがあります。この手続きには、医師が作成する診断書が必要です。

切り替えには期限の考え方がありますので、症状が出てきた場合は早めに医療機関を受診し、警察や保険会社にご相談ください。

③ 相手方・保険会社の情報を控えておく

相手方の氏名・連絡先、車のナンバー、加入している保険会社の名称と連絡先。可能であれば事故の状況を写真に残しておくと、後の手続きで役立ちます。

④ 医療機関を受診する

痛みがなくても、事故のあとは一度受診してください。

むちうち(頚椎捻挫)の症状

追突などの衝撃で首が急激に前後に揺さぶられ、首の筋肉や靭帯を傷めた状態を、一般にむちうちと呼びます。正式には頚椎捻挫などと診断されます。

首以外にも症状が出ることがあります

  • 頭痛(後頭部から側頭部にかけて)
  • めまい・ふらつき
  • 吐き気
  • 耳鳴り
  • 腕や手のしびれ
  • 背中・腰の痛み(腰も同時に捻挫していることがあります)
  • だるさ・集中しにくさ・眠りにくさ

「首以外の症状は事故と関係ないのでは」と思われる方がいらっしゃいますが、こうした症状はむちうちに伴ってよくみられるものです。気になる症状は、小さなことでも診察の際にお伝えください。

むちうちの病態や治療の詳しい内容はむちうち(頚椎捻挫)のページでご説明しています。

こんなときは、急いで受診してください

事故のあとに次の症状がある場合は、様子を見ずに、救急対応が可能な医療機関へご相談ください。

  • 意識がもうろうとする、記憶が曖昧な時間がある
  • 激しい頭痛、繰り返す嘔吐
  • 手足が動かしにくい、力が入らない
  • 両手・両足にしびれがある
  • 排尿・排便の感覚がおかしい
  • 胸や腹部の強い痛み、息苦しさ
  • 出血が止まらない、明らかな変形がある

頭部を打った場合は、受傷から時間がたって症状が出ることもあります。事故の当日は問題がなくても、その後に上記の症状が出た場合は、すぐにご相談ください。

自賠責保険・診断書・通院について

交通事故によるケガの治療費は、自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)などの対象となる場合があり、その場合は窓口でのお支払いなく受診いただけることがあります。 どの保険で受診できるか分からない場合も、そのままご来院いただいて差し支えありません。

また、警察への提出(人身事故への切り替え)や保険の手続きに必要な診断書は、医師が作成します。当院でも診察のうえ作成します。

自賠責保険での受診の流れ、診断書・後遺障害診断書、通院の頻度の考え方、受診時にお持ちいただくもの、他院からの転院については、交通事故診療のページでくわしくご案内しています。

なお、示談や賠償に関するご相談は法律の専門家の分野となりますので、当院では治療に関するご相談を承ります。

レントゲンで「異常なし」と言われたのに痛むのはなぜですか

レントゲンは骨の状態を見る検査です。骨折や脱臼がないことは分かりますが、筋肉・靭帯・椎間板・神経といった組織はうつりません。

むちうちで傷むのは、多くの場合こうした軟らかい組織です。ですから、「レントゲンで異常がない」ことと「痛みの原因がない」ことは、まったく別のことです。

症状が続く場合や、しびれを伴う場合には、MRI検査についてご案内します。当院にMRIはありませんので、連携医療機関での撮影となります。

当院での診察の流れ

事故の状況(追突・出合い頭など、どの方向から衝撃を受けたか)、事故からの経過、どこにどんな症状があるかをうかがいます。衝撃の方向は、どこを傷めやすいかを推測するうえで重要な情報です。

そのうえで、首・背中・腰の状態を診察し、動かせる範囲、押して痛む場所を確認します。しびれや力の入りにくさがある場合は、感覚・筋力・反射を調べる神経学的な診察も行います。

レントゲンで骨の状態を確認し、必要に応じてMRI検査をご案内します。治療としては、痛みや炎症を抑えるお薬、物理療法、そしてリハビリテーションを組み合わせます。当院には理学療法士が常勤しており、保険診療の範囲で受けていただけます。

安静にしすぎることが、かえって回復を長引かせることがあります。痛みの程度に応じて、少しずつ動かしていくことが大切です。どこまで動かしてよいかは診察でご案内します。

よくあるご質問

Q. 事故から数日たっていますが、今から受診しても大丈夫ですか?
はい、ご相談ください。症状が後から出てくることは珍しくありません。ただし、時間が経つほど事故との関係の判断が難しくなることがありますので、なるべく早めの受診をおすすめします。

Q. 他の医療機関に通院中ですが、転院できますか?
できる場合があります。それまでの経過が分かる資料(紹介状・画像など)があると診療がスムーズです。保険を使って治療中の場合は、保険会社への連絡が必要になることがありますので、あわせてご確認ください。

Q. 同乗していた家族も受診できますか?
はい、ご一緒に受診いただけます。同乗者の方のケガも自賠責保険などの対象となる場合があります。

Q. 整骨院と併用してもよいですか?
医師の診察を受けたうえでの併用について、ご相談いただけます。ただし、症状の経過や治療の内容を医師が把握しておく必要がありますので、通院の状況はお伝えください。

Q. 何科を受診すればよいですか?
交通事故後の首・腰・手足の痛みは整形外科でご相談いただけます。頭部を打った場合や、意識・記憶に関わる症状がある場合は、脳神経外科での確認が必要になることがあります。

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