階段や立ち上がりで膝が痛い

「階段を下りるときだけ、膝がズキッとする」「椅子から立ち上がる最初の一歩が痛い」「歩き出してしばらくすると気にならなくなる」——平地を歩く分には困っていないのに、特定の動作でだけ痛む。この段階でご相談に来られる方は多くいらっしゃいます。

そして、この「特定の動作だけ痛い」という段階は、対応を始めるのにとても良いタイミングです。このページでは、なぜその動作で痛みが出るのか、そして早めに動くことにどんな意味があるのかをご説明します。

なぜ階段や立ち上がりで痛むのですか

膝にかかる負担は、動作によって大きく変わります。

平地を歩くとき、膝にかかる力は体重のおよそ2〜3倍といわれます。これが階段を下りるときには体重の約5〜7倍にまで増えます。上るときより下りるときのほうが痛いという方が多いのは、着地の衝撃を膝で受け止めながら、体を支える筋肉が引き伸ばされる形で働くためです。

椅子からの立ち上がりも同じです。膝を深く曲げた状態から体を持ち上げる動作は、膝のお皿(膝蓋骨)の裏側と太ももの骨が強く押しつけられる姿勢になります。

つまり、平地では問題なくても、負担の大きい動作でだけ症状が出るという状態は、関節にかかる負担に対して、支える力や関節のなめらかさが少し追いつかなくなってきていることを示しています。

動き始めだけ痛いのはなぜですか

「立ち上がりの最初がつらいが、動いているうちに楽になる」というのも、よくあるご相談です。

じっとしている間は関節の動きが止まり、関節液のめぐりも滞ります。そこから動き出すときに、こわばった状態のまま関節に力がかかるため、最初の数歩で痛みを感じやすくなります。しばらく動くと関節液が行き渡り、動きがなめらかになるため、痛みが引いてくるのです。

この「動き始めの痛み(始動時痛)」は、膝の変化が始まった段階でよくみられる特徴のひとつです。

考えられる原因

この段階の痛みで多いのは、次のようなものです。

  • 変形性膝関節症の初期:関節の軟骨がすり減りはじめ、負担の大きい動作で痛みが出るようになります。中高年の方で最も多い原因です。詳しくは変形性膝関節症のページをご覧ください。
  • 膝蓋大腿関節(お皿の裏側)の問題:階段や立ち上がり、しゃがみ込みなど、膝を曲げて力を入れる動作で痛みが出やすいのが特徴です。
  • 半月板の傷み:中高年では、はっきりしたきっかけなく半月板が傷んでいることがあります。詳しくは半月板損傷のページをご覧ください。
  • 膝まわりの腱や滑液包の炎症:使いすぎや姿勢のくせから、膝の内側や前面に炎症が起こることがあります。

いずれも見た目や自覚症状だけでは区別がつきにくいため、診察と画像で確かめることが大切です。

「年のせい」で片づけないほうがよい理由

この段階でよくうかがうのが、「年だから仕方ない」「そのうち慣れる」というお言葉です。

たしかに、加齢による変化は誰にでも起こります。ただ、痛む動作を避けて生活していると、膝を支える太ももの筋肉が落ちていきます。 筋肉が落ちると関節にかかる負担がさらに増え、痛みが出やすくなり、また動かさなくなる——という循環に入りやすくなります。

この循環に入る前の段階、つまり「特定の動作だけ痛い」うちに対応を始められると、筋力を保ちながら日常の負担を減らすという、体に無理のない方法で対応できる可能性が高まります。 早く受診するほど良い、というより、選べる対応の幅が広いうちに確かめておくとお考えいただくとよいかと思います。

こんなときは早めに受診してください

  • 階段や立ち上がりの痛みが2週間以上続いている
  • だんだんと痛む動作が増えてきた(階段だけだったのが平地でも痛むようになった)
  • 膝が腫れる、水がたまる
  • 膝が完全に伸びない・曲がらない
  • 膝が引っかかる、途中で止まる感じがある
  • 正座やしゃがみ込みができなくなった

ご自宅でできること

痛みの強い時期に無理な運動をする必要はありませんが、次のことは負担を減らす助けになります。

  • 太ももの前の筋肉を保つ:椅子に座ったまま片脚をゆっくり伸ばし、5秒キープして下ろす。左右10回ずつから。痛みが出ない範囲で行ってください。
  • 階段では手すりを使う:手すりに体重を分散させるだけで、膝にかかる負担は大きく変わります。下りは特に意識してください。
  • 深くしゃがむ動作を減らす:床に座る生活を椅子中心に変える、和式より洋式を選ぶなど。
  • 体重の管理:体重が1kg減ると、階段では数kg分の負担軽減につながります。無理な減量は必要ありませんが、意識する価値はあります。
  • 痛みが強いときは冷やす:熱っぽさや腫れがあるときは、保冷剤をタオルで包んで15分程度。

自己流の運動で悪化することもありますので、痛みが続く場合は自己判断で続けず、一度ご相談ください。

痛む場所でわかること

同じ「階段で痛い」でも、どのあたりが痛むかによって、考えやすい原因が変わります。診察の際にお伝えいただくと、確認がスムーズです。

  • 膝の内側:中高年の方で最も多い場所です。変形性膝関節症の初期や、内側の半月板の傷み、鵞足(がそく)という腱の付着部の炎症などが考えられます。
  • 膝のお皿のまわり・お皿の裏:階段の下りや、しゃがみ込み、長時間座ったあとの立ち上がりで痛むのが特徴です。お皿と太ももの骨の間にかかる負担が関わっています。
  • 膝の外側:ランニングや自転車をよくされる方に多く、太ももの外側を通る腱と骨がこすれて炎症を起こすことがあります。
  • 膝の前面・お皿の下:ジャンプや踏み込みの多い競技をされる方に多い部位です。
  • 膝の裏側:関節の後ろに水がたまる袋(ベーカー嚢腫)ができて、張りとして感じられることがあります。

ご自身では場所を特定しにくいこともありますので、「だいたいこのあたり」で構いません。指で押して痛む場所があるかどうかも、手がかりになります。

当院での診察の流れ

いつから、どの動作で、どのあたりが痛むのかをうかがい、膝の状態を診察します。動かせる範囲、押して痛む場所、腫れや熱感、脚のかたちを確認します。

レントゲンでは、関節の隙間の状態や骨の変化を確認します。当院では立った状態での撮影も行えますので、体重がかかったときの関節の状態を確かめられます。関節の中の炎症や半月板の状態を調べる必要がある場合は、超音波(エコー)検査を院内で行うほか、MRI検査についてご案内することもあります。

そのうえで、痛みを抑える対応と、膝を支える力を保つためのリハビリテーション、日常生活での負担のかけ方の見直しを組み合わせてご提案します。当院には理学療法士が常勤しており、太ももの筋力トレーニングや動作の指導を、保険診療の範囲で受けていただけます。

よくあるご質問

Q. 痛いときは動かさないほうがよいですか?
痛みの強い時期に無理をする必要はありませんが、動かさない期間が長引くと筋力が落ち、かえって痛みが出やすくなります。痛みの出ない範囲で動かすことが大切ですので、どこまで動かしてよいかを診察でご相談ください。

Q. 階段は避けたほうがよいですか?
完全に避ける必要はありませんが、手すりを使う、下りは一段ずつゆっくり、といった工夫で負担を減らせます。日常的にエレベーターが選べる場面では、無理をしないことをおすすめします。

Q. レントゲンで「異常なし」と言われましたが痛みます。
レントゲンは骨の状態を見る検査で、軟骨・半月板・腱などはうつりません。骨に変化がなくても痛みの原因があることは珍しくありませんので、症状が続く場合は改めてご相談ください。

Q. サポーターは使ったほうがよいですか?
不安定さを感じるときには助けになることがあります。ただし常時つけていると筋力が落ちることもあるため、使う場面を絞るのがよいでしょう。適したものや使い方は診察でご相談いただけます。

Q. 何科を受診すればよいですか?
膝の痛みは整形外科でご相談いただけます。当院では整形外科専門医が診察・検査を行い、原因を確かめたうえで対応をご提案します。

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