蕁麻疹(じんましん)

蕁麻疹は、皮膚の一部が赤く盛り上がり、強いかゆみを伴う発疹(膨疹)が突然あらわれる病気です。出てきたと思うと数十分から数時間で跡形もなく消え、また別の場所にあらわれるという、独特の出没を繰り返すことが大きな特徴です。多くの方が一度は経験する身近な皮膚トラブルですが、繰り返し出たり、何週間も長引いたりする場合には、原因の見極めと、症状に合わせた治療が必要になります。このページでは、蕁麻疹の症状の特徴、急性と慢性の違い、原因、診断の考え方、保険診療でできる治療から、治りにくい慢性蕁麻疹に対する選択肢までをわかりやすくご説明します。

蕁麻疹の症状(膨疹という皮膚の変化)

蕁麻疹の症状の中心となるのは「膨疹(ぼうしん)」と呼ばれる皮膚の変化です。皮膚の一部が赤く、あるいは皮膚の色より白っぽく盛り上がり、境界がはっきりとした発疹で、強いかゆみを伴います。ピリピリとした感覚やほてり感を伴うこともあります。

膨疹の大きさは数ミリの小さなものから、手のひらほどの大きなものまでさまざまです。いくつかの膨疹がつながって、地図のような形になることもあります。

膨疹は24時間以内に跡を残さず消える

蕁麻疹のもうひとつの大切な特徴は、ひとつひとつの膨疹が長くても24時間以内に、皮膚に跡を残さずに消えていくことです。ただし、消えたと思っても別の場所に新しい膨疹があらわれることが多く、結果として症状が「続いている」ように感じられます。この「出ては消え、また出る」という経過は、蕁麻疹を他の皮膚の病気と見分けるうえで重要な手がかりになります。

まぶたや唇、手足などが腫れぼったくなる「血管性浮腫」を伴うこともあります。まれに、のどの違和感や息苦しさなど、皮膚以外の症状を伴うことがあり、その場合は速やかな受診が必要です。

急性蕁麻疹と慢性蕁麻疹の違い

蕁麻疹は、症状が続く期間によって「急性蕁麻疹」と「慢性蕁麻疹」に分けて考えます。

  • 急性蕁麻疹:発症してから症状が続く期間が6週間未満のものです。かぜなどの感染症、特定の食物や薬剤、疲労や体調不良などがきっかけとなって起こることが多く、原因がある程度はっきりすることも少なくありません。多くは数日から数週間で自然に落ち着いていきます。
  • 慢性蕁麻疹:ほぼ毎日、あるいは頻繁に、6週間以上にわたって膨疹が繰り返しあらわれる状態です。急性蕁麻疹と異なり、検査をしても原因となる特定の物質が見つからないことが多いという特徴があります。数か月から数年単位で経過することもありますが、時間の経過とともに軽快していく方も少なくありません。

同じ「蕁麻疹」という診断名でも、急性と慢性では原因の考え方や治療の見通しが異なります。症状がどのくらいの期間続いているかは、診察の際にお伝えいただきたい大切な情報です。

蕁麻疹の原因(特定できる場合とできない場合)

蕁麻疹は、皮膚の中の肥満細胞という細胞からヒスタミンなどの物質が放出され、血管や神経に作用することで、赤み・腫れ・かゆみが引き起こされると考えられています。何がきっかけでこの反応が起こるかは、特定できる場合とできない場合があります。

原因が特定できる場合としては、次のようなものが知られています。

  • 特定の食物(そば・えび・かに・卵など)
  • 特定の薬剤
  • かぜなどの感染症
  • 物理的な刺激(皮膚がこすれる・締め付けられる、寒冷・温熱、日光、圧迫、振動など)
  • 昆虫刺傷、動物との接触
  • 運動、発汗、精神的な緊張

一方で、慢性蕁麻疹の多くは、検査をしても特定の原因物質が見つからない「特発性」と呼ばれるタイプです。疲労やストレス、寝不足、体調不良などが症状を悪化させるきっかけになることはありますが、これらは「直接の原因」というよりも「症状を強めるきっかけ」として関わっていることが多いとされています。原因がはっきりしないことに不安を感じる方もいらっしゃいますが、原因が特定できないこと自体は珍しいことではありません。

蕁麻疹の診断

蕁麻疹の診断は、問診と皮膚の状態の視診が中心となります。いつから症状が出ているか、どのくらいの頻度・時間で膨疹があらわれて消えるか、思い当たる食事や薬剤、症状が出やすい状況(入浴後・運動後・特定の衣服を着たときなど)といった情報が、原因を考えるうえでの手がかりになります。

特定の食物や薬剤との関連が強く疑われる場合には、採血によるアレルギー検査を行うことがあります。ただし、慢性の特発性蕁麻疹では、検査を行っても原因物質が特定されないことが多く、その場合は検査結果を確認したうえで、症状のコントロールを目的とした治療に進んでいくのが一般的な流れです。

保険診療でできる蕁麻疹の治療

蕁麻疹の治療は、抗ヒスタミン薬の内服が中心になります。皮膚の中で放出されたヒスタミンのはたらきを抑えることで、かゆみや膨疹をやわらげます。症状の程度に応じて、内服する量を調整しながら、症状が落ち着くまで継続していただくことが多いお薬です。

一種類の抗ヒスタミン薬で十分な効果が得られない場合には、お薬の量を調整したり、種類を変更・追加したりしながら、症状に合わせて治療を進めていきます。眠気などの副作用が気になる場合も、お薬の種類によって出方が異なりますので、生活に支障が出にくいものを一緒に検討していきます。

悪化のきっかけを避ける

あわせて大切なのが、悪化因子を避けることです。原因や悪化のきっかけとして思い当たるもの(特定の食品、体を締め付ける衣服、熱すぎるお風呂、疲労やストレスがたまる状況など)がある場合は、できる範囲で避けていただくことが、症状の安定につながります。何がきっかけになりやすいかを一緒に振り返りながら、治療を進めていきます。

症状が落ち着いてきても、自己判断でお薬をやめてしまうと、症状がぶり返すことがあります。減量・中止のタイミングについても、診察の中でご相談ください。

治りにくい慢性蕁麻疹への選択肢(オマリズマブ/ゾレア)

抗ヒスタミン薬をしっかりとした量で継続しても、膨疹やかゆみの改善が乏しい慢性の蕁麻疹に対しては、抗ヒスタミン薬とは異なる仕組みではたらく注射薬「オマリズマブ(商品名:ゾレア)」という治療の選択肢があります。一定の間隔で皮下注射を行う治療で、既存の抗ヒスタミン薬による治療で十分な効果が得られない難治性の慢性蕁麻疹に対する選択肢のひとつとして位置づけられています。

当院での実施可否は診察時にご相談ください。どなたにでも適応となる治療ではなく、これまでの治療経過や症状の程度などを踏まえて、適応を丁寧に判断したうえでご案内します。効果の出方には個人差があり、投与を続ける中で経過を確認しながら治療方針を調整していきます。ゾレアは保険診療の対象です。難治性の慢性蕁麻疹の方に対して、1か月おきに投与します。投与を続ける回数は、症状の経過によって方ごとに異なります。対象となる条件や費用の詳しいご案内は、診察の中で個別にご説明いたします。

蕁麻疹は何科を受診すればいいですか?

蕁麻疹は皮膚科が専門です。繰り返し出る、長引いている、市販薬でよくならない、といった場合は、自己判断で様子を見続けるより、早めに皮膚科でのご相談をおすすめします。当院では、皮膚科専門医が症状の経過や状態を確認したうえで、お薬による治療や生活面でのアドバイスをご提案します。まれに、のどの違和感や息苦しさ、めまいなど皮膚以外の症状を伴う場合は、緊急の対応が必要なことがありますので、速やかに医療機関を受診してください。

蕁麻疹はうつりますか?

蕁麻疹は、感染症のように人にうつる病気ではありません。ウイルスや細菌が原因ではなく、皮膚の中の肥満細胞からヒスタミンなどの物質が放出されることで起こる反応です。かぜなどの感染症が蕁麻疹のきっかけになることはありますが、蕁麻疹そのものが周囲の人に感染することはありませんので、その点はご安心ください。

蕁麻疹は治りますか?

急性蕁麻疹の多くは、数日から数週間程度で症状が落ち着いていきます。慢性蕁麻疹についても、時間の経過とともに症状が軽くなっていく方は少なくありませんが、経過には個人差があり、数か月から数年にわたって症状と付き合っていく方もいらっしゃいます。いずれの場合も、抗ヒスタミン薬による治療と悪化因子の見直しを続けることで、日常生活への影響を小さく抑えながら経過をみていくことができます。治療の途中で「効かない」と感じても、自己判断でやめてしまう前に、治療内容の見直しについてご相談ください。

ご自宅でできること(セルフケア)

治療と並行して、日々の過ごし方も症状の安定を支えます。次のことを意識してみてください。

  • かゆくてもかき壊さない・こすらない:かくことで皮膚が刺激され、かゆみがかえって強くなったり、症状が広がったりすることがあります。かゆみが強いときは、かく代わりに患部を冷やすと、かゆみがやわらぐことがあります。
  • 体を締め付けない服装を選ぶ:ゴムや帯など、皮膚を圧迫する衣類は物理的な刺激となり、症状が出やすくなることがあります。ゆったりとした服装を心がけましょう。
  • 熱すぎるお風呂を避ける:体温が急に上がると、かゆみが強くなることがあります。ぬるめのお湯で、長湯を避けるようにしましょう。
  • 疲労やストレスをためすぎない:睡眠不足や心身の疲労は、症状を悪化させるきっかけになることがあります。できる範囲で休息をとりましょう。
  • 思い当たる悪化因子を記録する:症状が出た日時や状況、食べたもの、行動などをメモしておくと、悪化のきっかけを見つける手がかりになり、診察の際にも役立ちます。

セルフケアだけで症状が落ち着かない場合や、悪化してきた場合は、我慢せず医療機関にご相談ください。

受診の目安(こんなときはご相談ください)

  • 膨疹やかゆみが繰り返し出て、市販薬を使ってもよくならない
  • 症状が6週間以上、頻繁に続いている
  • まぶたや唇が急に腫れてきた
  • のどの違和感、息苦しさ、声のかすれ、めまいなど、皮膚以外の症状を伴う
  • 眠れないほどのかゆみが続いている

とくに、のどの違和感や息苦しさを伴う場合は、症状の進み方によっては早急な対応が必要になることがあります。様子を見ずに、速やかに医療機関を受診してください。

よくあるご質問

Q. 蕁麻疹は食べ物が原因ですか?
食物が原因となる蕁麻疹もありますが、すべての蕁麻疹が食べ物によるものではありません。とくに慢性蕁麻疹では、検査をしても特定の食物との関連が見つからないことが多くあります。自己判断で多くの食品を除去するのではなく、思い当たる食品がある場合は診察の際にお伝えください。

Q. ストレスで蕁麻疹が悪化しますか?
ストレスや疲労、睡眠不足は、蕁麻疹の症状を悪化させるきっかけになることがあります。ただし、ストレスだけが原因というわけではなく、症状を強める要因のひとつとして関わっていると考えられています。できる範囲で休息をとることをおすすめします。

Q. 抗ヒスタミン薬は眠くなりますか?
お薬の種類によって、眠気の出方には差があります。眠気が気になる場合は、生活や仕事に支障が出にくい種類のお薬に変更できることがありますので、遠慮なくご相談ください。

Q. 慢性蕁麻疹はどのくらいの期間、治療を続けますか?
症状の経過には個人差があり、数か月で落ち着く方もいれば、より長い期間治療を続ける方もいます。症状が安定してきた段階で、お薬を減らすタイミングについても相談しながら進めていきます。自己判断で急に中止せず、医師と一緒に治療のペースを決めていきましょう。

Q. オマリズマブ(ゾレア)はどのような方が対象ですか?
抗ヒスタミン薬による治療を十分に行っても、膨疹やかゆみの改善が乏しい慢性の蕁麻疹の方が対象として検討されます。これまでの治療経過や症状の状態を確認したうえで、適応を判断します。詳しい対象条件や治療の進め方については、診察の中で個別にご説明します。

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