複数の関節が腫れて痛む
「手の指も、手首も、足の指も痛い」「昨日は膝、今日は手首と、痛む場所が移っていく」「思い当たる原因がないのに、あちこちの関節が腫れている」——こうした症状は、ひとつの関節を使いすぎたときの痛みとは、性質が異なります。
関節の痛みの多くは、その関節に負担がかかったことで起こります。ところが、同時に複数の関節が腫れる場合、体の中で別のことが起きている可能性を考える必要があります。
このページでは、何を確かめるべきか、どんなときに急ぐべきかをご説明します。
まず確認:急いで受診すべきとき
次のような場合は、様子を見ずに早めに医療機関へご相談ください。
- 1つの関節が急に強く腫れ、熱をもち、触れないほど痛む
- 38度以上の発熱を伴う
- 関節の皮膚が赤くなっている
- その関節をまったく動かせない
これらは、関節の中に細菌が入って炎症を起こしている状態(化膿性関節炎)の可能性があります。短期間で関節に不可逆的な変化が及ぶことがあるため、早い対応が必要です。夜間・休日であっても、救急対応が可能な医療機関へのご相談をご検討ください。
以下は、こうした緊急性のある症状がない場合のお話です。
確かめていただきたい5つのこと
診察の際、次の点をうかがいます。あらかじめ整理しておいていただけると、原因を絞り込みやすくなります。
① どの関節が腫れていますか
手の指の付け根・手首・足の指といった小さな関節が中心か、膝・肩・股関節といった大きな関節が中心か。分布が手がかりになります。
② 左右対称ですか
左右の同じ関節が腫れているか、片側だけか。
③ 朝のこわばりはどのくらい続きますか
起きてから、動かしにくさが取れるまでの時間。30分〜1時間以上続くかどうかが、ひとつの目安になります。
④ 症状は移動しますか
昨日は膝、今日は足首、というように痛む場所が移っていくのか、同じ関節が腫れ続けているのか。
⑤ 関節以外の症状はありますか
発熱、だるさ、体重が減る、皮膚の発疹、目の充血、口や目の乾き、下痢、尿路の症状、日光に当たると皮膚が赤くなる、など。
考えられる原因
関節リウマチ
複数の関節が左右対称に腫れ、朝のこわばりが長く続くのが特徴です。手の指の付け根や第二関節、手首、足の指に起こりやすく、進行すると関節の変形につながることがあります。早い段階で治療を始めることが、その後の経過を左右する病気です。詳しくは関節リウマチのページをご覧ください。
リウマチ性多発筋痛症
50歳以降の方に起こり、両肩・両股関節のまわりの痛みとこわばりが急に始まるのが特徴です。「朝、布団から起き上がれない」「腕が上がらず着替えができない」といった訴えで来院されることがあります。
痛風・偽痛風
1〜数か所の関節が、急に強く腫れて痛むのが特徴です。痛風は足の親指の付け根に起こることが多く、偽痛風は膝や手首に多くみられます。痛みの立ち上がりが急で、数日でピークに達します。詳しくは痛風・偽痛風のページをご覧ください。
ウイルス感染に伴う関節炎
風邪のような症状のあとに、一時的に複数の関節が痛むことがあります。多くは数週間で自然に落ち着いていきます。
乾癬性関節炎
皮膚に乾癬(銀白色のかさぶたを伴う発疹)がある方で、関節の症状が出ることがあります。皮膚症状が先行することが多いものの、関節が先の場合もあります。
膠原病・自己免疫の病気
全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群などでも関節の症状が出ることがあります。発疹、口や目の乾き、日光への過敏といった関節以外の症状を伴うことがあります。
変形性関節症
加齢に伴う変化が複数の関節に及ぶこともあります。ただし、朝のこわばりは短時間で、動かしはじめてすぐ楽になる点が、炎症性の病気とは異なります。
「使いすぎ」との違い
整形外科でよく扱う痛みの多くは、特定の関節に負担がかかったことで起こります。テニス肘、腱鞘炎、変形性膝関節症などがそうです。
これに対して、複数の関節が同時に腫れる場合は、関節そのものというより、全身の免疫や代謝の側で何かが起きている可能性を考えます。
見分けの手がかり
- 使いすぎによるもの:思い当たる動作・作業がある/腫れは限られた場所/朝のこわばりは短い/全身症状はない
- 全身性のもの:思い当たるきっかけがない/複数の関節/朝のこわばりが長い/だるさや微熱を伴うことがある
「特に何もしていないのに、あちこちが痛い」というのは、実は重要な情報です。診察の際、遠慮なくそのままお伝えください。
こんなときは早めに受診してください
- 複数の関節が同時に腫れている
- 左右対称に症状がある
- 朝のこわばりが30分以上続く
- 症状が2週間以上続いている
- だるさ・微熱・体重減少を伴う
- 皮膚の発疹や目の充血がある
- 痛む関節が日によって移動する
- 思い当たるきっかけがまったくない
受診の前に、メモしておくと役立つこと
複数の関節が関わる症状は、診察の短い時間だけでは全体像がつかみにくいことがあります。次の内容をメモしてお持ちいただけると、原因を絞り込むうえで大きな助けになります。
① いつから、どの関節が
「〇月頃から右手首」「2週間前から両手の指の付け根」というように、時期と場所を並べて書いてみてください。痛む場所が移動している場合は、その順番も分かると有用です。
② 朝のこわばりの長さ
起きてから、指や関節が普通に動くようになるまでの時間。数日分を記録すると、日によるばらつきも分かります。
③ 一日の中での変化
朝がつらいのか、夕方につらくなるのか。動かすと楽になるのか、逆に痛むのか。
④ 関節以外の症状
発熱があれば体温を、皮膚に発疹が出たら写真を撮っておいていただくと確実です。発疹は診察の時点で消えていることがよくあります。
⑤ 今飲んでいるお薬
お薬手帳をお持ちください。利尿薬や一部の薬剤は尿酸値に影響することがあり、サプリメントを含めて把握しておく必要があります。
⑥ ご家族の病気
関節リウマチや膠原病の方がご家族にいらっしゃるか。
なお、症状が出ている時期に撮った写真は非常に役立ちます。関節の腫れは日によって変わるため、受診日にはひいていることも珍しくありません。スマートフォンで構いませんので、腫れているときの手や足を撮っておいていただければと思います。
当院での診察の流れ
上に挙げた5つの点をうかがったうえで、腫れている関節を実際に確かめます。腫れが骨ばった硬いものか、やわらかい滑膜の腫れかを触って確認し、動かせる範囲、押して痛む場所、左右差を確かめます。関節以外の症状や、お薬の内服歴、ご家族の病気についてもうかがいます。
血液検査では、炎症の程度(CRP・赤沈)、リウマトイド因子、抗CCP抗体、尿酸値などを確認します。必要に応じて、膠原病に関する項目を追加することもあります。レントゲンでは、関節の隙間や骨の変化、石灰の沈着を確認します。当院では超音波(エコー)検査を院内で行えますので、関節の中の炎症や関節液のたまり具合を、その場で観察することができます。
結果をふまえて、関節リウマチと診断がついた場合は、抗リウマチ薬による標準的な保険診療を当院で行います。生物学的製剤やJAK阻害薬など、導入前に専門的な検査・管理を要する治療が望ましいと判断した場合や、膠原病など整形外科の範囲を超える病気が疑われる場合には、専門医療機関と連携して適切にご紹介します。
「どこに相談すればよいか分からない」という段階でも構いません。まず何が起きているのかを確かめるところから、ご一緒に進めていきます。
よくあるご質問
Q. 血液検査だけで分かりますか?
血液検査は大切な手がかりですが、それだけで診断がつくわけではありません。関節リウマチでもリウマトイド因子が陰性の方はいらっしゃいますし、逆に陽性でも関節リウマチでない方もいます。症状の経過・診察所見・画像とあわせて総合的に判断します。
Q. 痛む場所が毎日変わるのですが、気のせいでしょうか?
気のせいではありません。痛みが関節から関節へ移動するのは、いくつかの病気でみられる特徴的な経過です。診察の際にそのままお伝えください。
Q. 天気が悪いと痛むのは病気ですか?
気圧や気温の変化で関節の症状が変わる方は多くいらっしゃいます。それ自体は病気の有無を決めるものではありませんが、腫れを伴う場合は原因を確かめる価値があります。
Q. 何科を受診すればよいですか?
関節の腫れや痛みは整形外科でご相談いただけます。当院では整形外科専門医が診察・検査を行い、原因を確かめたうえで、必要に応じて適切な医療機関へご紹介します。