手が荒れる・ひび割れる
「保湿しているのに、手荒れが治らない」「指先がひび割れて、水に触れるとしみる」「毎年、冬になると同じことの繰り返し」——
手の荒れは、体の中で最も治りにくい部位のひとつです。それには、はっきりした理由があります。
手は、一日に何度も洗われるからです。
保湿しても、次に手を洗った時点で流れてしまう。皮膚を守る膜が回復する前に、また洗剤や水に触れる。この繰り返しが、手荒れを慢性化させます。
つまり、手荒れが治らないのは、ケアが足りないからでも、根気がないからでもありません。手という部位の宿命的な条件によるものです。
このページでは、その条件の中で何ができるかをご説明します。
なぜ手だけがこんなに荒れるのか
皮膚の表面は、皮脂と角質でできた薄い膜に覆われ、水分の蒸発と刺激の侵入を防いでいます。
ところが手のひら側には、皮脂を出す腺がほとんどありません。 もともと守りが薄い場所なのです。そこへ、次のような条件が重なります。
- 洗浄:手洗い、食器洗い、入浴。洗剤は油汚れを落とすため、皮脂も一緒に落とします
- 摩擦:拭く、こする、紙をめくる、道具を握る
- 乾燥:冬の空気、エアコン、アルコール消毒
- 化学的な刺激:洗剤、シャンプー、消毒液、塗料、金属
守りが失われた皮膚は、水分を保てなくなり、外からの刺激を受けやすくなります。すると炎症が起こり、かゆみやひび割れが生じる。かゆくて掻くと、さらに皮膚が傷つく——この循環が、慢性化の正体です。
水仕事を減らせない方へ
「水仕事を控えてください」と言われても、実行できる方は多くありません。調理、清掃、介護、美容、保育、医療——手を使い、洗う仕事は数えきれないほどあります。 ご家庭での家事も同じです。
そこで、減らすのではなく、守り方を変えるという考え方でご提案します。
① 手袋を使い分ける
- 水仕事のとき:ゴム手袋。ただし内側に木綿の手袋をしてから重ねると、蒸れによる悪化を防げます
- 乾いた作業のとき:木綿の手袋。摩擦から守れます
- 就寝時:保湿剤を塗ってから木綿の手袋。眠っている数時間は、手を洗わずに過ごせる貴重な時間です。ここが最も効果を出しやすい場面になります
ゴム手袋そのものでかぶれる方もいらっしゃいます。かゆみが出る場合は、素材を変えるかご相談ください。
② 洗い方を変える
- お湯を熱くしすぎない:熱いほど皮脂が落ちます。ぬるま湯で
- 洗剤は薄める・量を減らす
- 洗ったあとはしっかり水分を拭き取る:濡れたままにすると、蒸発時にさらに乾燥します。ゴシゴシではなく、押さえるように
③ 保湿のタイミング
「手を洗ったら、そのつど塗る」が基本です。1日1回たっぷり塗るより、回数を増やすほうが効きます。
- 洗面所、キッチン、職場のデスク、カバンの中——手を洗う場所ごとに保湿剤を置く
- 塗る量の目安は、塗ったあと少しべたつく程度。「さらっと」では足りていないことが多くあります
④ アルコール消毒との付き合い方
消毒が必要な場面は多いと思います。アルコールは水分を奪うため、消毒後の保湿が特に重要です。可能であれば、手が荒れているときは石けんでの手洗いを選ぶ、消毒後すぐ保湿する、といった工夫を。
「保湿しているのに治らない」とき
すでにきちんと保湿されている方も多いと思います。それでも治らない場合、次のことが考えられます。
① 炎症が起きている
赤み、かゆみ、水ぶくれがある場合は、保湿だけでは足りません。 炎症を抑える塗り薬が必要な段階です。保湿剤は「乾燥を防ぐもの」であって、「炎症を治すもの」ではありません。
② 量・回数が足りていない
「塗っている」つもりでも、手を洗うたびに流れている分を補えていないことがよくあります。
③ 原因が別にある
手荒れに見えて、実は別の病気であることがあります(次項)。
④ 掻いている・こすっている
無意識に掻いていることに気づいていない方も多くいらっしゃいます。
「頑張っているのに治らない」と感じている方こそ、一度診察を受けていただく価値があります。やり方を少し変えるだけで、経過が変わることがあります。
手荒れと間違われやすい病気
- 手白癬(手の水虫):片手だけに症状がある、足にも水虫がある、といった場合は疑います。手荒れの薬(ステロイド)を使うと悪化するため、区別が重要です。顕微鏡検査で確かめられます
- 掌蹠膿疱症:手のひら・足の裏に、膿を持った小さな水ぶくれが繰り返しできる病気です
- 汗疱(異汗性湿疹):指の側面などに、小さな水ぶくれが出るもの
- 接触皮膚炎(かぶれ):特定のものに触れた部分に一致して症状が出ます
- 乾癬:厚いかさぶたを伴う赤い盛り上がりが出ることがあります
とくに「片手だけ」「膿を持った水ぶくれ」という場合は、自己判断で市販薬を使わずにご相談ください。
こんなときはご相談ください
- 保湿しても改善しない
- ひび割れて出血する、痛くて物が持てない
- かゆみで眠れない
- 水ぶくれ・膿を持ったぶつぶつがある
- 片手だけに症状がある
- 仕事や家事に支障が出ている
- 市販薬を使っても良くならない、かえって悪化した
- 毎年繰り返している
当院での診察の流れ
いつから、どの部分が、どんなふうに荒れているか、お仕事や家事での手の使い方、手洗いの回数、使っている保湿剤や市販薬をうかがいます。「どんな作業を、1日に何回するか」は、対応を考えるうえで最も重要な情報です。
診察では、皮膚の状態(赤み、皮むけ、ひび割れ、水ぶくれ、膿)と分布を確認します。水虫が疑われる場合は、皮膚の一部を採って顕微鏡で確認します。その場で結果をお伝えできます。
対応としては、炎症がある場合は炎症を抑える塗り薬、乾燥に対しては保湿剤を、状態に応じて使い分けます。あわせて、手の守り方(手袋、洗い方、塗るタイミング)を、お仕事の内容にあわせて具体的にご提案します。
手湿疹の詳しい内容は手湿疹(主婦湿疹)のページでご説明しています。
季節による違い
手荒れは、季節によって現れ方が変わります。ご自身の傾向が分かると、備えやすくなります。
冬(11月〜3月)
空気が乾燥し、水やお湯を使う機会も増えるため、最も荒れやすい時期です。しもやけを併発する方もいらっしゃいます。暖房による室内の乾燥も影響します。
春(3月〜5月)
花粉や新生活での環境変化が加わります。新しい職場・学校で洗剤や消毒剤が変わったことがきっかけになることもあります。
夏
汗と蒸れによる湿疹(汗疱)が出やすい時期です。ゴム手袋の中が蒸れて悪化することもあるため、内側に綿手袋を重ねる工夫が特に効きます。
秋
気温と湿度が下がり始め、冬に向けて荒れやすくなる時期です。この時点でケアを始めておくと、冬の悪化を抑えられることがあります。
毎年同じ時期に繰り返している方は、症状が出てからではなく、その手前から保湿を強化するという考え方が有効です。「今年もそろそろだな」と感じたら、早めにご相談ください。
手荒れが治りにくいお仕事の方へ
次のようなお仕事では、手荒れが起こりやすく、また治りにくい傾向があります。
- 医療・介護:手洗いと消毒の回数が多い
- 飲食・調理:洗剤、水、熱、食材による刺激
- 美容・理容:シャンプー剤、カラー剤、パーマ液
- 清掃:洗剤、消毒剤
- 保育:手洗い、消毒、水遊びの介助
- 建設・製造:塗料、溶剤、金属、粉塵
これらのお仕事では、「手荒れは仕方ないもの」として受け入れられていることも多いのですが、悪化すれば仕事そのものに支障が出ます。ひび割れて物が持てない、痛くて作業ができない——そうなる前の段階でご相談ください。
診察の際は、具体的にどんな作業を、1日何回されているかをお伝えください。手袋の種類、洗剤の変更、保湿のタイミングなど、その現場で実行できる方法を一緒に考えます。
よくあるご質問
Q. 保湿剤は何を使えばよいですか?
状態によって適したものが異なります。乾燥が中心か、炎症があるかで変わりますので、診察のうえでご提案します。ご使用中のものをお持ちいただくと、続けてよいか判断できます。
Q. ステロイドの塗り薬は怖いのですが。
炎症がある段階では、まず炎症を抑えることが回復への近道になります。手のひらは皮膚が厚く、薬が効きにくい部位でもあります。強さと期間を調整しながら使いますので、自己判断で中断せず、ご相談ください。
Q. 市販薬を使っていますが、よくなりません。
炎症の程度に対して弱い、あるいは原因が別にある可能性があります。水虫にステロイドを使うと悪化しますので、改善しない場合は一度ご相談ください。
Q. 冬だけ荒れます。夏は受診しなくてよいですか?
症状が落ち着いている時期こそ、荒れにくい状態を保つケアを確認しておく価値があります。毎年繰り返している方は、シーズン前のご相談もおすすめです。
Q. 何科を受診すればよいですか?
手荒れは皮膚科でご相談いただけます。当院では皮膚科専門医が診察のうえ、必要な検査を行い、お仕事の内容にあわせた対応をご提案します。