肩でお悩みの方

腕が上がらない、夜に肩が痛んで眠れない、肩の動きが固い、慢性的な肩こりがつらい――肩の症状は、五十肩(肩関節周囲炎)や腱板の傷み、筋肉の緊張による肩こりなど、原因によって適した治療が異なります。

「肩こりだと思ってマッサージに通っていたら、実は肩の関節の病気だった」「五十肩だと思って様子を見ていたら、腱が切れていた」ということは、外来で決して珍しくありません。肩は人の体でもっとも動く範囲の広い関節で、そのぶん多くの組織に支えられており、痛みの原因もさまざまです。原因に合った対応を早めに始めることが、肩を長く快適に使い続けるための第一歩です。まずは整形外科専門医が診察・画像評価で原因を見きわめますので、お気軽にご相談ください。

こんな症状はありませんか

肩の痛み
  • 腕が上がらない・後ろに回せない
  • 夜、肩が痛んで眠れない・寝返りで目が覚める
  • 肩の動きが固い、引っかかる感じがする
  • 腕を上げる途中で肩が痛む、力が入らない
  • 重いものを持つと肩が痛む
  • ある日突然、肩に激しい痛みが出た
  • 肩から腕にかけてのしびれがある
  • 慢性的な肩こりがつらい、マッサージをしてもすぐ戻る

ひとつでも当てはまる場合は、肩の関節やそのまわりで何らかの変化が起きているサインかもしれません。

その症状は「肩こり」ですか?「肩関節の病気」ですか?

「肩が痛い」と一言でいっても、大きく2つに分けて考えると整理しやすくなります。

  • 肩こり:首すじから肩、肩甲骨のまわりにかけての筋肉の緊張による、こり感・重だるさ・張りです。デスクワークやスマートフォンの使用など、同じ姿勢の続く生活が背景にあることが多く、肩の関節そのものの動きは保たれています。
  • 肩関節の病気:五十肩や腱板損傷など、肩の関節や腱そのものの傷みです。「腕を上げると痛い」「動く範囲がせまくなった」「夜間に痛む」など、動きにともなう症状が出るのが特徴です。

見分けの手がかりになるのは、「動きの症状があるかどうか」です。腕を上げる・後ろに回すといった動作で痛む、動く範囲がせまくなっている、夜間の痛みで眠れない――こうした症状がある場合は、単なる「こり」ではなく、肩関節の病気が隠れている可能性があります。逆に、こり感が中心でも、長引く場合には首(頸椎)の病気などが関わっていることもあり、自己判断は意外に難しいものです。判断に迷うときは、一度診察でご確認ください。

症状のパターンから考えられる主な原因

「どんな場面で・どのように痛むか」によって、原因として考えやすい病気が変わります。

動かすと痛い・夜も痛む・動きが固くなってきた

腕を上げる、後ろに手を回すといった動作で痛み、夜間にうずいて眠れない。しだいに肩の動く範囲がせまくなってきた。40〜60代でこのパターンの場合、まず考えられるのは五十肩(肩関節周囲炎)です。時期に応じた治療が大切な病気です。→ 五十肩(肩関節周囲炎)

腕が上がらない・力が入らない

腕を上げる途中で痛む、支えれば上がるが自分では上げにくい、力が入らない。このような場合は、肩を動かし支える腱の傷み――腱板損傷(腱板断裂)が考えられます。転倒などのケガで起こるほか、加齢によって少しずつ傷んでいくこともあります。→ 腱板損傷

ある日突然、激しい痛みが出た

前ぶれなく、夜も眠れないほどの激痛が肩に出て、腕をほとんど動かせない。このような場合は、腱にカルシウムの沈着(石灰)がたまって急に強い炎症を起こす石灰沈着性腱板炎の可能性があります。40〜50代の女性に比較的多いことが知られています。強い痛みはお薬や注射で軽快することが多い一方、痛みをくり返す場合や長引く場合には、体外衝撃波治療が用いられることがあります。→ 体外衝撃波治療

肩から腕へのしびれ・首の動きで痛みが変わる

肩の痛みに腕や手のしびれをともなう、首を動かすと肩や腕に痛みが走る。このような場合は、肩そのものではなく首(頸椎)から来ている痛みの可能性があります。神経の通り道が関わるため、首側からの評価が必要です。→ 首でお悩みの方

こり感・重だるさが中心

首すじから肩甲骨まわりの筋肉の緊張による肩こりです。姿勢や運動不足、ストレスなどが関わります。つらい肩こりには、お薬や物理療法、理学療法士による姿勢・運動の指導など、整形外科でできる対応があります(後述)。

スポーツで肩を痛めた

投球動作のくり返しによる肩の痛み(投球障害肩)や、転倒・接触による肩のケガなど、スポーツにともなう肩のトラブルもさまざまです。競技への復帰を見すえた評価と段階的なリハビリが大切です。→ スポーツによるケガ・障害

年代によって多い肩の悩み

  • 10〜20代:スポーツによる肩の痛み(投球障害など)や、脱臼などのケガが中心です。
  • 30〜50代:デスクワークによる肩こりが増えるほか、40代以降は五十肩(いわゆる四十肩・五十肩)や石灰沈着性腱板炎が起こりやすくなります。
  • 60代以降:加齢による腱板の傷み(変性断裂)が多くなります。症状のない断裂も珍しくない年代で、「歳のせい」とあきらめる前に、痛みの原因を確かめる価値があります。

年代はあくまで目安です。実際には診察と画像評価で原因を確認したうえで、治療方針をご提案します。

当院の肩の診療

当院では、肩の症状に対して「正確な診断→保存療法→改善が不十分な場合の次の選択肢」という段階を大切にしています。

1. 診察・画像評価で原因を見きわめる

症状の経過(いつから・どんな動きで・夜間痛の有無)や生活・お仕事・スポーツの状況を丁寧にお伺いし、肩の動く範囲や力の入り方を診察で確認します。そのうえで、レントゲンで骨や石灰沈着の有無を、超音波(エコー)で腱板や炎症の状態をその場で確認します。腱板の断裂の程度など、より詳しい評価が必要な場合はMRI検査をご案内します。「肩こり」「五十肩」とひとくくりにせず、いまの症状の原因が何であるのかを正確に評価することが、治療と同じくらい大切だと考えています。

2. 保存療法(保険診療が基本)

原因と時期に応じて、次のような治療を組み合わせます。

物理療法(肩)
  • 内服・外用:痛みと炎症をやわらげる飲み薬・貼り薬
  • 注射:痛みが強い時期には、注射で炎症をおさえ、リハビリを進めやすくします
  • 運動療法(リハビリテーション):理学療法士が、肩甲骨まわりの筋肉の働きや姿勢の改善を含め、一人ひとりの肩の状態に合わせた運動を段階的に指導します
  • 物理療法:超音波治療・ラジオ波治療などの機器を、症状に応じて併用します
  • ハイドロリリース:筋肉や筋膜の重なりが痛みに関わっていると考えられる場合に、エコーで確認しながら薬液を注入し、すべりを改善させることを目的とした処置を選択肢としてご提案することがあります。→ ハイドロリリース

肩こりに対しても、お薬や物理療法に加えて、姿勢・肩甲骨の動きの改善を目的とした運動療法をご提案できます。

3. 改善が不十分な場合の選択肢

  • 体外衝撃波治療:石灰沈着性腱板炎や腱の付着部の難治性の痛みに対して、体外衝撃波治療が選択肢になることがあります。→ 体外衝撃波治療
  • 再生医療:腱板の慢性的な痛みなどで保存療法を続けても改善が不十分な場合には、再生医療(PRP療法など)という選択肢をご相談いただけます。→ 肩の再生医療
  • 手術が適している場合:断裂が大きい腱板損傷など、手術が適していると判断した場合は、連携する専門医療機関へ責任を持ってご紹介します。

※ 体外衝撃波治療の保険適用は難治性足底腱膜炎に限られ、肩に対しては自由診療となります。再生医療は自由診療(保険適用外)です。効果には個人差があります。

五十肩と腱板断裂は、どう見分けるのですか?

どちらも中高年に多く、「腕が上がらない」「夜に痛む」という症状が共通するため、外来でもよくいただくご質問です。おおまかには、五十肩は関節が固まる病気、腱板断裂は腱が傷む病気で、次のような違いがあります。

  • 五十肩:関節を包む膜の炎症と癒着が主体で、自分で動かしても、他人に支えてもらっても腕が上がらない(あらゆる方向に固まる)のが特徴です。
  • 腱板断裂:腱そのものの傷みが主体で、自分で上げると痛み・力の入りにくさがある一方、支えてもらえば上がることが多いのが特徴です。

ただし、両者は合併することもあり、症状だけで正確に見分けるのは容易ではありません。診察に加えて、超音波やMRIで腱板の状態を確認することで、治療方針が変わってきます。それぞれの病気について詳しくは、五十肩(肩関節周囲炎)・腱板損傷のページをご覧ください。

肩こりだけでも、整形外科を受診していいのですか?

もちろんご相談いただけます。肩こりは「病院に行くほどではない」と思われがちですが、つらいこりが続く場合、整形外科では、こりの背景に首や肩関節の病気が隠れていないかを確認したうえで、お薬・物理療法・姿勢や運動の指導といった対応ができます。とくに、「しびれをともなう」「夜間の痛みがある」「腕が上がりにくい」といった症状がある場合は、単なる肩こりではない可能性があるため、一度の受診をおすすめします。

受診の目安(こんなときはご相談ください)

  • 肩の痛みや動かしにくさが2週間以上続いている
  • 夜、肩の痛みで目が覚める・痛む側を下にして眠れない
  • 腕が上がらない、後ろに手が回らない、力が入らない
  • 突然の激しい肩の痛みで腕を動かせない
  • 肩から腕にかけてのしびれをともなう
  • 肩こりが長引き、マッサージなどでも楽にならない

肩は毎日使う関節です。痛みをかばう期間が長くなるほど、関節が固まったり、まわりの筋肉が弱ったりして、回復に時間がかかりやすくなります。「これくらいで」と思う段階でのご相談が、結果的に回復への近道になります。

ご自宅でできること(セルフケア)

肩こり・慢性的な痛みには「温める」

肩こりや慢性的な肩の痛み・こわばりには、温めて血流をよくすることが向いています。入浴で肩までしっかり温まる、蒸しタオルを当てる、温湿布を使うなどが手軽です。一方、ケガの直後や、急に強く痛んで熱をもっているようなとき(受傷からおよそ48時間の急性期)は、冷やすほうが向いています。医学的には温める・冷やすのどちらも痛みの軽減に有効とされており、症状とタイミングでの使い分けが大切です。

肩甲骨を動かす・姿勢を整える(肩こり体操)

デスクワークの合間に、両肩をすくめてストンと落とす、両肘で大きく円を描くように回して肩甲骨を動かす、胸を開いて背すじを伸ばす――こうした簡単な体操をこまめに行うだけでも、筋肉の緊張がやわらぎます。長時間同じ姿勢を続けないこと、画面の高さを目線に近づけることも有効です。

痛みが強いときは、無理に動かさない

夜も痛むような強い炎症がある時期に、がまんして肩を大きく動かしたり、強くもんだりすると、かえって症状が強まることがあります。痛みの範囲内で日常生活を送り、本格的な体操やストレッチは痛みが落ち着いてから始めるのが原則です。どの体操をいつから行うかは肩の状態によって変わりますので、診察の際にご相談ください。

よくあるご質問

Q. 湿布は温湿布と冷湿布のどちらを使えばいいですか?
A. 医学的にはどちらも有効で、明確な優劣はないと報告されています。肩こりや慢性的な痛み・こわばりには温湿布、ケガの直後や熱感のある急性期には冷湿布が向いています。使い心地の好みで選んでいただいても差し支えありません。

Q. マッサージや整体に通っていますが、なかなか良くなりません。
A. 筋肉の緊張が原因であれば、ほぐすことで楽になることも多いのですが、良くならない場合は、こり以外の原因(肩の関節や腱の病気、首からくる痛みなど)が隠れていることがあります。原因を一度確認しておくと、その後の対処も選びやすくなりますので、お気軽にご相談ください。

Q. レントゲンで「異常なし」と言われましたが、肩の痛みが続きます。
A. 五十肩や腱板の傷みは、レントゲンには写りません。骨に異常がなくても、超音波(エコー)やMRIで腱板や関節まわりの状態まで確認することで、原因がわかる場合があります。

Q. 肩がゴリゴリ・ポキポキ鳴りますが、大丈夫ですか?
A. 音だけで痛みをともなわない場合は、心配のないことも多いです。ただし、音に痛みや引っかかり感、力の入りにくさをともなう場合は、腱板などの傷みが関わっていることがあるため、一度ご相談ください。

Q. 五十肩は放っておけば自然に治ると聞きましたが、本当ですか?
A. 時間とともに改善に向かう方が多い一方、経過が年単位におよぶことや、動きの制限が残ってしまうことがあります。また、五十肩だと思っていた痛みが腱板損傷など別の病気だったというケースもあります。詳しくは五十肩(肩関節周囲炎)のページをご覧ください。

この治療を受けられる前に(費用・リスク・自由診療について)

このページでご案内している治療のうち、次のものは自由診療(保険適用外)です。ご検討の前にご確認ください。

  • PRP療法:自由診療(保険適用外)です。標準的な費用は、白血球除去型PRP(PRGF-Endoret®)110,000円/回(計3回が標準)、高用量PRP(Angel™ HD-PRP)330,000円/回(いずれも税込)。料金は1部位ごとに発生します(例:両膝にPRGFを3回で660,000円)。別途、MRI評価・血液検査の費用がかかります。主なリスクは注射部位の一時的な痛み・腫れ・熱感・内出血で、感染等のリスクは低いとされますがゼロではありません。治療効果には個人差があります。用いるPRP調製システムはいずれも国内で承認・認証を受けた医療機器です(Angel™ cPRP System 承認番号 30500BZX00054000/PRGF-Endoret® 認証番号 30500BZI00007000)。
  • ハイドロリリース:自由診療(保険適用外)です。標準的な費用は 5,500円/回(税込)で、部位ごとの加算はありません。主なリスクは注射時・注射部位の痛み、内出血、腫れ、気分が悪くなる・めまい、感染(まれ)、神経や血管の損傷(まれ)、局所麻酔薬(リドカイン)に対するアレルギー(まれ)です。首から背中にかけての部位では、気胸が起こることがまれにあります。治療効果には個人差があります。用いる生理食塩水・局所麻酔薬はいずれも国内で承認を受けた医薬品ですが、筋膜のあいだに注入してすべりを改善させる使い方は、承認された効能・効果の範囲には含まれません(適応外使用)。国内の正規流通経路で入手しており、適応外使用のため、健康被害が生じた場合に医薬品副作用被害救済制度の対象とならないことがあります。
  • 体外衝撃波治療:対象となる疾患・条件により、保険診療となる場合と自由診療(保険適用外)となる場合があります。自由診療の場合の標準的な費用は、初回 5,500円/2〜3回目 8,800円/4回目以降の一連治療 5,500円(いずれも税込・2026年10月改定)。一連の治療は、前回の治療から2ヶ月以内を基準とし、2ヶ月を超えて間隔があいた場合はあらためて初回からの料金となります。主なリスクは照射部位の一時的な痛み・発赤・内出血です。治療効果には個人差があります。用いる機器は国内で承認を受けた医療機器です(BTL-6000 Focus® 承認番号 30300BZX00272000)。
  • 入手経路・国内の承認状況:いずれも国内の正規流通経路で導入しています。医師の個人輸入は行っておりません。くわしくは当院の自由診療についてをご覧ください。

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