脚の付け根(股関節)が痛い
「歩き出しに、脚の付け根がズキッとする」「靴下を履くとき、足の爪を切るときに痛くて曲げられない」「あぐらがかきにくくなった」——股関節の痛みは、こうした日常の何気ない動作で気づかれることが多い症状です。
一方で股関節は、痛みを感じる場所と、実際に傷んでいる場所がずれやすい関節でもあります。お尻や太もも、ときには膝に痛みを感じることもあり、「腰が悪いと思っていた」「膝を診てもらっていた」という経過をたどる方も少なくありません。このページでは、その見分け方をご説明します。
どこが痛むと股関節の可能性が高いですか
股関節そのものが原因である場合、足の付け根の前側(鼠径部)に痛みを感じることが多いとされています。ここが痛む場合は、股関節の可能性を考えます。

一方で、次のような場所に感じることもあります。
- お尻の外側・後ろ:股関節由来のこともありますが、腰やお尻の筋肉が原因のこともあります。
- 太ももの前面・内側:股関節からの関連痛としてよくみられます。
- 膝の内側:股関節の病気で膝に痛みを感じることがあります(放散痛)。膝を調べても異常が見つからないのに痛みが続く場合、股関節を確かめる価値があります。
動作による見分けの手がかり
| 場面 | 股関節が原因のときの特徴 |
|---|---|
| 靴下を履く・爪を切る | 曲げると付け根が痛くて姿勢がとりにくい |
| あぐら・脚を組む | 開く動きで付け根が痛む、開きにくい |
| 歩き出し | 最初の数歩がつらく、動くと少し楽になる |
| 長く歩いたあと | だんだん痛みが強くなる、足を引きずる |
| 車の乗り降り | 脚を持ち上げる・回す動きで痛む |
これに対し、前かがみや反る動作で症状が変わる、脚にしびれが走るという場合は、腰が原因である可能性が高くなります。腰由来のしびれについては腰から脚にしびれ・痛みが広がるのページをご覧ください。
考えられる原因
- 変形性股関節症:股関節の軟骨がすり減って起こるもので、中高年の方で最も多い原因です。日本では、生まれつき股関節の受け皿が浅い(臼蓋形成不全)ことが背景にある方が比較的多いとされています。詳しくは変形性股関節症のページをご覧ください。
- 大腿骨頭壊死症:太ももの骨の先端部分の血流が悪くなって起こるものです。ステロイドの使用歴や飲酒との関連が知られています。詳しくは大腿骨頭壊死症のページをご覧ください。
- 鼠径部痛症候群(グロインペイン):スポーツをする方に多く、股関節まわりの筋肉や腱の使いすぎで起こります。詳しくは鼠径部痛症候群のページをご覧ください。
- 股関節唇損傷:関節の縁にある軟骨(関節唇)が傷つくもので、若い方やスポーツをする方にみられます。
- 腰由来のもの:腰椎の神経の圧迫によって、お尻や太ももに痛みが出ることがあります。
- 股関節以外の原因:鼠径ヘルニアや骨盤内の病気など、整形外科以外の原因で鼠径部に痛みが出ることもあります。
こんなときは早めに受診してください
- 付け根の痛みが2週間以上続いている
- 靴下が履きにくい・足の爪が切りにくい(股関節が曲がりにくくなっているサインです)
- 歩き方が変わった、足を引きずるようになった
- 脚の長さが違うように感じる
- 夜間に寝返りで痛みが出る、痛くて目が覚める
- 転倒したあとに付け根が痛く、体重をかけられない(骨折の可能性があります。早めにご相談ください)
- ステロイドの内服歴があり、急に付け根が痛くなった
とくに、高齢の方が転倒されたあとに立てない・歩けない場合は、大腿骨の骨折の可能性がありますので、急いで医療機関にご相談ください。
ご自宅でできること
- 和式の動作を減らす:床に座る、深くしゃがむ、正座といった姿勢は股関節を深く曲げるため負担になります。椅子中心の生活に変えるだけでも違います。
- 長時間の立ちっぱなし・歩きすぎを避ける:痛みが出る手前で休憩を挟んでください。
- 体重の管理:股関節には歩行時に体重の3〜4倍の力がかかるとされます。体重を減らすことは負担軽減に直結します。
- 無理なストレッチをしない:「硬いから伸ばそう」と強く開く動作を繰り返すと、かえって炎症が強まることがあります。
- 杖を使うことをためらわない:痛む側と反対の手に杖を持つと、股関節にかかる負担を大きく減らせます。抵抗を感じる方もいますが、関節を守るうえで有効な方法です。
年代・背景によって、考えやすい原因が変わります
10代〜30代
スポーツをされる方では、鼠径部痛症候群(グロインペイン)や股関節唇の損傷が考えられます。サッカーやランニングなど、蹴る・ひねる動作の多い競技で起こりやすいものです。また、生まれつき股関節の受け皿が浅い(臼蓋形成不全)方では、この年代から痛みが出はじめることがあります。
40代〜60代
変形性股関節症が最も多くなる年代です。日本では、臼蓋形成不全を背景として発症する方が比較的多いとされており、若い頃から股関節に違和感があったという方も少なくありません。この年代では、「歩ける距離が短くなった」「あぐらがかけなくなった」という変化から気づかれることが多くあります。
70代以降
変形性股関節症に加えて、転倒による大腿骨近位部の骨折に注意が必要になります。転んだあとに立てない・体重をかけられない場合は、急いで医療機関にご相談ください。骨粗鬆症が背景にある場合は、そちらの評価もあわせて行います。
年代を問わず注意したいもの
ステロイドを長期に内服されている方、飲酒量が多い方では、大腿骨頭壊死症が起こることがあります。急に付け根が痛くなり、それが続く場合は一度確かめる価値があります。
当院での診察の流れ
どこが・いつから・どんな動作で痛むか、歩ける距離、日常生活で困っている動作をうかがいます。そのうえで、股関節を動かせる範囲(曲げる・開く・回す)、痛みが出る角度、脚の長さの左右差、歩き方を確認します。腰が原因である可能性もあわせて確かめます。
レントゲンでは、関節の隙間の狭さ、骨の変形、受け皿のかたち(臼蓋形成不全の有無)を確認します。股関節のレントゲンは、股関節の状態を判断するうえで基本となる検査です。関節唇や骨頭の状態を詳しく調べる必要がある場合や、初期の大腿骨頭壊死症が疑われる場合には、MRI検査についてご案内します。
結果をふまえて、痛みを抑える対応、股関節まわりの筋力を保つリハビリテーション、日常生活での負担の減らし方をご提案します。当院には理学療法士が常勤しており、保険診療の範囲で運動療法を受けていただけます。人工関節などの手術が選択肢になる状態と判断した場合は、専門的な治療を行う医療機関へご紹介します。
よくあるご質問
Q. 膝が痛いと思って受診したら股関節と言われることはありますか?
あります。股関節の病気で膝の内側に痛みを感じることは珍しくありません(放散痛)。膝を調べても原因が見つからない場合、股関節を確かめることがあります。
Q. 股関節が硬いだけでも受診したほうがよいですか?
痛みがなくても、あぐらがかきにくい、靴下が履きにくいといった変化が進んでいる場合は、一度確かめておく価値があります。動かせる範囲の制限は、股関節の変化の初期のサインであることがあります。
Q. 歩いたほうがよいですか、休んだほうがよいですか?
痛みが強い時期に長く歩くのは負担になりますが、まったく動かさないと筋力が落ちて悪循環になります。「痛みが翌日に残らない範囲」が目安ですので、具体的な量は診察でご相談ください。
Q. すぐ手術になりますか?
必ずしもそうではありません。痛みの程度、進行の状態、日常生活への支障によって、まず保存的な対応から始めることが多くあります。
Q. 何科を受診すればよいですか?
脚の付け根の痛みは整形外科でご相談いただけます。当院では整形外科専門医が診察・検査を行い、腰由来との見分けも含めて原因を確かめます。