骨粗鬆症性椎体骨折(圧迫骨折)
骨粗鬆症性椎体骨折は、骨がもろくなった背骨が、体の重みに耐えきれずに潰れてしまう骨折です。一般に「圧迫骨折」と呼ばれます。
この骨折には、他の骨折と大きく違う点が3つあります。
- 転倒などのはっきりしたきっかけがなくても起こる
- 痛みが軽く、気づかれないことがある
- 一度起こると、次の骨折が起こりやすくなる
このページでは、この3点を中心にご説明します。
① 転んでいなくても起こります
「転んでもいないのに骨折なんて」と驚かれる方が多いのですが、この骨折では珍しいことではありません。次のようなきっかけで起こることがあります。
- 重い物を持ち上げた
- くしゃみ・咳をした
- 前かがみになった
- 布団の上げ下ろしをした
- バスや電車で揺れた
- 尻もちをついた(軽い転倒)
- 思い当たるきっかけがまったくない
骨がもろくなっていると、日常の何気ない動作でかかる程度の力でも、背骨が潰れてしまうことがあります。
「そんなに強くぶつけていない」ということは、骨折を否定する理由にはなりません。 むしろ、軽い力で骨折したという事実そのものが、骨がもろくなっているサインです。
② 痛みが軽いこともあります(いつのまにか骨折)
多くの場合、骨折した直後から背中や腰に痛みが出ます。
- 寝返りを打つときに痛む
- 起き上がるときがいちばんつらい
- 立ったり座ったりする動作で痛む
- 横になっていると比較的楽
一方で、痛みをほとんど感じないまま、背骨が潰れていることがあります。 これは「いつのまにか骨折」と呼ばれ、健康診断や別の目的で撮ったレントゲンで偶然見つかることも少なくありません。
痛みが軽いために「年のせいで腰が曲がってきた」と受け止められ、骨折だと気づかれないまま経過することがあるのです。
次のような変化は、いつのまにか骨折のサインかもしれません。
- 身長が若い頃より2〜3cm以上縮んだ
- 背中が丸くなってきた
- 以前より前かがみの姿勢になった
- 洗濯物を干す、上を向く動作がしにくくなった
③ 一度起こると、次が起こりやすくなります
これが、この骨折で最も重要な点です。
背骨がひとつ潰れると、体を支えるバランスが崩れ、その上下の骨に負担が集中します。また、前かがみの姿勢になることで、さらに前方に力がかかりやすくなります。
その結果、次の骨折が起こりやすくなるという連鎖が生じます。骨折が積み重なると、背中の曲がりが強くなり、次のような影響が出てくることがあります。
- 内臓が圧迫され、食欲が落ちる、逆流性食道炎が起こりやすくなる
- 胸が圧迫され、息苦しさを感じる
- バランスが取りにくくなり、転倒しやすくなる
- 見た目の変化から、外出が減る
つまり、この骨折は「その一か所が治れば終わり」ではなく、次を防ぐところまでが治療だとお考えください。
骨折後こそ、骨粗鬆症の治療を始めるときです
圧迫骨折が起きたということは、骨粗鬆症がすでにかなり進んでいることを意味します。
ところが実際には、骨折の痛みが落ち着くとそのまま通院が終わり、骨粗鬆症そのものの治療が始まらないままになることが少なくありません。そして数か月後、また別の背骨が潰れて来院される——という経過は、決して珍しくないのです。
背骨が潰れた方は、次の骨折が起こる危険が高い状態にあります。 だからこそ、骨折の治療と並行して、あるいは痛みが落ち着いた時点で、骨密度を測り、骨粗鬆症の治療を始めることが大切です。
骨粗鬆症の検査については骨が弱くなっていないか心配、病態と治療については骨粗鬆症のページをご覧ください。
診断
問診では、いつから、どこが、どんな動作で痛むか、きっかけの有無、これまでの骨折歴、身長の変化、ステロイドの内服歴をうかがいます。
診察では、背骨を押したときの痛み(叩打痛)、姿勢、動きの制限を確認します。手足のしびれや力の入りにくさがないかも確かめます。
レントゲンで、背骨の潰れの有無と程度を確認します。ただし、受傷直後にははっきり写らないことがあります。 症状が続く場合は、日をあらためて撮り直すことで見えてくることがあります。
MRIは、その骨折が新しいものか古いものかを見分けるのに有用です。過去の骨折が複数ある場合や、痛みの原因がどれかを特定する必要がある場合に用います。当院にMRIはありませんので、連携医療機関での撮影となります。
あわせて、骨密度測定(DEXA法)で骨の状態を確認します。当院ではGE社製のX線骨密度測定装置(PRODIGY Fuga C)を用い、腰椎と大腿骨を測定します。
治療
保存的な治療が基本です
多くの圧迫骨折は、手術をせずに治していきます。
① コルセットによる固定
背骨の動きを制限し、潰れが進むのを防ぎます。装着する期間は状態によって異なります。
② 痛みへの対応
痛みが強い時期には、内服や外用で対応します。痛みを我慢して動かないでいると、次に述べる問題が生じます。
③ 早期からの離床・リハビリテーション
「安静にしすぎない」ことが、この骨折ではとても大切です。
高齢の方が数週間寝たきりに近い状態で過ごすと、筋力が急速に落ち、関節が硬くなり、肺炎などの合併症も起こりやすくなります。骨折そのものは治っても、その後の生活の質が大きく下がってしまうことがあるのです。
そのため、痛みをコントロールしながら、可能な範囲で早期に体を起こし、動かしていきます。当院には理学療法士が常勤しており、保険診療の範囲で、起き上がり方・体の使い方の指導や、体幹・下肢の筋力を保つ運動を受けていただけます。
④ 骨粗鬆症の治療
次の骨折を防ぐため、骨密度の評価と薬物治療を並行して進めます。
手術が検討される場合
痛みが強く長引く場合、潰れが進行する場合、神経の症状(脚のしびれ・麻痺)がある場合には、手術が検討されることがあります。当院では手術は行っておりません。 必要と判断した場合には、専門的な治療を行う医療機関へご紹介します。手術後のリハビリテーションについては、当院で継続して受けていただくことができます。
日常生活で気をつけたいこと
- 前かがみで重い物を持ち上げない:膝を曲げて体に近づけて持つ。
- 腰をひねりながら物を動かさない:布団の上げ下ろし、庭仕事など。
- 転倒を防ぐ:段差、滑りやすい床、暗い廊下、コード類。手すりの活用も。
- カルシウム・ビタミンD・たんぱく質をとる
- できる範囲で歩く・動く:骨は負荷がかかることで強くなります。
- コルセットは指示された期間・方法で:長く使いすぎると筋力が落ちることがあるため、外す時期も含めて医師にご相談ください。
よくあるご質問
Q. 転んでいないのに骨折することがあるのですか?
あります。骨がもろくなっていると、くしゃみや前かがみといった日常動作でも背骨が潰れることがあります。「強くぶつけていない」ことは骨折を否定する理由になりません。
Q. 痛みが軽いのですが、放っておいてもよいですか?
痛みの強さと骨折の有無は必ずしも一致しません。身長が縮んだ、背中が丸くなったといった変化がある場合は、一度確かめておくことをおすすめします。
Q. 安静にしていたほうがよいのでは?
痛みが強い時期の無理は禁物ですが、長く動かないでいると筋力が落ち、その後の生活に影響します。 痛みをコントロールしながら、可能な範囲で早めに動いていくことが大切です。どこまで動いてよいかは診察でご案内します。
Q. 曲がった背中は元に戻りますか?
潰れた骨の形が元に戻ることはありません。だからこそ、次の骨折を防ぐことが治療の中心になります。
Q. コルセットはいつまで着けるのですか?
骨折の程度や治り具合によって異なります。骨の状態を確認しながら判断しますので、自己判断で外さずご相談ください。
Q. 何科を受診すればよいですか?
背中や腰の痛みは整形外科でご相談いただけます。当院では整形外科専門医が診察・検査を行い、骨密度の評価まで含めて対応します。