外反母趾(親指の変形と痛み)

「靴を履くと親指の付け根が当たって痛い」「親指が小指側に曲がってきた」「以前の靴が入らなくなった」——外反母趾は、足の親指が小指のほうへ曲がり、付け根の関節が内側に出っぱってくる変形です。

「ハイヒールを履く人の病気」と思われがちですが、それだけではありません。 靴を履かない生活の方にも起こりますし、もともとの足の形が関わっていることも多くあります。

そして、変形の程度と痛みの強さは、必ずしも一致しません。 見た目が目立っていても痛くない方がいる一方で、変形が軽くても強く痛む方がいらっしゃいます。

外反母趾で足に起きていること

親指の付け根の関節(第1中足趾節関節)で、親指が小指側へ傾きます。同時に、その手前にある骨(第1中足骨)は逆に内側へ広がっていきます。この2つが同時に起こるため、付け根が「く」の字に飛び出したように見えます。

出っぱった部分は靴に当たり続けるため、皮膚が厚くなったり、その下の袋(滑液包)に炎症が起きたりします。赤く腫れて熱をもつのは、この炎症によることが多くあります。

進むと、親指が本来の役割を果たせなくなります。歩くとき、最後に地面を蹴るのは親指です。その親指が使えないぶんの負担が、2番目・3番目の指の付け根に移ります。 足の裏にタコができる、指の付け根が痛む、といった変化が出てくるのはこのためです。

なぜ曲がるのか

外反母趾は、もともとの足の形(素因)に、外からの負担(環境)が重なって進むと考えられています。

もともとの要因

  • 開張足(かいちょうそく):足の横のアーチが低くなり、足の幅が広がった状態です。外反母趾の背景として、もっともよくみられます。
  • 扁平足:土踏まずが低く、歩くときに足が内側へ倒れやすくなります。
  • 親指が人差し指より長い足の形(エジプト型)
  • 関節がやわらかい体質
  • 家族に外反母趾の方がいる

外からの要因

  • つま先が細い靴・かかとの高い靴:つま先に体重が集中し、親指が押される時間が長くなります。
  • サイズの合わない靴:大きすぎる靴も、なかで足が前に滑って同じことが起こります。
  • 立ち仕事・長時間の歩行
  • 加齢:靭帯がゆるみ、アーチが低くなっていきます。

女性に多いのは、靴の影響に加えて、もともと関節や靭帯がやわらかい傾向があるためと考えられています。

進行の見きわめ

痛みの有無だけでは、進行の程度は分かりません。レントゲンで、親指がどのくらいの角度で傾いているかを測ります。

  • 軽度:見た目に変形が分かるが、靴を選べば日常に支障が少ない
  • 中等度:靴が限られる、付け根が当たって痛む、タコができる
  • 高度:親指が人差し指に乗り上げる・下に潜り込む、2番目の指の付け根が痛む

角度が大きくても痛みが軽い方はいます。 逆に、角度が軽くても炎症が強ければ痛みます。治療の目的は角度を戻すことではなく、痛みなく歩けるようにすることです。この前提が、治療の選び方を決めます。

当院での診察

  1. 問診:いつから、どんな靴で痛むか、立ち仕事かどうか、ご家族の足の形をうかがいます。
  2. 診察:親指の傾き、付け根の腫れ・赤み、親指の関節の動く範囲、足裏のタコの位置を確認します。タコの位置は、どこに体重がかかっているかを教えてくれます。
  3. レントゲン:角度を測り、関節の変形の程度を確認します。
  4. 歩き方の確認:理学療法士が、足のつき方と体重移動を確認します。
  5. 靴の確認:普段履いている靴をお持ちいただくと、すり減り方から負担のかかり方が分かります。

治療の考え方

外反母趾の治療は、保存療法が基本です。 変形そのものを元に戻すことはできませんが、痛みを減らし、進行を遅らせることはできます。

靴の見直し

もっとも効果が期待できるところです。

  • つま先に1cm程度のゆとりがあり、指が動かせる
  • 足の幅がいちばん広い部分と、靴の幅の広い部分が合っている
  • ひもや面ファスナーで甲を固定できる(靴のなかで足が前に滑らない)
  • かかとが硬く、しっかり支えられる
  • 靴選びは夕方に(足がむくむため)

装具(インソール・足底板)

低くなった横アーチを支えることで、親指の付け根への集中を減らします。既製品もありますが、足の形に合わせて作るほうが効果を得やすいとされています。

運動療法

足の指を使う筋肉が働かなくなると、アーチを支える力が落ちます。理学療法士が、足の状態に合わせた運動をご提案します。タオルを足の指でたぐり寄せる運動や、親指を広げる運動などがよく用いられます。

痛みへの対応

付け根が赤く腫れて熱をもっているときは、炎症を抑える内服・外用を併用しながら、靴と装具の調整を進めます。

手術が検討される段階

保存療法を十分に続けても痛みが強く、日常生活に支障がある場合には、骨を切って角度を整える手術が検討されます。当院で手術が望ましいと判断した場合は、無理におすすめすることはせず、連携する専門医療機関へご紹介します。

見た目を整えることだけを目的とした手術は、当院では扱っていません。

ご自宅でできること

  • 家のなかでも足を締めつけない。 きついスリッパは避けてください。
  • 足の指を広げる・動かす習慣を。 お風呂上がりに、手で親指をやさしく広げる、指をグーパーする、といった動きから始められます。
  • タコを自分で削らない。 一時的に楽になっても、体重のかかり方が変わらなければ戻ります。削りすぎて傷になることもあります。
  • 足を観察する。 赤み・腫れ・タコの位置が変わってきたら、負担のかかり方が変わったサインです。
  • 糖尿病のある方はとくに注意。 傷が治りにくく、感覚が鈍って痛みに気づきにくいことがあります。

よくあるご質問

Q. 手術しないと治りませんか?
変形そのものを元に戻すには手術が必要ですが、多くの方は保存療法で痛みなく過ごせるようになります。 痛みが取れて日常に支障がなければ、手術を急ぐ必要はありません。

Q. 市販のサポーターやグッズは効きますか?
痛みが軽くなる方はいらっしゃいます。ただし、変形を矯正するものではありません。 つけている間だけ楽になる、という位置づけでお考えください。合わないものを使うと、かえって痛むこともあります。

Q. 放っておくとどうなりますか?
進むと、親指が人差し指に乗り上げたり、2番目・3番目の指の付け根が痛んだりします。足全体のバランスが崩れて、膝や腰に影響が出ることもあります。痛みが出てきた段階でご相談ください。

Q. 子どもの外反母趾もありますか?
成長期に起こることがあり、若年性外反母趾と呼ばれます。家族に外反母趾の方がいる場合に多いとされています。成長期は靴の影響を受けやすいため、早めにご相談ください。

Q. ハイヒールをやめれば治りますか?
すでにできた変形が戻ることはありませんが、進行を遅らせることにはつながります。 履く場面と時間を減らす、履かない日をつくる、といった工夫からで構いません。

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