唇や皮膚に水ぶくれを繰り返す
「疲れると、決まって唇の同じ場所に水ぶくれができる」「風邪をひいたあとに出る」「またあの感じが来た、と自分で分かる」——
同じ場所に、繰り返し水ぶくれができる。これは単純ヘルペスの典型的な特徴です。
そして、この病気には知っておくと得をすることがあります。
「そろそろ出そうだ」というサインの段階で治療を始めると、軽く済むことが多いのです。水ぶくれができてから受診するより、その前に動くほうが、経過が短くなります。
このページでは、そのサインの見分け方と、帯状疱疹との違いをご説明します。
「繰り返す」のが最大の特徴です
水ぶくれができる病気はいくつかありますが、同じ場所に何度も繰り返すというのは、単純ヘルペスに特徴的です。
理由は、ウイルスの性質にあります。
一度感染すると、ウイルスは神経の根もとに潜んだまま、体の中に残り続けます。 普段は免疫の力で抑え込まれていますが、体力が落ちたときなどに再び活動を始め、その神経が支配する皮膚に症状を出します。
同じ神経から出てくるので、毎回ほぼ同じ場所に出る——これが「繰り返す」理由です。
再発のきっかけ
- 疲労・寝不足
- 風邪・発熱(「熱の華」と呼ばれるのはこのためです)
- 強い日光を浴びた
- ストレス
- 月経の前後
- 歯科治療のあと
「決まって疲れたときに出る」というのは、気のせいではありません。
出る前のサインに気づいてください
多くの方が、水ぶくれができる数時間から1日前に、次のような感覚を覚えます。
- ピリピリ、チクチクする
- むずむずする、違和感がある
- 熱っぽい、つっぱる感じ
繰り返している方は、「あ、来たな」と自分で分かることが多いはずです。
この段階で治療を始めると、水ぶくれが小さく済んだり、治るまでの日数が短くなったりします。 逆に、はっきり水ぶくれができてから始めると、効果は限られます。
だからこそ、備えておく価値があります
繰り返している方には、あらかじめお薬をお渡ししておき、サインが出た時点でご自身で飲み始めていただくという方法が使える場合があります。これができると、毎回受診を待つ必要がなくなります。
「またか」と諦めておられる方こそ、一度ご相談ください。 対応の仕方が変わることがあります。
帯状疱疹との違い
水ぶくれと聞くと、帯状疱疹を思い浮かべる方も多いと思います。この2つは、実は近い仲間のウイルスですが、症状の出方が違います。
| 単純ヘルペス | 帯状疱疹 | |
|---|---|---|
| 繰り返し | 何度も繰り返す | 通常は一度(まれに再発) |
| 出る場所 | 毎回ほぼ同じ場所。唇、口のまわり、性器、目の周囲、おしり | 体の片側に、帯状に広がる |
| 範囲 | 狭い(数cm程度) | 広い(体の片側の一定範囲) |
| 痛み | 軽いことが多い | 強い痛みを伴うことが多い |
| 年齢 | 若い方にも多い | 50歳以降に多い |
「体の片側に、帯状に広がって、強く痛む」場合は帯状疱疹を考えます。詳しくは水ぶくれと帯状の痛みが出たのページをご覧ください。
なお、帯状疱疹は早期の治療が特に大切ですので、迷われる場合は早めにご相談ください。
そのほか、水ぶくれができる病気
- とびひ(伝染性膿痂疹):お子さんに多く、水ぶくれが破れてじくじくし、掻いた手で次々に広がるのが特徴です
- 汗疱(異汗性湿疹):手のひらや指の側面に、小さな水ぶくれが多数出るもの
- 接触皮膚炎(かぶれ):触れたものに一致した範囲に、赤みと水ぶくれが出ます
- 虫刺され:刺された部分に水ぶくれができることがあります
- やけど
「繰り返す」「同じ場所」「出る前にピリピリする」——この3つがそろえば、単純ヘルペスの可能性が高くなります。
人にうつることについて
単純ヘルペスはうつる病気です。ただし、必要以上に恐れる必要も、ご自身を責める必要もありません。実務的に、次のことを知っておいてください。
うつりやすいのは、水ぶくれがある時期です。水ぶくれの中の液体にウイルスが多く含まれます。
気をつけること
- 水ぶくれを触らない。触ったら手を洗う
- タオル・食器・グラスを共用しない
- 患部を触った手で目をこすらない(目に感染すると、視力に関わることがあります)
- 赤ちゃん、アトピー性皮膚炎の方、免疫が低下している方には、とくに接触を避ける
- 口唇に症状があるときのキス、性器に症状があるときの性的接触は避ける
かさぶたになれば、うつる心配はほぼなくなります。
なお、多くの成人がこのウイルスを体内に持っています。 感染していること自体は珍しいことではありません。「不潔にしていたから」「だらしないから」といったこととは無関係です。
こんなときはご相談ください
- 繰り返していて、毎回つらい
- 範囲が広がってきた
- 目の周囲、まぶたに症状がある(早めにご相談ください)
- 痛みが強い
- 発熱、リンパの腫れを伴う
- アトピー性皮膚炎がある方で、広い範囲に水ぶくれが出た(早めにご相談ください)
- 免疫を抑えるお薬を使っている
- 妊娠中である
- 市販薬で良くならない
目とアトピーの方は、とくに注意が必要です。この2つに当てはまる場合は、様子を見ずにご相談ください。
当院での診察の流れ
いつから、どこに、どんなふうに出ているか、過去に同じ場所に出たことがあるか、出る前の感覚、きっかけになりそうな出来事(疲れ、発熱、日光など)をうかがいます。「繰り返しているか」が、診断の最大の手がかりです。
診察では、水ぶくれの分布、大きさ、範囲、痛みの程度を確認します。多くの場合、見た目と経過で判断できます。判断が難しい場合には、検査を行うことがあります。
対応としては、抗ウイルス薬の内服や外用を用います。早い段階で始めるほど効果が期待できるため、サインの段階で受診されるのが理想です。
繰り返している方には、あらかじめお薬をお渡ししておく方法についてもご相談できます。詳しくは単純ヘルペスのページをご覧ください。
部位ごとの特徴と注意点
同じ単純ヘルペスでも、出る場所によって気をつけたい点が変わります。
唇・口のまわり
最も多い部位です。「熱の華」「風邪の華」と呼ばれることもあります。紫外線が引き金になるため、スキー、海、屋外での長時間の活動のあとに出る方が多くいらっしゃいます。日焼け止め効果のあるリップクリームが予防に役立つことがあります。
口の中
初めて感染したときには、口の中に多数の潰瘍ができ、食事や水分がとれなくなることがあります。小さなお子さんに多く、脱水が心配される場合は早めにご相談ください。
目のまわり・まぶた
この部位は特に注意が必要です。 目にウイルスが及ぶと、角膜に炎症を起こし、視力に関わることがあります。まぶたや目のまわりに水ぶくれが出た場合は、自己判断せず早めにご相談ください。 眼科での確認が必要になることもあります。
指先
指に水ぶくれができ、腫れて痛むことがあります。「化膿している」と思われて、切開されてしまうことがあるのですが、ヘルペスの場合は切開が適切ではありません。繰り返す指先の水ぶくれは、その旨をお伝えください。
おしり・太もも
性器から離れた部位に出ることもあります。同じ場所に繰り返すという特徴は共通です。
性器・その周辺
初めてのときは症状が強く、痛みや排尿時のしみるような感覚を伴うことがあります。繰り返す場合の対応もありますので、我慢せずご相談ください。
よくあるご質問
Q. 市販薬で治せますか?
市販の外用薬もありますが、繰り返している方や範囲が広い方は、内服のほうが効果が期待できます。 また、他の病気との区別が必要な場合もありますので、一度診察を受けていただくことをおすすめします。
Q. 何度も繰り返します。体質でしょうか?
体質というより、ウイルスが体内に潜んでいる状態だからです。疲れや体調の変化で再び活動します。回数が多い方には、対応の方法がありますのでご相談ください。
Q. 潜んでいるウイルスを消すことはできますか?
現在の治療で、神経に潜んだウイルスを完全に取り除くことはできません。再発したときに早く抑えること、回数を減らすことが治療の目標になります。
Q. 家族にうつしてしまいますか?
水ぶくれがある時期は可能性があります。タオルや食器を分ける、患部を触らない、といった対応で減らせます。かさぶたになれば心配はほぼなくなります。
Q. 妊娠中ですが大丈夫ですか?
時期や部位によって注意が必要な場合があります。自己判断で市販薬を使わず、妊娠中であることをお伝えのうえご相談ください。
Q. 何科を受診すればよいですか?
皮膚の水ぶくれは皮膚科でご相談いただけます。目の周囲に症状がある場合は、眼科での確認が必要になることがあります。