爪白癬(爪水虫)
爪白癬は、足の水虫の原因となる白癬菌が、爪の中に入り込んだ状態です。爪水虫とも呼ばれます。
この病気について、最初に3つのことをお伝えします。
① 市販の塗り薬では、ほぼ治りません。 爪の構造上、薬が届かないためです。
② 治療には時間がかかります。 足の爪が生え変わるのに1年から1年半かかるためで、これは短縮できません。
③ 検査をせずに治療を始めるべきではありません。 爪の変色や変形は、白癬以外の原因でも起こります。 実際、爪の異常で受診される方のうち、白癬でない方は珍しくありません。
この3点を知っておいていただくと、治療の進め方が理解しやすくなります。
なぜ塗り薬だけでは治らないのか
爪は、硬いタンパク質が何層にも重なった、非常に密な構造をしています。
白癬菌は、その爪の中と、爪の下(爪床)にいます。
一般的な水虫の塗り薬は、皮膚に浸透するようにつくられており、この硬い爪を通り抜けて内部に届くようには設計されていません。
「爪の表面に塗っているのに、良くならない」のは、当然のことなのです。
では、どうするか
① 内服薬
飲み薬で、血流を通じて爪の内側から薬を届けます。最も確実な方法とされています。
② 爪専用の外用薬
爪に浸透するよう設計された、処方薬の外用があります。市販の水虫薬とは別のものです。
- 内服が難しい方(後述)に選択されます
- 毎日、長期間、続けることが必要です
- 症状の程度や範囲によって、向き不向きがあります
どちらを選ぶかは、爪の状態、範囲、持病、飲んでいるお薬によって変わります。 診察でご相談ください。
検査をしてから始めます
ここが重要な点です。
爪が白く濁る、厚くなる、変形する——これらは白癬以外でも起こります。
- 爪甲鉤彎症:加齢や靴の圧迫による、爪の肥厚と変形
- 爪乾癬:爪に小さなくぼみ(点状陥凹)ができる
- 外傷:ぶつけた、圧迫が続いた
- 爪カンジダ症
- 緑膿菌による変色:緑色になります
- 爪扁平苔癬
- 薬や全身の病気による爪の変化
- 爪の下の血腫(内出血)
- 爪にできる腫瘍:まれですが、注意が必要なものもあります
白癬でないものに抗真菌薬を使っても、良くなりません。 そして内服薬の場合、必要のない薬を長期間飲むことになります。
検査は簡単です
爪の一部を少し削り取り、顕微鏡で白癬菌がいるかどうかを確認します。痛みはほとんどありません。
この確認をしてから治療を始めるのが、確実な進め方です。
すでに市販薬を使っておられる場合は、そのことをお伝えください。 薬を使っていると菌が見つかりにくくなるため、一定期間中止してから検査したほうがよいことがあります。
症状
- 爪が白く、または黄色く濁る
- 爪が厚くなる
- 爪の先がボロボロと崩れる
- 爪と爪床の間に隙間ができる
- 爪が変形する、伸び方が不揃いになる
- 通常、痛みはありません
多くは、足の親指から始まります。 爪の先端の端から始まり、徐々に根元に向かって広がるのが典型的な経過です。
進むとどうなるか
- 厚くなった爪が靴に当たって痛む
- 爪が皮膚に食い込む
- 歩きにくくなる
- 爪切りが自分でできなくなる
ご高齢の方では、これが転倒につながることがあります。
放っておくと、周りに影響します
爪白癬は、痛みがないため放置されやすい病気です。しかし、次の点を知っておいてください。
① 足の水虫が治りません
爪の中の菌が、足の皮膚に繰り返し菌をまき続けます。 「足の水虫の薬を塗っても、毎年ぶり返す」という方は、爪が原因になっていることがあります。
② ご家族にうつります
バスマット、スリッパ、床を介して広がります。ご家族に水虫の方がいる場合、片方だけ治療しても、また戻ります。
③ 細菌感染の入口になります
爪の周りの皮膚が傷むと、そこから細菌が入り、蜂窩織炎を起こすことがあります。詳しくは蜂窩織炎をご覧ください。
④ 糖尿病のある方では、とくに注意が必要です
足のトラブルが重くなりやすいため、早めの対応が望まれます。
治療について、知っておいていただきたいこと
時間がかかります
足の爪が根元から先まで生え変わるのに、1年から1年半かかります。
つまり、薬で菌がいなくなっても、すでに傷んだ爪はそのまま残ります。 きれいな爪は、根元から新しく伸びてくる分です。
「飲んでいるのに見た目が変わらない」と感じる時期が、必ずあります。
根元のほうを見てください。 そこがきれいに伸びていれば、治療は効いています。
内服薬について
- 飲む前に、血液検査で肝臓の状態を確認します
- 飲んでいる間も、定期的に確認します
- 他のお薬との飲み合わせに注意が必要なものがあります。服用中のお薬は、すべてお伝えください
- 持病や状態によっては、内服を避けたほうがよい場合があります
- 妊娠中・授乳中の方は使えません
内服を選べるかどうかは、診察と検査で判断します。 ご自身で「飲めるはず」「飲めないはず」と決めずに、ご相談ください。
途中でやめないでください
症状が良くなってきても、決められた期間は続けてください。 途中でやめると、残った菌からまた広がります。
再発を防ぐために
治療が終わっても、環境が変わらなければ、また感染します。
- 足の水虫も一緒に治す:これが最も重要です
- 毎日足を洗う:指の間を、泡でやさしく。こすらない
- よく乾かす:指の間まで。ここが最も大切です
- 同じ靴を毎日履かない:最低でも2足を交互に。1日履いた靴は乾かす
- 通気性のよい靴下:綿など。1日の途中で替えるとさらに良い
- バスマット、スリッパを共用しない
- 床をこまめに掃除する
- ご家族に水虫の方がいれば、一緒に治療する
足を清潔に、乾いた状態に保つ——地味ですが、これが再発予防の中心です。
爪切りが難しくなってきた方へ
厚くなった爪は、普通の爪切りでは切れません。 無理に切ろうとして、次のようなことが起こります。
- 爪が割れる、欠ける
- 深爪になり、皮膚を傷つける
- 切った端が皮膚に食い込む
- 手が届かず、無理な姿勢で転倒する
とくにご高齢の方、腰や膝に痛みのある方、目が見えにくい方にとって、足の爪切りは想像以上に大変な作業です。
少しでも切りやすくするために
- 入浴後に切る:爪がやわらかくなっています。 これがいちばん簡単で効果的な工夫です
- 少しずつ、何回かに分けて切る:一度に切ろうとしない
- 爪切りではなく、爪やすりを使う:厚い爪には有効です
- ニッパー型の爪切り:厚い爪に対応したものがあります
- まっすぐ切る:角を深く切り込まない(食い込みの原因になります)
ご自身で難しい場合は、無理をせずご相談ください。 爪の状態によっては、診察の中で対応できることがあります。
「爪を切ってもらうためだけに受診してよいのか」と思われるかもしれませんが、爪のトラブルは歩行や転倒に直結します。 遠慮なくお申し出ください。
治療を始める前に、決めておいていただきたいこと
爪白癬の治療は長期戦です。始める前に、次のことを考えておいていただくと、途中でつまずきにくくなります。
① なぜ治したいのか
- 見た目が気になる
- 家族にうつしたくない
- 足の水虫を繰り返すのをやめたい
- 爪が厚くて痛い、歩きにくい
- 温泉やプールに行きたい
目的がはっきりしていると、続けやすくなります。 逆に「なんとなく」で始めると、変化の乏しい時期に中断しがちです。
② 内服と外用、どちらが生活に合うか
- 内服:定期的な血液検査と受診が必要。飲み合わせの確認も必要
- 外用:毎日欠かさず塗る手間が続く。通院の負担は内服より軽い
どちらが優れているかではなく、続けられるかどうかが結果を分けます。 ご自身の生活を踏まえて、診察でご相談ください。
③ 家族の足も確認する
ご家族に水虫の方がいると、治療中も繰り返し感染します。 治療を始めるなら、同じタイミングでご家族にも確認していただくのが確実です。
よくあるご質問
Q. 市販薬で治せますか?
爪白癬に対しては、市販の水虫薬はほとんど効果が期待できません。 爪の内部まで届かないためです。
Q. 痛くないので、放っておいてもよいですか?
足の水虫が治らない、家族にうつる、爪が厚くなって歩きにくくなるといった問題が続きます。ご判断はご本人次第ですが、時間が経つほど治療は長くなります。
Q. 治療にいくらかかりますか?
保険診療の対象です。薬の種類、期間、検査によって変わりますので、診察でご説明します。
Q. ネイルはできますか?
治療中は避けていただくのが基本です。爪の状態が見えなくなり、経過が判断できません。また、外用薬を使う場合は塗れません。
Q. 内服が心配です。
肝臓への影響や飲み合わせを、検査と問診で確認したうえで判断します。難しい場合は、外用薬という選択肢があります。
Q. 治ったかどうかは、どう分かりますか?
新しく伸びてきた爪がきれいであることが目安です。必要に応じて、再度顕微鏡で確認します。
Q. 何科を受診すればよいですか?
皮膚科でご相談ください。まず、白癬かどうかを確かめるところから始めます。