ハイドロリリース

「レントゲンでは骨に問題ない、と言われました」

それでも、痛みは続いている。

首、肩、背中、腰。画像で異常が見つからないのに、動かすと痛い。そういう痛みで来院される方は、少なくありません。

このページでは、筋肉や筋膜の「重なり」に目を向ける処置について、できることとできないことを、順序立ててご説明します。

まず、順序があります

当院では、いきなりこの注射をおすすめすることはありません。

① 診察と、原因をしぼること

どこが、どの動きで痛むのか。痛む場所と、原因の場所は、しばしば違います。まずここを確かめます。

② リハビリテーション・内服薬・外用薬

まず、ここからです。

姿勢、動かし方、筋力、仕事中の姿勢。注射より先に手をつけるべきことが、たくさんあります。保険診療で行えます。

③ 保険診療の注射

痛みの程度や状態によっては、保険でできる注射があります。診察のうえでご説明します。

④ ハイドロリリース(自費)

②③で十分でない場合に、選択肢としてご提案します。

この順序を飛ばさないことが、当院の考え方です。

ハイドロリリースとは

筋肉と筋肉のあいだ、筋肉と筋膜のあいだには、本来「すべり」があります。

ここが癒着したり、動きが悪くなったりすると、動かしたときに引っぱられて痛みが出ると考えられています。

ハイドロリリースは、この重なった層に薬液を注いで、すべりやすい状態をつくることを目的とした処置です。

「リリース」は、剥がすという意味です。

何を注射するのですか

生理食塩水に、ごく薄めた局所麻酔薬を加えたものです。

当院では、1%キシロカイン(リドカイン)1mL を生理食塩水 19mL で薄めた、合計20mL を用意しています。ステロイドは入っていません。

局所麻酔薬の量は全体の20分の1です。麻酔をかけるためではなく、注射の刺激をやわらげる目的で少量を加えています。

リドカインやキシロカインでアレルギーが出たことのある方は、必ずお申し出ください。

エコーで見ながら行います

これが、この処置のいちばん大事なところです。

超音波(エコー)の画面で、筋肉の層・筋膜・神経・血管の位置を確かめながら針を進めます。

  • どの層に入れるのかを、画面で見て決めます
  • 神経や血管を避けながら進めます
  • 入った薬液が実際に層を広げているかを、その場で確認できます

やみくもに打つ処置ではありません。

まだ研究が続いている処置です

正直にお伝えします。

この処置は、長期的な効果についての研究が、まだ十分に積み上がっていません。痛みがやわらぐ方がいらっしゃる一方で、効果には個人差があり、変化を感じにくい方もおられます。

「これをやれば治る」とは申し上げられません。そのうえで、選択肢としてご提案しています。

向いている場合/向いていない場合

すべての痛みに向く処置ではありません。

ハイドロリリースは、筋肉や筋膜の「すべり」が関わっていると考えられる痛みを対象にしています。原因がほかにある場合、ここに手をつけても変わりません。まず、どちらなのかを診察で見分けます。

ご提案することがある場合

  • 画像で明らかな異常がないのに、動かすと痛む
  • 特定の部位を押すと、いつも同じ場所が痛い
  • リハビリを続けているが、ある一点でつかえている感じがある
  • 痛みでリハビリそのものが進めにくい

最後のものが、実は多い理由です。痛みが強くてリハビリが進まない方に、動かせる状態をつくるために行うことがあります。

向いていない場合

  • 痛みの原因が、骨・関節・神経の圧迫など別のところにある
  • 注射した場所に感染や皮膚の炎症がある
  • 血が止まりにくいお薬を飲んでいる(抗凝固薬・抗血小板薬。お申し出ください)
  • まだリハビリや内服で試せることが残っている

「まず、やるべきことが残っています」とお伝えすることがあります。

診察のうえで判断します。診察だけで終えていただいて構いません。

部位について(料金に関わる大事な点)

料金は1回あたりです。部位ごとの加算はありません。

ただし、だから多ければ多いほどよい、ということではありません。

1回に使う薬液の量は決まっています。

部位を増やすほど、1部位あたりに入る量は少なくなります。薄く広く入れることになり、ねらった層を十分に広げられないことがあります。

ですので、

  • 症状
  • 診察で確かめた痛む場所
  • エコーで実際に見た状態

この3つから、その日に入れる部位を医師が決めます。

ご希望の部位をすべて入れる、という形ではありません。この点は、処置の前にご説明します。

当日の流れ

  1. 診察——どの動きで、どこが痛むのかを確かめます
  2. エコーで確認——層の状態と、入れる場所を決めます
  3. 処置——数分です。入れている間、張るような感覚があります
  4. その場で動かしてみます——変化を確認します
  5. ご説明——当日の過ごし方と、次の予定

処置そのものは短時間です。

注射した部位の近くが、数時間、しびれたような感じや力の入りにくさを伴うことがあります。局所麻酔薬によるもので、通常は当日中に戻ります。気になる場合はお申し出ください。

当日の入浴は、通常どおりで差し支えありません。激しい運動は、当日は控えてください。

どのくらいで判断するか

その場で軽くなる方もいらっしゃいます。一方で、数日たってから変化を感じる方もおられます。

ただし、直後の軽さについては、ひとつお伝えしておきたいことがあります。

薬液にはごく薄い局所麻酔薬が入っているため、打った直後の痛みのやわらぎには、麻酔の効果も混じっています。麻酔は数時間で切れます。

本当の変化は、麻酔が切れたあとの状態で判断します。翌日以降どうだったかを、次の診察でお聞かせください。

効果の持続には、個人差があります。

大切なのは、ここで終わりにしないことです。

すべりが改善している間に、動かし方を変えていく。ここまでやらないと、同じ状態に戻ります。

リハビリと組み合わせます

この処置は、単独で完結するものとは考えていません。

当院では、理学療法士の運動療法と組み合わせることを前提にご案内しています。

  • 痛みがやわらいだ状態で、動かし方・姿勢を見直す
  • 負担がかかっている原因(仕事中の姿勢、使い方のくせ)に手をつける

注射だけを繰り返す形は、おすすめしていません。

リハビリテーション科はこちらをご覧ください。

よくあるご質問

Q. 痛いですか?
針を刺すときの痛みと、薬液が入るときの張る感じがあります。エコーで見ながら細い針で行います。我慢できない場合は、その場でお伝えください。

Q. 保険は使えますか?
この処置は自由診療(保険適用外)です。ただし、状態によっては保険でできる注射があります。どちらが適しているかは、診察のうえでご説明します。

Q. 何回くらい受けるものですか?
決まった回数はありません。1回で様子をみて、必要に応じてご相談します。回数を重ねることを前提にはしていません。リハビリと組み合わせて、間隔をあけていく形を目指します。

Q. ステロイドは入っていますか?
入っていません。生理食塩水に、ごく薄めた局所麻酔薬(1%キシロカイン 1mL を生理食塩水 19mL で希釈)を加えたものです。

Q. 麻酔が効いているだけではないですか?
打った直後については、その要素もあります。含まれる局所麻酔薬はごく少量ですが、数時間は効きます。麻酔が切れたあとにどうだったかを次の診察でお聞かせください。そこで判断します。

Q. 当日、仕事に戻れますか?
通常は差し支えありません。デスクワーク・軽作業は可能です。激しい運動と、重い物を持つ作業は当日お控えください。

Q. 他院で受けていますが、続けられますか?
診察のうえで判断します。これまでの経過をお聞かせください。

この治療を受けられる前に(費用・リスク・自由診療について)

このページでご案内している治療は自由診療(保険適用外)です。ご検討の前にご確認ください。

  • ハイドロリリース:自由診療(保険適用外)です。標準的な費用は 5,500円/回(税込)。部位ごとの加算はありません(1回あたりの料金です)。別途、初診料・再診料がかかります。
  • 用いる薬液:生理食塩水に、ごく薄めた局所麻酔薬を加えたものです(1%キシロカイン〔リドカイン〕1mL + 生理食塩水 19mL)。ステロイドは含みません。
  • 主なリスク・副作用:注射時の痛み、注射部位の痛み・腫れ・内出血、気分が悪くなる・めまい(血管迷走神経反応)、感染(まれ)、神経や血管の損傷(まれ)、局所麻酔薬(リドカイン)に対するアレルギー(まれ)。注射した部位の近くに、数時間、しびれた感じや力の入りにくさが出ることがあります。首から背中にかけての部位では、気胸(肺に空気がもれる状態)が起こることがまれにあります。リドカインでアレルギーが出たことのある方、血が止まりにくいお薬を服用中の方は、必ずお申し出ください。治療効果には個人差があります。
  • 承認状況と適応外使用について:用いる生理食塩水・局所麻酔薬は、いずれも国内で承認を受けた医薬品です。ただし、筋膜のあいだに注入してすべりを改善させる使い方は、承認された効能・効果の範囲には含まれません。いわゆる適応外使用にあたります。医師が必要と判断した場合に、ご説明のうえで行います。
  • 入手経路・救済制度:国内の正規流通経路で入手しています。医師の個人輸入は行っておりません。適応外使用のため、健康被害が生じた場合に医薬品副作用被害救済制度の対象とならないことがあります。

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