シンスプリント

シンスプリントは、すねの内側に沿って痛みが出るスポーツ障害です。正式には脛骨過労性骨膜炎などと呼ばれます。

練習量が増えた時期——新学期、新チーム、合宿、大会前——に多くみられ、走る競技の選手によく起こります。

このページで最もお伝えしたいのは、「すねの内側が痛む」という同じ訴えの中に、シンスプリントと疲労骨折が混じっているという点です。この2つは対応が大きく異なるため、見分けることが大切になります。

何が起きているのか

すねの骨(脛骨)の内側には、足首や足指を動かす筋肉が付着しています。走る、跳ぶ、着地するといった動作のたびに、これらの筋肉が働き、骨を包む膜(骨膜)が繰り返し引っ張られます。

負担が繰り返され、回復が追いつかなくなると、この付着部や骨膜に炎症が生じます。これがシンスプリントです。

「使いすぎ」というより、「回復が追いつかないうちに次の負担がかかった」状態とお考えください。練習をがんばったこと自体が悪いわけではありません。

起こりやすい条件

  • 練習量が急に増えた(新チーム、合宿、大会前)
  • 硬い路面での練習(アスファルト、体育館の床)
  • 靴が合っていない、すり減っている
  • 扁平足・回内足(着地で足が内側に倒れ込む)
  • ふくらはぎが硬い
  • 足首の動く範囲が狭い
  • 体幹や股関節の筋力が弱い(着地の衝撃を脚だけで受け止めることになります)
  • 成長期で急に身長が伸びた

疲労骨折との見分け

すねの内側の痛みでは、脛骨の疲労骨折が隠れていることがあります。この2つは対応が異なるため、区別が必要です。

シンスプリント疲労骨折
痛む範囲すねの内側に沿って広い範囲(指で示すと「この辺り」)一点に限局(指で示すと「ここ」)
痛む場所すねの内側、下から3分の1あたりに沿って骨の一点
痛みの出方運動の始めに痛み、動くうちに軽くなることがある運動を続けるほど強くなる
安静時通常は痛まない進行すると安静時も痛む
叩いたとき広い範囲で響く一点で鋭く痛む

ご自身で確かめる方法:指1本で、すねの内側を下から上へ押していってください。「ここだけ痛い」という一点がある場合は、疲労骨折の可能性があります。「この辺り全体が痛い」であれば、シンスプリントらしい所見です。

ただし、シンスプリントを放置すると疲労骨折に進むことがあります。 また、両方が併存していることもあります。自己判断せず、確かめておくことをおすすめします。

そのほか、コンパートメント症候群(筋肉を包む区画の内圧が上がるもの)との区別が必要な場合もあります。走っている間に張りが強くなり、しびれを伴うといった場合は、診察でお伝えください。

症状

  • すねの内側に沿って痛む
  • 走る・跳ぶ動作で痛む
  • 練習の始めに痛み、動いているうちに軽くなることがある
  • 進行すると、練習中ずっと痛む、日常生活でも痛む
  • 痛む部分を押すと痛い、軽く腫れていることがある

「以前は練習の後だけだったのが、始めから痛むようになった」という変化は、進行のサインです。

診断

問診では、いつから・どこが・どんなときに痛むか、競技と練習量、練習量が変わった時期、路面、靴の状態をうかがいます。成長期であれば、最近急に背が伸びたかも確認します。

診察では、痛む範囲を指でたどって確かめます。「一点か、広い範囲か」がここでの最大の判断材料です。あわせて、足のアーチのかたち、着地での足の傾き、足首の動く範囲、ふくらはぎの硬さ、体幹・股関節の筋力を評価します。

レントゲンで骨の状態を確認します。ただし、初期の疲労骨折はレントゲンに写らないことがあります。

超音波(エコー)検査では、骨膜の反応や周囲の状態を観察できます。当院では院内で行えますので、その場で確認できます。

疲労骨折が疑われるものの判断がつかない場合には、時間をおいて撮り直すか、MRIをご案内します。MRIは連携医療機関での撮影となります。

治療

急性期:負担を減らす

  • 走る量を減らす、または一時的に休む:期間は程度によります
  • アイシング:練習後に15〜20分
  • 痛みへの対応:外用・内服

完全に何もしない必要はありません。 痛みの出ない範囲で、水中運動、自転車、上半身・体幹のトレーニングを続けることで、体力を落とさずに回復を待てます。

再発を防ぐための見直し

シンスプリントは、同じ条件が続けば再び起こります。 痛みが取れたからと元の練習に戻ると、また同じことになります。次の点を見直します。

① 柔軟性
ふくらはぎ(腓腹筋・ヒラメ筋)、足底、太もも後面。壁に手をついて片脚を後ろに引き、膝を伸ばしたまま20〜30秒。膝を軽く曲げてもう20〜30秒。左右2〜3セット、1日2〜3回。

② 足のアーチと着地
扁平足や、着地で足が内側に倒れ込む癖があると、すねの内側にかかる力が増えます。足指の筋力トレーニング(タオルギャザーなど)や、インソールの検討が有効なことがあります。

③ 体幹・股関節
着地の衝撃を、体幹と股関節で受け止められるかどうかで、脚にかかる負担が変わります。痛むのはすねでも、原因が体幹にあることは珍しくありません。

④ 練習量の戻し方
休んだあと、いきなり元の量に戻さないこと。週ごとに1割程度ずつ増やすという考え方が、一般に用いられています。

⑤ 靴と路面
すり減った靴を使い続けない。硬い路面での練習を減らす。

当院には理学療法士が常勤しており、柔軟性・アライメント・体幹機能の評価と、これらの指導を保険診療の範囲で受けていただけます。

練習に戻るまでの目安

「いつから走れますか」は、必ずいただくご質問です。日数で一律に決めるのではなく、次の段階を順にクリアしていくという考え方でご案内しています。

段階1:日常生活で痛みがない
歩く、階段の上り下り、立ち仕事で痛みが出ない状態。ここに至るまでは走りません。

段階2:押しても痛みが軽い
すねの内側を押したときの痛みが、明らかに軽くなっている。

段階3:ジョギングを短時間から
まずは平坦で柔らかい路面を、短い距離・ゆっくりから。走ったあとと翌日に痛みが出ないことを確認します。出た場合は段階2に戻ります。

段階4:距離と強度を段階的に上げる
週ごとに1割程度ずつが目安です。距離と強度を同時に上げないことがポイントです。

段階5:競技特有の動作へ
ダッシュ、方向転換、ジャンプなど。ここでも翌日の状態を確認しながら進めます。

判断の共通ルールは「翌日に痛みが残らないこと」です。翌日に残る場合は、その日の量が多すぎたということですので、一段階戻してください。

大会や試合が近いなど事情がある場合は、遠慮なくお話しください。状況をふまえたうえで、何ができて何を避けるべきかを一緒に整理します。

保護者・指導者の方へ

シンスプリントは、選手本人が「これくらいなら大丈夫」と我慢しやすい障害です。とくに、レギュラー争いや大会が近い時期には、痛みを言い出しにくくなります。

次のような変化に気づかれたら、声をかけてみてください。

  • 走り方が変わった、着地をかばっている
  • 練習後にすねを気にしている、さすっている
  • アップに時間をかけるようになった
  • 練習量が落ちた、休みがちになった

「痛いなら言いなさい」より、「最近どこか気になるところはある?」と聞いたほうが、本人は話しやすいことがあります。

また、シンスプリントは環境要因(路面・シューズ・練習量)の影響が大きい障害です。本人の努力不足でも、根性の問題でもありません。環境を整えることで防げる部分が大きいとお考えいただければと思います。

よくあるご質問

Q. 痛いけれど走れます。休まないとだめですか?
痛みが軽い段階であれば、量と内容を調整しながら続けられることもあります。ただし、痛みが強くなっている、始めから痛むようになったという場合は、一度状態を確かめてください。疲労骨折が隠れていることがあります。

Q. どのくらいで治りますか?
程度によって数週間から数か月と幅があります。負担の見直しをどれだけできるかで、経過が変わります。

Q. 湿布やアイシングだけで治りますか?
痛みを和らげる助けにはなりますが、原因となっている負担が続いていると繰り返します。柔軟性や体の使い方の見直しとあわせて行うのが基本です。

Q. インソールは必要ですか?
足のアーチや着地の癖によっては、有効なことがあります。全員に必要なわけではありませんので、診察で評価したうえでご相談します。

Q. 何度も繰り返します。
繰り返す場合は、柔軟性・アライメント・体幹機能・練習量のどこかに原因が残っています。痛みを取るだけでなく、なぜ起こるのかを一緒に探すことが必要です。

Q. 何科を受診すればよいですか?
すねの痛みは整形外科でご相談いただけます。当院では整形外科専門医が診察・検査を行い、疲労骨折との区別を含めて確認します。

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