脂漏性角化症(老人性いぼ)
脂漏性角化症は、加齢に伴ってできる、良性のできものです。「老人性いぼ」「年寄りいぼ」とも呼ばれます。
まず、この病名について、先にお伝えしておきたいことがあります。
「老人性」という名前について
診察で「老人性いぼです」とお伝えすると、表情が変わる方がいらっしゃいます。
40代の方が「老人性」と言われれば、そう感じられるのは当然です。
この名前は、実態を正しく表していません。
脂漏性角化症は、早い方では20代後半から30代で現れ始めます。 40代、50代で増えていくのが一般的な経過で、「老人」の病気ではありません。
医学上の名称としてこう呼ばれているだけで、年齢を評価する言葉ではありません。 検索してこのページにたどり着かれた方が、名前で気を落とされることのないよう、最初に申し上げておきます。
医学的には「脂漏性角化症」が正式名称です。 当院では、できる限りこちらの名称でお伝えするようにしています。
どんなものか
- 色:淡い茶色から、こげ茶色、黒に近いものまで
- 表面:ザラザラ、ごつごつしている。触ると引っかかる感じ
- 見え方:皮膚に貼りついたように盛り上がって見える
- 境界:はっきりしている
- 大きさ:数ミリから、2cm程度になるものまで
- 数:ひとつではなく、複数できることがほとんど
できやすい場所
顔(こめかみ、頬)、頭、首、胸、背中。 日光がよく当たる場所に多く出ます。
手のひらと足の裏には、できません。
しみとの違い
「しみだと思っていた」というのは、非常によくあるお話です。
この2つは違うものであり、対応も変わります。
| しみ(老人性色素斑) | 脂漏性角化症 | |
|---|---|---|
| 触った感じ | 平ら。触っても分からない | 盛り上がってザラザラ |
| 色 | 薄茶〜茶 | 茶〜黒 |
| 境界 | ややぼんやり | はっきりしている |
| 見た目 | 皮膚の中にある | 皮膚に貼りついている |
判断の決め手は「触ってみること」です。
鏡を見るだけでは分かりません。指で軽くなでてみて、引っかかる感じがあれば脂漏性角化症の可能性が高くなります。
なぜ区別が大切なのか
治療の方法が違うからです。
しみに使う内服薬や、しみ向けの機器では、脂漏性角化症は取れません。「しみの治療をしているのに、これだけ残る」という場合、それは脂漏性角化症かもしれません。
また、しみと脂漏性角化症が混在している方も多くいらっしゃいます。この場合、それぞれに合った対応が必要になります。
増える一方で、自然にはなくなりません
はっきりお伝えしておきます。
脂漏性角化症は、放っておいて消えることはありません。 そして、年齢とともに数は増えていきます。
- 新しいものが次々にできる
- 既にあるものは、少しずつ大きく、厚くなる
「そのうち消えるだろう」ということはなく、何もしなければ、5年後には今より増えています。
ただし、急ぐ必要はありません
良性のできものであり、がんになるものではありません。 放置しても健康上の問題は起こりません。
取るかどうかは、完全にご本人の判断です。「気にならないから、そのまま」も、まったく問題のない選択です。
こんなときはご相談ください
良性のものですが、次の場合は確認する価値があります。
- 急に大きくなってきた
- 色にムラが出てきた
- 出血する、じくじくする
- かゆみや痛みがある
- 形が左右非対称、輪郭がギザギザ
- 短期間に、急にたくさん出てきた
- 足の裏、手のひら、爪に黒いものができた(これは脂漏性角化症ではありません)
脂漏性角化症とよく似た見た目でも、確認が必要なものがあります。 迷われる場合は、診察でご確認ください。
また、衣類やアクセサリーに引っかかって出血する、ひげそりで切ってしまうといった場合は、生活上の不都合として対応を検討します。
診断と治療
問診では、いつからあるか、大きさや色の変化、症状(かゆみ・痛み・出血)、日焼けの多い生活をしてきたか、ご家族の状況をうかがいます。
診察では、色、表面の性状、境界、盛り上がり方を確認します。必要に応じて、ダーモスコピーという機器で拡大して観察することがあります。
多くの場合、見た目で診断がつきます。 判断が難しい場合には、組織を採って調べる検査を行うことがあります。
治療の選択肢
① そのままにする
良性ですので、何もしないという選択が第一にあります。
② 取る
見た目を理由に取る場合は、自費(美容)の治療になります。方法や費用、経過についてはほくろ・いぼ除去のページでご説明しています。
③ 保険診療の対象になる場合
出血を繰り返す、衣類に引っかかって痛むなど、日常生活に支障がある場合には、保険診療の対象となることがあります。また、診断のための診察は保険診療で行います。
判断に迷われる場合は、まず診察にお越しください。
これ以上増やさないために
新しくできるのを完全に防ぐことはできませんが、増える速さには、紫外線が関わっていると考えられています。
- 日焼け止めを習慣にする
- 帽子、日傘
- 屋外での活動が長い日は、塗り直す
これまでに浴びた紫外線は取り消せません。 ただし、これから浴びる量は減らせます。
地味な対策ですが、しみ、しわ、たるみを含めて、5年後10年後の肌の状態に差が出ます。
「もう手遅れでは」と思われるかもしれませんが、始めた時点から先の分は変わります。 何歳からでも意味があります。
見え方は、ひとつではありません
「脂漏性角化症」と診断されても、見た目は方によってかなり違います。同じ病名とは思えないほどです。
① 平らで、うっすら茶色いもの
できはじめの段階。しみと見分けがつきにくいのがこのタイプです。触るとわずかにザラつきます。
② 明らかに盛り上がって、表面がごつごつしたもの
典型的な見た目。貼りついたように見えます。
③ 黒く、つやのあるもの
色が濃く、ほくろと間違われやすいタイプです。
④ 表面に細かい穴が見えるもの
拡大して見ると、小さなくぼみが点々とあります。診断の手がかりになる特徴です。
⑤ 顔にたくさん、小さく散らばるもの
米粒より小さいものが、こめかみや頬に多数。「肌が汚れて見える」と感じられる原因になります。
⑥ 頭皮にできるもの
髪に隠れて気づかれにくく、シャンプーやくしで引っかけて出血して初めて分かることがあります。
この多様さが、自己判断を難しくします。 「しみだと思っていた」「ほくろだと思っていた」というのは、無理もないことです。
増えてきた方へ
「顔にどんどん増えていく」「気づいたら10個以上ある」——このような段階で受診される方が多くいらっしゃいます。
ここでお伝えしたいのは、2つのことです。
① 増えるのは、あなたの手入れが足りないからではありません
化粧品を変えても、丁寧に洗っても、増えるものは増えます。加齢と、これまでに浴びた紫外線の蓄積によるもので、日々のケアの結果ではありません。
「もっと早くから美容に気をつけていれば」と自分を責める必要はありません。
② 全部を一度に、と考えなくて構いません
「10個も20個もあるから、相談しても大変なことになる」と思われるかもしれませんが、気になるものから順に、というやり方ができます。
顔の目立つところだけ、人と話すときに視線が向かうところだけ——優先順位をつけて構いません。
そして、取らないという選択も等しく妥当です。 相談だけして帰っていただいても、まったく問題ありません。
よくあるご質問
Q. 何歳くらいから出ますか?
早い方では20代後半から30代で現れ始めます。40代以降で増えていく方が多くいらっしゃいます。「老人性」という名前ですが、実態はもっと早い時期から始まります。
Q. うつりますか?
うつりません。 ウイルス性のいぼとは別のもので、人に伝染することはありません。
Q. 自分で取れますか?
避けてください。 出血、感染、傷跡が残る原因になります。また、もし別のものだった場合、診断が難しくなります。
Q. がんになりますか?
なりません。 良性のできものです。ただし、見た目が似ている別のものがあるため、変化があるときは確認をおすすめします。
Q. 取ったらもう出ませんか?
取った場所には出にくくなりますが、他の場所に新しくできることは防げません。 体質と加齢によるものだからです。
Q. 一度に何個も取れますか?
方法や部位によって、一度に対応できる数は変わります。診察でご相談ください。
Q. 何科を受診すればよいですか?
皮膚科でご相談いただけます。取るかどうかを決める前に、まず何であるかを確かめるのが確実です。