60代からの骨粗鬆症予防

60代は、とくに女性で骨密度が低下しやすく、骨がもろくなりやすい年代です。骨粗鬆症は痛みなどの自覚症状が出にくく、転倒などで骨折して初めて気づくことが少なくありません。「骨折してからでは遅い」――まだ何も起きていない今こそ、ご自身の骨の状態を「数値」で知っておくことが、これからの元気な生活を守る第一歩になります。このページでは、60代のうちに骨の健康チェック(骨密度検査)をおすすめする理由と、検査の受け方・結果の見方・今からできる骨づくりをご紹介します。

60代は「骨の曲がり角」――この10年で骨は大きく変わります

骨の量(骨密度)は、20〜40代ごろにピークを迎えたあと、年齢とともに少しずつ減っていきます。なかでも女性は、閉経を境に女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減ることで、骨を壊す働きにブレーキがかかりにくくなり、閉経後の約10年間は骨密度が速いペースで低下しやすい時期にあたります。日本人女性の平均的な閉経年齢は50歳ごろですから、ちょうど60代は「閉経後10年前後」――骨の状態に個人差が大きく開いてくる、いわば骨の曲がり角の年代です。

同じ60代でも、骨密度が十分に保たれている方もいれば、すでに骨粗鬆症の領域まで低下している方もいます。この差は、見た目や体調からはほとんどわかりません。だからこそ、「自分の骨は今どの位置にいるのか」を一度測って確かめておくことに、大きな意味があります。

なお、骨密度の低下は女性だけの問題ではありません。男性も加齢とともに骨密度は下がっていきますので、気になる方は男女を問わずご相談ください。

自覚症状がないからこそ、「知る」ことから始めましょう

骨粗鬆症のいちばんの特徴は、自覚症状がほとんどないことです。骨の中が少しずつもろくなっていても、痛みも違和感もないまま進むため、「痛くないから大丈夫」と思っているうちに、わずかな衝撃で骨折しやすい状態になっていることがあります。

実際、「気づかないうちに背骨が骨折していた」という形で見つかることがあり、これは「いつのまにか骨折」と呼ばれます。はっきりした転倒やケガがなくても、体の重みや日常の動作で背骨が少しずつつぶれるように骨折していくもので、「身長が縮んできた」「背中が丸くなってきた」という変化がそのサインであることがあります。

裏を返せば、骨粗鬆症は「症状で気づく」ことが難しいぶん、検査で早く見つけられれば対策が立てられる病気だということです。骨折の連鎖(ドミノ骨折)を含めた病気そのものの詳しい解説は、骨粗鬆症(疾患の解説)をご覧ください。

こんな方は、一度骨密度検査を

次の項目にあてはまる方は、症状がなくても一度、骨密度検査を受けておくことをおすすめします。

  • 閉経を迎えた女性の方(60代の女性は、まだ測ったことがなければぜひ一度)
  • 健康診断や骨粗鬆症検診で「骨密度が低め」「要精査」と言われたことがある
  • 身長が若い頃より縮んできた、背中が丸くなってきた気がする
  • ご家族(とくに母親)に骨粗鬆症の方や、太ももの付け根を骨折した方がいる
  • 体格が細めの方、若い頃に極端なダイエットをしたことがある方
  • 喫煙の習慣がある、お酒を多く飲む
  • 運動の習慣がない、外出の機会が少ない
  • ステロイドを長期に使用している
  • 軽い転倒やしりもちで骨折したことがある

あてはまる項目が多いほど、骨密度が低下している可能性が高くなります。もちろん、ひとつもあてはまらなくても、60代で一度も測ったことがない方には検査をおすすめしています。

骨密度検査(DEXA法)は、思っているよりかんたんです

「検査」と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、骨密度検査はとても負担の少ない検査です。当院では、骨粗鬆症の診断における標準的な方法であるDEXA法(二重エネルギーX線吸収法)で、骨折の影響が大きい腰椎(背骨)・大腿骨の骨密度を測定しています。

  • 検査台にあおむけに横になるだけで、痛みはありません
  • 注射や食事制限などの前処置も不要です
  • 測定はおよそ5〜10分と短時間で、放射線の量もごくわずかです
  • 結果はその場で医師からご説明します

このほか、必要に応じて血液検査(骨代謝マーカー:骨がつくられる・壊れるバランスを調べる検査)やFRAX(今後10年間の骨折リスクの評価)も組み合わせて、骨の状態を多角的に確認します。検査の内容や受診の流れについて詳しくは、骨粗鬆症外来のページをご覧ください。

検査結果はどう見るの?――「若い頃の骨」との比較(YAM値)

骨密度の検査結果は、YAM値(若年成人平均値)という数値で示されるのが一般的です。これは、骨密度がもっとも高い20〜44歳の平均値を100%として、ご自身の骨密度が何%にあたるかを表したものです。

  • 80%以上:おおむね正常の範囲とされます
  • 70%を超え80%未満:骨量が減少している状態(骨量減少)とされ、生活習慣の見直しなどの対策を始めたい段階です
  • 70%以下:骨粗鬆症と診断される目安とされ、治療の検討が必要になります

※上記は原発性骨粗鬆症の診断基準(日本骨代謝学会・日本骨粗鬆症学会)にもとづく目安です。 ※実際の診断は、YAM値だけでなく、骨折の経験の有無やその他の検査結果もあわせて総合的に行います。 脆弱性骨折がある場合は、YAM値が80%未満で骨粗鬆症と診断されることもあります。

「同年代と比べてどうか」ではなく「若い頃の骨と比べてどうか」で評価するのは、骨折のしやすさをより正確に反映するためです。ご自身の数値がどの段階にあるのかがわかれば、「食事と運動から始めればよいのか」「治療を検討すべきなのか」を、根拠をもって判断できます。当院では、数値の意味や生活で気をつけたいことまで、その場でわかりやすくご説明します。

今からできる骨づくり――食事・運動・日光

検査の結果にかかわらず、60代からの毎日の習慣は骨の健康を支える土台になります。

食事:骨の材料をしっかりと

骨の材料となるカルシウム(乳製品・小魚・大豆製品・緑黄色野菜など)と、カルシウムの吸収を助けるビタミンD(魚・きのこ類など)を意識してとりましょう。たんぱく質も骨と筋肉の両方に欠かせません。極端な食事制限は骨にとってマイナスに働きます。

運動:骨に「適度な刺激」を

骨は、重力や運動による適度な負荷がかかることで強さを保とうとする性質があります。ウォーキングなどの重力がかかる運動や、無理のない筋力トレーニングを続けることが、骨密度の維持に役立ちます。

日光:ビタミンDを体内でつくる

日光を浴びると、体内でビタミンDがつくられます。散歩や買い物など、屋外で過ごす時間を意識的につくることもおすすめです。

また、骨を守ることとあわせて「転ばない体づくり」も骨折予防の大切な柱です。転倒予防やフレイル(心身の活力が低下した状態)への対策については、70代以降の健康寿命を守る整形外科ケアで詳しくご紹介しています。

60代からでも間に合いますか?

間に合います。骨密度の低下がわかった場合でも、食事・運動などの生活習慣の見直しや、必要に応じた薬物治療によって、骨密度の維持・改善や骨折リスクの低下が期待できます(効果には個人差があります)。近年は骨粗鬆症の治療の選択肢も広がっており、「もう歳だから」とあきらめる必要はありません。

むしろ60代は、骨折などの大きなトラブルが起こる前に対策を始められる、絶好のタイミングです。70代・80代になっても自分の足で歩き続けるために、今の骨の状態を知ることから始めてみませんか。治療の内容について詳しくは骨粗鬆症(疾患の解説)をご覧ください。

骨密度検査は、どのくらいの間隔で受ければよいですか?

一度の検査で骨の状態がわかっても、骨密度は年齢や生活によって変化していきます。骨密度が保たれていた方も、定期的に測定して変化を確認していくことが、骨折予防につながります。適した間隔は骨の状態やその後の経過によって異なりますので、検査結果をふまえて診察時にご案内します。

よくあるご質問

Q. 症状が何もなくても、検査だけ目的に受診してよいのですか?
A. はい、もちろんです。骨粗鬆症は自覚症状がないまま進む病気ですので、「症状はないけれど骨密度を測っておきたい」という受診を歓迎しています。診察で生活習慣やご家族の骨折歴などをお伺いしたうえで、検査をご案内します。

Q. 母が骨粗鬆症でした。私も検査を受けたほうがよいですか?
A. 受けておくことをおすすめします。ご家族に骨粗鬆症の方や太ももの付け根を骨折した方がいる場合、骨粗鬆症のリスクが高いと考えられています。体格や生活習慣もあわせて、一度骨の状態を確認しておくと安心です。

Q. 結果が悪かったら、すぐに薬を始めることになりますか?
A. 必ずしもそうではありません。骨密度の数値や骨折リスクの評価をふまえて、食事・運動など生活習慣の見直しから始める場合もあれば、薬物治療をご提案する場合もあります。検査結果をもとに、どこから始めるのがよいかを一緒に確認していきます。

Q. 検査や治療に保険はききますか?
A. 骨密度の検査や骨粗鬆症の治療には、保険診療で行えるものがあります。対象になる条件や進め方は骨粗鬆症外来でご説明しています。

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