膝に水がたまる・腫れる
「膝がパンパンに腫れて、正座ができない」「一度水を抜いたら、また同じようにたまってしまった」——膝に水がたまる症状は、多くの方が経験されるものです。
そして必ずといっていいほど聞かれるのが、「水を抜くとクセになるのでは?」というご質問です。結論から申し上げると、水を抜いたからクセになるのではありません。 このページでは、そう言われるようになった理由と、膝に水がたまる背景、受診の目安についてご説明します。
膝の「水」とは何ですか
膝の関節は、関節包という袋に包まれていて、その内側は滑膜(かつまく)という膜で覆われています。滑膜は、関節がなめらかに動くための潤滑油にあたる関節液を、少量ずつ作っています。健康な膝にも、もともと数ミリリットルの関節液があります。
ところが、関節の中で炎症が起きると、滑膜が刺激されて関節液を過剰に作るようになります。これが「水がたまった」と言われる状態です。量が増えると膝が張って腫れ、曲げ伸ばしがしにくくなり、正座やしゃがみ込みが難しくなります。
つまり、水そのものが悪さをしているというより、水がたまっていること自体が「関節の中で炎症が起きています」というサインだとお考えください。
「水を抜くとクセになる」と言われる理由
この言葉が広まったのには、理由があります。
水を抜いた直後は、膝の張りがとれて楽になります。ところが、水がたまる原因になっている炎症がそのままであれば、しばらくするとまた関節液が増えてきます。これを何度か繰り返すうちに、「抜いたからまたたまるようになった」と感じられるようになった——というのが実際のところです。
順序が逆になっているわけです。抜いたからたまるのではなく、たまる原因が続いているからまたたまる、ということです。
ですから大切なのは、水を抜くか抜かないかではなく、なぜ炎症が起きているのかを確かめて、その原因に対応することです。当院では、水がたまっている状態を見て「とりあえず抜く」のではなく、まず原因を確かめることを優先しています。
では、水は抜かないほうがよいのですか
そうとも限りません。次のような場合には、抜くことに意味があります。
- 張りが強く、痛みや曲げにくさが日常生活に支障をきたしている場合:抜くことで症状がやわらぎ、リハビリなどの次の対応を進めやすくなります。
- 関節液の性状を調べる必要がある場合:抜いた液の色や濁り、粘り気を確認することで、原因の手がかりが得られることがあります。感染や結晶によるものが疑われる場合には、検査に出すこともあります。
抜くかどうかは、症状の程度と原因の見立てをふまえて、診察の際にご相談しながら決めていきます。
膝に水がたまる主な原因
膝に水がたまる背景には、いくつかの原因が考えられます。
- 変形性膝関節症:加齢や負担の積み重ねで関節の軟骨がすり減り、炎症が起こるものです。中高年の方で最も多い原因です。詳しくは変形性膝関節症のページをご覧ください。
- 半月板損傷:膝のクッションである半月板が傷つくと、関節の中で炎症が起こります。スポーツによる急な受傷のほか、中高年では明らかなきっかけなく傷むこともあります。詳しくは半月板損傷のページをご覧ください。
- 靭帯の損傷:スポーツや転倒で靭帯を傷めると、関節内に出血が起こり、急速に腫れることがあります。
- 関節リウマチなどの炎症性の病気:左右両方の膝が腫れる、他の関節も腫れている、朝のこわばりを伴うといった場合には、こうした病気が背景にあることもあります。
- 痛風・偽痛風:関節の中に結晶がたまることで、急に強い痛みと腫れ、熱っぽさが出ることがあります。
- 感染(化膿性関節炎):頻度は高くありませんが、関節の中に細菌が入って起こるもので、緊急の対応が必要です。
このように原因はさまざまで、見た目の腫れだけでは区別がつきません。 そのため、診察と画像検査で確かめることが大切になります。
こんなときは早めに受診してください
次のような場合は、様子を見ずに早めのご相談をおすすめします。
- 急に強く腫れて、膝が熱をもっている・熱が出ている(感染や結晶による炎症の可能性があります)
- ケガをした直後に、短時間で膝がパンパンに腫れた(関節内の出血が疑われます)
- 膝が引っかかって動かせない、途中で止まってしまう
- 腫れと痛みで歩くのがつらい、階段の上り下りができない
- 何度も繰り返し水がたまる
- 両膝が腫れている、他の関節も腫れている、朝のこわばりがある
とくに、熱を伴う急な腫れは急ぐ必要がある場合があります。迷われたときは、電話でご相談ください。
受診までの間、どう過ごせばよいですか
- 無理に曲げ伸ばししない:腫れているときは、痛みの出る動きを繰り返さないようにしてください。
- 長時間の立ち仕事・階段の昇り降りを控える:膝への負担が炎症を長引かせることがあります。
- 冷やす:熱っぽさや強い張りがあるときは、保冷剤をタオルで包んで15分程度冷やすと楽になることがあります。
- 自分で水を抜こうとしない:当然のことですが、市販の器具などで対応しようとせず、医療機関にご相談ください。
- サポーターは締めすぎない:腫れているときに強く圧迫すると、かえって痛みが増すことがあります。
当院での診察の流れ
まず、いつから腫れているか、きっかけの有無、痛みの出る動作、これまでの経過をうかがいます。そのうえで膝の状態を診察し、腫れの程度、熱感、動かせる範囲、押して痛む場所を確認します。
必要に応じて、レントゲンで関節の隙間や骨の変化を確認します。当院では超音波(エコー)検査も院内で行えますので、関節液のたまり具合や滑膜の状態をその場で確かめることができます。半月板や靭帯の状態を詳しく調べる必要がある場合は、MRI検査についてご案内します。
原因が見えてきたら、そのうえで対応を決めていきます。炎症を抑える内服や外用、膝まわりの筋力を保つためのリハビリテーション、日常生活での負担のかけ方の見直しなど、状態に応じてご提案します。水を抜くかどうかも、この流れの中で判断します。
よくあるご質問
Q. 水を抜くと痛いですか?
細い針を用いて行いますので、注射と同じ程度の痛みとお考えください。張りが強い場合は、抜いたあとに楽になったと感じられる方が多くいらっしゃいます。
Q. 抜いた水の色で何かわかりますか?
はい、手がかりになります。透明で薄い黄色であれば変形性膝関節症などでよくみられる性状です。血液が混じっていれば関節内の出血、濁っていれば感染や結晶による炎症が疑われます。必要に応じて検査に出すこともあります。
Q. 一度水を抜けば、もうたまりませんか?
原因となっている炎症が落ち着けば、たまらなくなっていきます。逆に、原因への対応をしないまま抜くだけを繰り返しても、根本的な解決にはなりません。だからこそ、原因を確かめることが大切です。
Q. 放っておけば自然に引きますか?
軽い炎症であれば、負担を減らすうちに落ち着くこともあります。ただし、繰り返す場合や強い腫れがある場合は、背景に対応が必要な病気が隠れていることがありますので、一度診察を受けていただくことをおすすめします。
Q. 何科を受診すればよいですか?
膝の腫れは整形外科でご相談いただけます。当院では整形外科専門医が診察・検査を行い、原因を確かめたうえで対応をご提案します。