肘が痛い
「ペットボトルのふたが開けにくい」「フライパンを持つと肘の外側が痛む」「雑巾を絞るときにズキッとする」——肘の痛みは、日常のちょっとした動作で気づかれることが多い症状です。
そして、肘の痛みで最も多い「テニス肘」という病名を聞くと、「テニスはしていないのですが」とおっしゃる方がほとんどです。実際、テニス肘と診断される方の多くはテニスをしていません。 家事や仕事での手首の使い方で起こることのほうが、はるかに多いのです。
このページでは、痛む場所からの見分け方と、受診の目安をご説明します。
痛む場所で原因が分かれます
肘の痛みは、どこが痛むかでおおよその見当がつきます。ご自身で、痛む場所を指一本で押さえてみてください。

肘の「外側」が痛む
肘の外側にある骨の出っぱり(外側上顆)のあたりが痛む場合、上腕骨外側上顆炎(テニス肘)が最も多い原因です。
手首を手の甲側に反らす筋肉が、この場所に付着しています。手首を反らす・ものをつかむ・ひねるという動作でこの筋肉が繰り返し引っ張られ、付着部に炎症が起こります。
痛みが出やすい動作
- ペットボトルやビンのふたを開ける
- 雑巾を絞る、タオルを絞る
- フライパンや重い皿を持ち上げる
- キーボードやマウスを長時間使う
- 手のひらを下に向けて物を持ち上げる
テニスの他にも、家事、パソコン作業、介護、美容師や調理師など手首をよく使うお仕事の方に多くみられます。詳しくはテニス肘のページをご覧ください。
肘の「内側」が痛む
肘の内側の出っぱり(内側上顆)のあたりが痛む場合、上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)が考えられます。
手首を手のひら側に曲げる筋肉の付着部で起こる炎症です。ゴルフのスイング、野球の投球のほか、重いものを持つ動作、手首を曲げて力を入れる作業で起こります。テニス肘に比べると頻度は少なめです。詳しくはゴルフ肘のページをご覧ください。
肘の内側が痛み、小指側にしびれもある
肘部管症候群の可能性があります。肘の内側を通る神経が圧迫されるもので、痛みよりも小指と薬指のしびれが主な症状です。肘を曲げた姿勢を続けると強まるのが特徴です。詳しくは肘部管症候群のページをご覧ください。
肘の曲げ伸ばしで引っかかる・完全に伸びない
関節の中に軟骨や骨のかけらができて挟まっている可能性があります(関節内遊離体)。野球など投球動作を繰り返してきた方や、肘に負担のかかる作業を長く続けてこられた方にみられることがあります。
肘全体が腫れて熱をもつ
肘の後ろにある袋(滑液包)に炎症が起こる肘頭滑液包炎や、関節そのものの炎症が考えられます。熱をもって強く腫れている場合は、感染の可能性もあるため早めにご相談ください。
「テニス肘」という名前について
繰り返しになりますが、テニス肘はテニスをしていなくても起こります。
もともとテニス選手に多くみられたことから名づけられた呼び名ですが、実際にこの診断を受ける方の大半は、家事や仕事で手首を使う中で発症しています。「スポーツをしていないから違うはず」と受診を先延ばしにされる方がいらっしゃいますが、手首をよく使う方であれば誰にでも起こりうるとお考えください。
また、この痛みは放っておくと数か月から年単位で続くことがあるのも特徴です。自然に落ち着くこともありますが、その間ずっと日常動作に支障が出ることになります。負担のかけ方を見直すだけでも経過が変わりますので、早めに相談していただく意味は十分にあります。
こんなときは早めに受診してください
- 肘の痛みが2週間以上続いている
- 物を落とすようになった、握力が落ちた
- 小指・薬指にしびれがある
- 肘が完全に伸びない・曲がらない
- 曲げ伸ばしで引っかかる
- 肘が腫れて熱をもっている、発熱がある
- 転倒や打撲のあとから痛みが続いている
- 安静にしていても痛む、夜間に痛む
ご自宅でできること
- 痛む動作を特定して減らす:どの動作で痛むかが分かれば、そこを避ける工夫ができます。ふたを開けるときは手のひらを上に向ける、重いものは両手で持つ、など。
- 持ち方を変える:手のひらを下に向けて持ち上げる動作は、外側に負担がかかります。手のひらを上に向けると負担が減ります。
- 手首から動かさない:肘だけでなく、手首の使い方が原因になっています。肘を体につけたまま、体全体で動く意識を持つと負担が減ります。
- 温めるか冷やすか:痛みが出た直後で熱っぽさがあるときは冷やし、慢性的な痛みには温めるのが一般的な目安です。
- ストレッチ:肘を伸ばし、手首を手のひら側にゆっくり曲げて前腕の外側を伸ばす。15〜20秒、痛みの出ない範囲で。
- サポーター(エルボーバンド):前腕に巻いて筋肉の引っ張られる力を分散させるものです。使う場面を絞って用いると助けになることがあります。
自己流のマッサージで強く揉むと、かえって炎症が長引くことがあります。痛みが続く場合はご相談ください。
職業・趣味から見た起こりやすさ
肘の痛みは、手首をどう使うかによって起こりやすさが変わります。次のような方は、負担がかかりやすい傾向があります。
- 調理・飲食のお仕事:フライパンを振る、鍋を持ち上げる、包丁を使う動作の繰り返し。
- 美容師・理容師:ハサミやドライヤーを持ち続ける姿勢は、手首を反らした状態が長く続きます。
- 介護・看護のお仕事:体位変換や移乗の介助で、手首に強い力がかかります。
- パソコン作業の多い方:マウス操作は手首を反らした姿勢が続くため、外側に負担がかかります。
- 育児中の方:抱っこ、抱き上げ、ベビーカーの操作。
- ラケットスポーツ・ゴルフ:グリップの太さや打ち方が合っていないと、負担が集中します。
- 園芸・DIY:剪定、ドライバー操作、草むしりなど、握ってひねる動作。
いずれも「一度に強い力がかかった」というより、日々の積み重ねで起こるのが特徴です。そのため、思い当たるきっかけがないという方も少なくありません。
診察の際には、お仕事の内容やよくされる動作をお伝えいただけると、負担を減らす具体的な工夫をご提案しやすくなります。
当院での診察の流れ
いつから、どの動作で、どのあたりが痛むかをうかがい、肘の状態を診察します。押して痛む場所を確認し、手首を反らす・曲げる動作に抵抗を加えて痛みが誘発されるかといった徒手検査を行います。しびれを伴う場合は、神経の状態もあわせて確かめます。
レントゲンでは、骨の変化、石灰の沈着、関節内の遊離体の有無を確認します。当院では超音波(エコー)検査を院内で行えますので、腱の付着部の状態や炎症の程度を、その場で観察することができます。
対応としては、まず負担のかけ方の見直しと、装具(エルボーバンド)、炎症を抑える外用・内服から始めます。あわせて、前腕の筋肉のストレッチや、肩甲骨・体幹を含めた動作の見直しをリハビリテーションで行います。当院には理学療法士が常勤しており、保険診療の範囲で受けていただけます。
こうした対応で改善が乏しい場合には、他の選択肢についてもご説明します。詳しくは診察の際にご相談ください。
よくあるご質問
Q. テニスをしていないのにテニス肘と言われました。間違いではないですか?
間違いではありません。もともとテニス選手に多いことから名づけられた呼び名で、実際には家事や仕事で手首を使う方に多くみられます。診断名として広く使われています。
Q. どのくらいで治りますか?
数週間で落ち着く方もいれば、数か月かかる方もいます。負担のかかる動作を続けている間は治りにくいため、日常の使い方を見直すことが回復の近道になります。
Q. 使わないほうがよいですか?
まったく使わないでいることは現実的ではありませんし、必要以上に固めると筋力や動きが落ちます。「痛みが強く出る動作を減らす」という考え方で進めましょう。
Q. サポーターは必要ですか?
痛みが出る作業をするときに巻くと、負担が分散されて楽になることがあります。常時つける必要はありません。
Q. 何科を受診すればよいですか?
肘の痛みは整形外科でご相談いただけます。当院では整形外科専門医が診察・検査を行い、外側・内側・神経のどれが原因かを確かめたうえで対応をご提案します。