転びやすい・歩きにくい

「家のなかでつまずくようになった」「横断歩道を渡りきれないことがある」「親の歩き方が変わってきた気がする」——こうした変化に気づいたとき、年齢のせいだと考えて様子を見てしまうことがあります。

ただ、転びやすさの裏には、対応できる原因が隠れていることが少なくありません。 痛みで動きをかばっている、筋力が落ちている、神経の症状が出ている——原因によって、やるべきことは変わります。

そして転倒は、それ自体が大きな出来事になりえます。 骨折をきっかけに動けなくなり、そのまま生活が変わってしまうことがあるためです。

まず確認:早めに受診してください

次のような場合は、様子を見ずにご相談ください。

  • この1年で2回以上転んだ
  • 転んで、手をついた・腰を打った後から痛みが続いている(背骨や手首の骨折が隠れていることがあります)
  • 急に歩きにくくなった(数日〜数週間での変化)
  • 脚に力が入らない、足首やつま先が上がらない(つまずく・スリッパが脱げる)
  • 手のしびれや、ボタンがかけにくいといった手の使いにくさをともなう
  • ふらつきやめまいをともなう

とくに急な変化と手の症状をともなう場合は、背骨や神経が関わっていることがあります。

転びやすくなる理由は、ひとつではありません

痛みで動きをかばっている

膝や股関節、腰が痛むと、無意識にかばった歩き方になります。歩幅が狭くなり、足が上がりにくくなって、わずかな段差でつまずきます。痛みに対応すると歩き方が戻ることがあります。

筋力とバランスが落ちている

動く量が減ると、体を支える筋力が落ちます。すると疲れやすくなってさらに動かなくなり、筋力がまた落ちる——この悪循環が、転びやすさの背景にあることは少なくありません。

神経の症状が出ている

腰の神経が圧迫されると、脚のしびれや力の入りにくさが出ます。首の神経の場合は、手の使いにくさをともなうことがあります。

骨がもろくなっている

骨粗鬆症そのものは転びやすさの原因ではありませんが、転んだときの結果が重くなります。 背骨の骨折で姿勢が変わり、それがさらにバランスを悪くすることもあります。

そのほか

視力の低下、飲んでいるお薬の影響、内科的な病気が関わることもあります。通院中の病気とお薬は、受診の際に必ずお知らせください。

ご家族が気づく変化

ご本人は「まだ大丈夫」と思っていることが多く、周囲のほうが先に気づくことがあります。

  • 歩く速度が落ちた(一緒に歩くと待つことが増えた)
  • すり足になった、歩幅が狭くなった
  • 手すりを使うようになった
  • 出かけるのを避けるようになった
  • 家のなかで物につかまって移動している

「転んでいないから大丈夫」とは限りません。 転ばないように行動を減らしている場合、動く量が落ちてさらに衰えが進みます。

転んだあと、痛みが引かないとき

転んだあとに痛みが続く場合、骨折が隠れていることがあります。 とくに次の3か所は、高齢の方で骨折が起こりやすい部位です。

  • 背骨(圧迫骨折):はっきりした転倒がなくても、しりもちや、重い物を持った動作で起こることがあります。寝返りや起き上がりのときに強く痛むのが特徴です。
  • 手首:転んで手をついたときに起こります。腫れと変形をともなうことがあります。
  • 太ももの付け根:立ち上がれない、歩けないほどの痛みが出ます。この部位は早期の対応が必要です。

背骨の骨折は、レントゲンだけでは分かりにくいことがあります。 痛みが続く場合は、時間をおいて撮り直したり、MRIで確認したりすることがあります。「レントゲンで異常なしと言われたが痛みが引かない」という場合も、あらためてご相談ください。

一度骨折を起こすと、次の骨折が起こりやすくなることが知られています。痛みへの対応とあわせて、骨の状態を確かめておくことをおすすめします。

当院での評価

  1. 問診:いつからどんな場面で転ぶか、転んだ回数、痛みの有無、通院中の病気とお薬をうかがいます。
  2. 診察:関節の動く範囲、筋力、感覚、歩き方、バランスを確認します。
  3. 画像評価:痛みのある部位についてレントゲンで確認します。神経の症状があれば、MRIによる評価をご提案します。
  4. 骨の評価:転倒による骨折のリスクを考えるうえで、骨密度の測定を行うことがあります。
  5. 方針のご提案:痛みへの治療と、動けるようにする取り組みを組み合わせます。

リハビリテーションでは、理学療法士がバランスと歩き方を確認し、その方の状態に合わせた運動をご提案します。

→ リハビリテーション科/骨粗鬆症外来

受診までの間、気をつけていただきたいこと

  • 家のなかの段差と滑りやすい場所を見直す。 転倒は屋外より家のなかで多く起きます。
  • 急に立ち上がらない。 立ちくらみが転倒のきっかけになることがあります。
  • スリッパやサンダルより、かかとのある履物を。 脱げやすい履物はつまずきの原因になります。
  • 暗い場所に足元灯を。 夜間のトイレへの移動は転倒が起こりやすい場面です。
  • 動く量は減らさない。 転倒が怖くて動かないでいると、かえって転びやすくなります。

よくあるご質問

Q. 年齢のせいではないのですか?
加齢の影響はありますが、それだけとは限りません。 痛み・筋力低下・神経の症状など、対応できる原因が隠れていることがあります。まずは何が起きているかを確かめることをおすすめします。

Q. 親が受診を嫌がります。
ご本人が「まだ大丈夫」と考えていることは多くあります。痛みがある場合はそこを入口に、なければ「骨の検査を受けてみませんか」とお誘いいただくと、受け入れられやすいことがあります。

Q. 転ばないように、動かないほうが安全ではないですか?
動かないでいると筋力とバランスがさらに落ち、かえって転びやすくなります。 安全に動ける範囲を確認したうえで、動く量を保つことが大切です。

Q. 何科を受診すればよいですか?
歩きにくさ・転倒は整形外科で差し支えありません。診察のうえで、内科的な原因が考えられる場合は適切な医療機関をご案内します。

Q. 「ロコモ」と関係がありますか?
関係があります。運動器が衰えて移動しにくくなった状態を「ロコモティブシンドローム」と呼びます。くわしくはロコモティブシンドロームをご覧ください。

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