足関節捻挫・慢性足関節不安定症

足首の捻挫は、外側のくるぶしの下にある靭帯が傷むことがほとんどです。多くは時間とともに落ち着きますが、靭帯がゆるんだまま治ってしまうと、足首が不安定な状態が残ります。

この状態を慢性足関節不安定症といいます。「またひねった」「段差で足首が抜けるような感じがする」「デコボコした道が怖い」——こうした訴えの背景にあることがあります。

足首の捻挫で何が起きているか

足首を内側に返す動きで、外側の靭帯(前距腓靭帯・踵腓靭帯など)が引き伸ばされたり切れたりします。損傷の程度は、おおまかに次のように分けられます。

  • 軽度:靭帯が引き伸ばされた状態。腫れは軽く、体重をかけて歩ける
  • 中等度:靭帯が部分的に切れた状態。腫れと内出血がはっきりし、歩くと痛む
  • 重度:靭帯が完全に切れた状態。強い腫れと不安定感をともなう

程度によって、固定の期間もリハビリの進め方も変わります。見た目の腫れだけでは判断できないため、押して痛む場所や靭帯のゆるみを診察で確認します。

なぜ繰り返すようになるのか

捻挫を繰り返す背景には、次の2つが重なっていることが多くあります。

① 靭帯がゆるんだまま治った(構造の問題)

切れた靭帯が伸びた長さでくっつくと、足首を支える力が落ちます。関節としてのぐらつきが残る状態です。

② バランス感覚が戻っていない(機能の問題)

足首には、関節の傾きを感じ取ってとっさに筋肉を働かせる仕組みがあります。捻挫でこの感覚が鈍ると、足首が傾き始めたときの反応が遅れ、またひねってしまいます。

見落とされやすいのは②です。 痛みが引いて日常に戻れても、この感覚が戻っていないと再受傷が続きます。リハビリで取り戻せる部分でもあります。

放っておくとどうなりますか

繰り返すうちに、足首の内部に負担が積み重なります。

  • 軟骨が傷む(距骨という骨の軟骨に負担がかかります)
  • 骨のとげ(骨棘)ができる
  • 長い年月のあいだに、足首の変形性関節症につながることがあります

「捻挫くらい」と考えて繰り返すうちに、関節そのものが傷んでいくことがあります。繰り返している段階で対応することに意味があります。

当院での診察・評価

  1. 問診:これまでの捻挫の回数、いつ・どんな場面でひねるか、不安定感の程度をうかがいます。
  2. 診察:靭帯のゆるみ(前方への引き出し・内反ストレス)、押して痛む場所、足首の動く範囲を確認します。
  3. レントゲン:骨折の有無、骨のとげ、関節のすき間を確認します。
  4. 必要に応じた追加評価:靭帯や軟骨の状態をくわしく見る必要がある場合、MRIによる評価をご提案します。
  5. 歩き方・姿勢の評価:理学療法士が、足のつき方や体重のかけ方を確認します。

治療の考え方

保存療法が基本です

慢性的な不安定症でも、まずは保存療法から進めるのが基本です。

  • リハビリテーション(運動療法):足首まわりの筋力と、バランス感覚を戻していきます。この治療の中心はここです。
  • 装具・テーピング:不安定感が強い時期や、スポーツの場面で足首を補助します。
  • 靴の見直し:かかとが安定する靴かどうかは、日常での再受傷に関わります。
  • 痛みへの対応:炎症がある時期は、内服・外用で痛みを抑えながらリハビリを進めます。

リハビリで行うこと

理学療法士が、状態に合わせて次のような組み立てをご提案します。

  • 足首の動く範囲を戻す
  • 足首を外側に返す筋肉(腓骨筋)を鍛える
  • 片脚立ち・不安定な面での訓練でバランス感覚を戻す
  • 走る・切り返すなど、競技や生活の動作につなげる

「痛くないから終わり」ではなく、「ぐらつかなくなったか」で判断します。

保存療法で改善が乏しいとき

十分なリハビリを続けても不安定感が残り、日常やスポーツに支障がある場合には、靭帯を修復・再建する手術が検討されることがあります。当院で手術が望ましいと判断した場合は、無理におすすめすることはせず、連携する専門医療機関へご紹介します。

日常で気をつけていただきたいこと

治療と並行して、日常のなかで足首への負担を減らすことができます。

  • 靴を見直す。 かかとが硬くしっかりしていて、靴のなかで足が動かないものを選んでください。ひもや面ファスナーで甲を固定できるものが向いています。
  • 靴底のすり減りを確認する。 外側だけがすり減っていると、立っているだけで足首が傾いた状態になります。すり減った靴を履き続けることは、再受傷の条件を毎日つくることになります。
  • 疲れているときほど注意する。 筋肉の反応が鈍くなる夕方や、長時間の外出のあとは、とっさの支えがききにくくなります。
  • サンダル・スリッパでの外出を減らす。 踏ん張りがきかず、段差でひねりやすくなります。
  • 不安定な場所を避けすぎない。 完全に避けると、バランス感覚を戻す機会が減ります。安全な範囲で、少しずつ慣らしていくことが大切です。

片脚立ちで確かめてみてください

ご自身の状態を知る目安として、片脚立ちが分かりやすい方法です。

痛めた側と、痛めていない側で、立っていられる時間や安定感に差がないかを比べてみてください。目を閉じるとさらに差が出ることがあります。

左右で明らかな差がある場合、バランス感覚がまだ戻っていない可能性があります。 痛みが引いていても、この差が残っているうちは再受傷が起こりやすい状態です。

ただし、無理はなさらないでください。ふらつく場合は、壁や手すりに手が届く場所でお試しください。

よくあるご質問

Q. 昔の捻挫が原因ということはありますか?
あります。学生時代の捻挫を治しきらないまま、大人になってから「よくひねる」「長く歩くと痛い」という形で出てくることがあります。

Q. サポーターはつけたほうがよいですか?
不安定感が強い時期やスポーツの場面では役に立ちます。ただしつけっぱなしにすると、足首まわりの筋肉が働かなくなることがあります。使う場面と期間をご相談ください。

Q. リハビリはどのくらい続けますか?
状態によって変わります。バランス感覚を戻す訓練は、痛みが引いたあとも一定期間続けることが望ましいと考えられています。途中でやめると再受傷しやすくなります。

Q. 手術しないと治りませんか?
多くの方は保存療法で経過をみることができます。手術が検討されるのは、十分なリハビリを行っても不安定感が残り、生活やスポーツに支障がある場合です。

Q. 再生医療の対象になりますか?
靭帯や腱の慢性的な痛みに対して、選択肢として検討できる場合があります。適応は状態によって異なりますので、診察のうえでご説明します。詳しくはスポーツ障害の再生医療をご覧ください。

この治療を受けられる前に(費用・リスク・自由診療について)

このページでご案内している治療のうち、次のものは自由診療(保険適用外)です。ご検討の前にご確認ください。

  • PRP療法:自由診療(保険適用外)です。標準的な費用は、白血球除去型PRP(PRGF-Endoret®)110,000円/回(計3回が標準)、高用量PRP(Angel™ HD-PRP)330,000円/回(いずれも税込)。料金は1部位ごとに発生します(例:両膝にPRGFを3回で660,000円)。別途、MRI評価・血液検査の費用がかかります。主なリスクは注射部位の一時的な痛み・腫れ・熱感・内出血で、感染等のリスクは低いとされますがゼロではありません。治療効果には個人差があります。用いるPRP調製システムはいずれも国内で承認・認証を受けた医療機器です(Angel™ cPRP System 承認番号 30500BZX00054000/PRGF-Endoret® 認証番号 30500BZI00007000)。
  • 幹細胞治療(MFAT・培養幹細胞):自由診療(保険適用外)です。標準的な費用は、MFAT 600,000円(1部位)/990,000円(2部位)、培養幹細胞治療 総額 2,200,000円(いずれも税込)。培養幹細胞治療は上記が総額で、MFATは別途、診察・検査の費用がかかります。症例によって追加の検査費用が必要となる場合がございます。主なリスクは脂肪採取部位の痛み・腫れ・皮下出血、関節投与後の腫れ・熱感、麻酔によるアレルギー(まれ)、培養工程での資材に伴うアレルギー(まれ)です。治療効果には個人差があります。MFATの調製には国内で承認を受けた高度管理医療機器「LIPOGEMS O キット」(承認番号 30400BZX00092000)を用います。なお、培養に用いる資材には国内承認を受けていないものを使用する場合があります。
  • 入手経路・国内の承認状況:いずれも国内の正規流通経路で導入しています。医師の個人輸入は行っておりません。くわしくは当院の自由診療についてをご覧ください。

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