変形性膝関節症

変形性膝関節症は、膝のクッションである軟骨が、加齢などによって少しずつすり減り、痛みや腫れ、動かしにくさが生じる病気です。進行すると変形が進み、歩行がつらくなることがあります。日本人にとても多く、年齢を重ねるほど増えていきますが、「歳のせい」とあきらめる必要はありません。原因となっている状態を正しく見きわめ、早い段階から対応することで、痛みをやわらげ、進行をゆるやかにすることが期待できます。このページでは、病気の仕組みから診断・治療の全体像までをわかりやすくご説明します。

変形性膝関節症とは(膝で起きていること)

膝の関節は、太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)、そしてお皿の骨(膝蓋骨)が組み合わさってできています。骨の表面は、なめらかな「関節軟骨」でおおわれ、その間には衝撃を吸収する「半月板」があります。軟骨は、歩く・立つ・階段を上るといった動作のたびに、関節にかかる衝撃をやわらげるクッションの役割をしています。

変形性膝関節症では、この軟骨が長い時間をかけてすり減り、うすくなっていきます。軟骨がすり減ると、骨どうしが直接ぶつかりやすくなり、関節を包む膜(滑膜)に炎症(滑膜炎)が起きます。この炎症が、痛みや腫れ、水がたまる(関節水腫)といった症状の大きな原因です。さらに進行すると、骨が変形してトゲのような出っぱり(骨棘)ができたり、関節のすき間が狭くなったりして、膝がまっすぐ伸びにくい、深く曲げられないといった状態になっていきます。

近年は、こうした関節の中で慢性的に続く炎症(加齢に伴う慢性炎症)が、痛みや進行に深く関わっていると考えられています。当院では、痛みの背景にある炎症の状態にも目を向けながら、一人ひとりに合った治療を組み立てています。

進行の程度(初期・進行期・末期)

変形性膝関節症は、ゆっくりと段階的に進むのが特徴です。おおまかには、次のように経過します。

  • 初期:立ち上がりや歩き始め、階段の下りなど、動作の「はじめ」に痛みを感じます。少し休むと痛みがやわらぐことが多く、見過ごされやすい時期です。
  • 進行期:正座や深くしゃがむ動作がつらくなり、階段の上り下りで痛みが強まります。膝が腫れたり、水がたまったりを繰り返すようになります。
  • 末期:安静にしていても痛む、夜間に痛む、膝がまっすぐ伸びない・十分に曲がらないなど、日常生活への支障が大きくなります。O脚が目立ち、歩ける距離が短くなることもあります。

どの段階でも治療の選択肢はありますが、早い時期に対応するほど、膝への負担を減らし、進行をゆるやかにしやすくなります。

主な症状

  • 立ち上がり・歩き始めに膝が痛む
  • 階段の上り下り、とくに下りがつらい
  • 膝が腫れる、水がたまる
  • 正座や深い曲げ伸ばしがしにくい
  • 膝がこわばる、動かし始めに重い感じがする
  • O脚が進んできた、歩ける距離が短くなった

原因・なりやすい方

加齢による軟骨の変化を基本に、いくつかの要因が重なって発症・進行します。

  • 体重(肥満):膝には歩行時に体重の数倍の負担がかかるため、体重が増えると軟骨への負担も大きくなります。
  • 脚の形(O脚など):膝の内側に負担が集中し、内側の軟骨がすり減りやすくなります。
  • 過去のケガ:半月板損傷や靭帯損傷(前十字靭帯など)の既往があると、若い年代でも起こりやすくなります。
  • 筋力の低下:太ももの筋肉(大腿四頭筋)が弱ると、膝を支える力が落ち、関節への負担が増えます。
  • 性別・体質:閉経後の女性に多い傾向があります。

デスクワーク中心で運動の機会が少ない方、立ち仕事や重い荷物を扱う方なども、膝に負担がかかりやすい生活背景といえます。

診断(レントゲン・KL分類・MRI)

問診で痛む場面や経過をうかがい、診察で膝の腫れ・可動域(曲げ伸ばしの範囲)・脚の形・不安定さなどを確認します。そのうえで画像検査を行います。

  • レントゲン(X線):関節のすき間の狭さ、骨棘(骨の出っぱり)、骨の硬さなどから変形の程度を評価します。進行度の分類には、世界的に使われるKellgren-Lawrence分類(KL分類)を用い、グレード(0〜4)で段階的に評価します。
  • MRI:レントゲンには写らない軟骨・半月板・靭帯の状態や、骨の内部の変化(骨髄病変)まで確認できます。痛みの原因を詳しく見きわめたい場合や、半月板損傷などの合併が疑われる場合に有用です。

正確な診断は、その後の治療を選ぶうえでの土台になります。当院では、症状の原因がどこにあるのかを画像も含めて丁寧に評価することを大切にしています。

治療の全体像

変形性膝関節症の治療は、膝の状態と進行度に応じて段階的に考えます。まずは体への負担が少ない保存療法から始め、改善が不十分な場合に次の選択肢を検討していくのが基本的な流れです。

1. 保存療法(保険診療が基本)

多くの方は、保存療法で痛みをやわらげ、生活の質を保つことができます。

  • 運動療法・リハビリ:太ももの筋肉(大腿四頭筋)を鍛え、膝を支える力を高めます。ストレッチで可動域を保つことも大切です。当院では理学療法士による個別のリハビリテーションを行い、一人ひとりの状態に合わせた運動を指導します。
  • 減量:体重を減らすことは、膝にかかる負担を直接軽くする、根本的で効果的な対策のひとつです。
  • 内服・外用:痛みや炎症をやわらげる飲み薬・貼り薬・塗り薬を、症状に合わせて用います。
  • 物理療法・装具:温熱などの物理療法や、必要に応じて足底板(インソール)・サポーターなどで膝の負担を調整します。
  • ヒアルロン酸の関節注射:関節の動きをなめらかにし、痛みをやわらげる注射です。当院では、まず週1回のペースで数回行い、その後は状態に応じて間隔をあけて維持していく方法を基本にしています。

2. 手術以外の次の選択肢(再生医療)

運動療法やヒアルロン酸注射などの保存療法を続けても改善が不十分な方には、手術以外の次の選択肢として、再生医療(PRP療法・幹細胞治療など)が検討できる場合があります。ご自身の血液や脂肪組織を用いて、関節内の炎症環境を整え、修復が起こりやすい状態をめざす治療です。適応となるかどうかは、KL分類(変形の程度)・骨髄病変の有無・症状をもとに判断します。再生医療は、それだけで完結する治療ではなく、運動療法と組み合わせることでより力を発揮すると考えられています。

治療内容・費用・リスクの詳しい説明は、膝の再生医療・PRP療法のページをご覧ください。

※ 再生医療は自由診療(保険適用外)です。適応・費用・リスクは各ページに記載しています。治療効果には個人差があります。

3. 手術(専門医療機関と連携)

変形が高度で、保存療法や再生医療でも日常生活への支障が大きい場合は、手術(骨切り術・人工膝関節置換術など)が検討されます。当院では手術の適応があると判断した場合、連携する専門医療機関へ適切にご紹介します。

手術しないと治りませんか?

多くの方は、手術をせずに、運動療法・減量・薬・関節注射といった保存療法で痛みをやわらげ、生活の質を保つことができます。手術が検討されるのは、変形が進み、保存療法や再生医療でも改善が不十分で、日常生活への支障が大きい場合です。まずは膝の状態を正しく評価し、負担の少ない方法から順に試していくことが大切です。「手術は避けたい」というお気持ちも含めて、選択肢をご相談いただけます。

どのくらいで良くなりますか?

痛みのやわらぎ方は、進行度や炎症の程度、生活背景によって個人差があります。ヒアルロン酸注射や内服で比較的早く楽になる方もいれば、運動療法を続けるなかで少しずつ改善していく方もいます。変形性膝関節症は長くつき合っていく病気であることが多いため、一時的に痛みを取ることだけでなく、筋力を保ち、進行をゆるやかにしていく視点が大切です。

受診の目安(こんなときはご相談ください)

  • 立ち上がりや歩き始めの膝の痛みが続く・繰り返す
  • 膝が腫れる、水がたまる
  • 正座や階段がつらくなってきた
  • 膝がまっすぐ伸びない、十分に曲がらない
  • 安静にしていても痛む、夜間に痛む

これらがある場合は、早めにご相談ください。原因や進行度を見きわめ、保存療法から、改善が不十分な場合の選択肢(再生医療)、手術との連携まで、一人ひとりに合わせてご提案します。

ご自宅でできること(セルフケア)

  • 太ももの運動:椅子に座って膝を伸ばす、あお向けで脚を上げるなど、無理のない範囲で大腿四頭筋を動かす習慣をつけましょう。
  • 体重の管理:少しの減量でも膝の負担は軽くなります。
  • 膝を冷やさない・動かし始めを大切に:慢性的な痛みやこわばりには、温めて血流をよくすることが向いています。一方、ぶつけた・急に腫れて熱をもったといった急なときは、冷やすことが向いています。症状やタイミングに応じた使い分けが大切です。
  • 和式の負担を減らす:正座や深くしゃがむ動作、階段の多い生活は膝の負担になりやすいため、可能な範囲で工夫しましょう。

痛みが強いときや腫れが続くときは、セルフケアだけで様子を見ず、医療機関にご相談ください。

よくあるご質問

Q. レントゲンで「異常なし」と言われましたが痛みます。なぜですか?
初期の変形性膝関節症や、半月板・軟骨・滑膜の炎症などは、レントゲンにはっきり写らないことがあります。必要に応じてMRIで詳しく調べることで、原因がわかる場合があります。

Q. 運動すると悪化しませんか?
痛みを我慢して無理をするのは逆効果ですが、適切な運動で膝を支える筋力を保つことは、痛みの軽減と進行の予防につながります。どの運動をどの程度行うかは、状態に合わせてご案内します。

Q. ヒアルロン酸注射はいつまで続けられますか?
症状に応じて、注射の間隔をあけながら続けていく方法があります。それでも改善が不十分な場合には、手術以外の選択肢として再生医療をご案内することもあります。

Q. 両膝とも痛いのですが、診てもらえますか?
はい。両膝の状態をそれぞれ評価し、まとめて治療方針をご提案します。

この治療を受けられる前に(費用・リスク・自由診療について)

このページでご案内している治療のうち、次のものは自由診療(保険適用外)です。ご検討の前にご確認ください。

  • PRP療法:自由診療(保険適用外)です。標準的な費用は、白血球除去型PRP(PRGF-Endoret®)110,000円/回(計3回が標準)、高用量PRP(Angel™ HD-PRP)330,000円/回(いずれも税込)。料金は1部位ごとに発生します(例:両膝にPRGFを3回で660,000円)。別途、MRI評価・血液検査の費用がかかります。主なリスクは注射部位の一時的な痛み・腫れ・熱感・内出血で、感染等のリスクは低いとされますがゼロではありません。治療効果には個人差があります。用いるPRP調製システムはいずれも国内で承認・認証を受けた医療機器です(Angel™ cPRP System 承認番号 30500BZX00054000/PRGF-Endoret® 認証番号 30500BZI00007000)。
  • 幹細胞治療(MFAT・培養幹細胞):自由診療(保険適用外)です。標準的な費用は、MFAT 600,000円(1部位)/990,000円(2部位)、培養幹細胞治療 総額 2,200,000円(いずれも税込)。培養幹細胞治療は上記が総額で、MFATは別途、診察・検査の費用がかかります。症例によって追加の検査費用が必要となる場合がございます。主なリスクは脂肪採取部位の痛み・腫れ・皮下出血、関節投与後の腫れ・熱感、麻酔によるアレルギー(まれ)、培養工程での資材に伴うアレルギー(まれ)です。治療効果には個人差があります。MFATの調製には国内で承認を受けた高度管理医療機器「LIPOGEMS O キット」(承認番号 30400BZX00092000)を用います。なお、培養に用いる資材には国内承認を受けていないものを使用する場合があります。
  • 入手経路・国内の承認状況:いずれも国内の正規流通経路で導入しています。医師の個人輸入は行っておりません。くわしくは当院の自由診療についてをご覧ください。

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