脂漏性皮膚炎
脂漏性皮膚炎は、皮脂の多い場所に、赤みとフケのような皮むけが出る、慢性の湿疹です。
出やすい場所は決まっています。
頭、髪の生え際、眉間、眉毛、鼻の脇、耳の中と後ろ、あご、胸の中央、わきの下——皮脂腺の多い部分です。
このページで、まずお伝えしたいのは次の点です。
「乾燥している」と思って保湿を重ねても、良くなりません。
見た目が粉をふいたようになるため、多くの方が乾燥だと考えます。しかしこの病気の背景にあるのは乾燥ではなく、皮脂と、そこで増える常在のカビ(真菌)です。対応の方向がまったく違います。
フケ・乾燥ではありません
脂漏性皮膚炎で最も多い誤解が、これです。
「フケが出る=洗い方が足りない、あるいは乾燥している」
どちらも外れています。
実際に起きていること
私たちの皮膚には、マラセチアという常在のカビ(真菌)がいます。これは誰の皮膚にもいる、普通のものです。
このマラセチアは皮脂を栄養にして増えます。 皮脂が多い環境では増えやすく、その過程で皮脂を分解して刺激性のある物質を生み出します。
この刺激に対して皮膚が反応したものが、脂漏性皮膚炎の赤みとかゆみです。そして炎症によって皮膚の生まれ変わりが速まり、フケのような皮むけが出ます。
だから、こうなります
- 保湿を重ねる → 皮脂の多い環境をさらに助長し、悪化することがあります
- ゴシゴシ洗う → 皮膚を傷めて炎症が強まります
- 洗わない → 皮脂が溜まり、悪化します
必要なのは、「適度に洗って、炎症を抑える」ことです。
症状
- 赤み:脂っぽい部分に、境界がややぼんやりした赤み
- 黄色っぽい、しっとりしたフケ(乾いた細かいフケのこともあります)
- かゆみ:あることも、ないこともあります
- 皮むけ
- 頭では、洗ってもすぐフケが出る
- 鼻の脇の赤みが、なかなか引かない
季節では、秋から冬に悪化する方が多く、また疲れやストレスで悪化します。
部位ごとの見え方
頭
フケが増える、かゆい、赤みがある。「フケ症」だと思って市販のシャンプーを試し続けている方が多い部位です。
顔
鼻の脇、眉間、眉毛の中。「なんとなく赤い」「粉をふく」という状態が続きます。化粧のノリが悪いと感じられることもあります。
耳
耳の中、耳の後ろの溝。かゆくて綿棒でいじってしまい、悪化する方が多い部位です。
胸・背中の中央
赤みとカサつき。
他の病気と間違われやすい
顔に出た場合、次の病気と区別が必要です。対応が変わりますので、自己判断は避けてください。
酒さ(赤ら顔)
頬の赤み、ほてり、細い血管が目立つ。脂漏性皮膚炎と合併していることもよくあります。 赤ら顔でお悩みの方は、赤ら顔(酒さ)もご覧ください。
にきび
毛穴に一致したブツブツが主体。脂漏性皮膚炎は面ではっきりしない赤みと皮むけが主体です。
アトピー性皮膚炎
出る場所が違います(肘の内側、膝の裏など)。ただし合併することもあります。
接触皮膚炎(かぶれ)
使ったものに一致した範囲と時期。境界がはっきりしています。
乾癬
より厚く、銀白色の鱗屑がつき、境界がはっきりしています。頭では区別が難しいこともあります。
繰り返す病気です。それを前提に
はっきりお伝えします。
脂漏性皮膚炎は、一度の治療で終わる病気ではありません。
薬を使えば数週間で良くなります。しかし、皮脂が多いという体質、マラセチアが常在しているという事実は変わりません。ですから、やめれば戻ってきます。
「治らないのか」とがっかりされるかもしれません。しかし、発想を変えていただきたいのです。
目標は「完全になくすこと」ではなく、「気にならない状態を保つこと」。
高血圧や花粉症と同じで、上手に付き合えば、日常生活で困らない状態を長く保てます。
実際の付き合い方
- 悪いときはしっかり治す:炎症を抑える薬を使い、いったん落ち着かせます
- 落ち着いたら、維持に切り替える:抗真菌のシャンプーや外用を、頻度を落として続けます
- 悪化のサインが出たら、早めに戻す:完全に悪くなる前に対応するほうが、短く済みます
「また出た=失敗」ではありません。 そういう病気なので、また対応すればよいだけです。
診断と治療
問診では、いつから、どこに、どのような症状が出ているか、季節による変動、これまで試したもの(シャンプー・市販薬・スキンケア)、生活の状況、持病とお薬をうかがいます。
診察では、皮疹の分布(脂漏部位に一致しているか)、赤みの性状、鱗屑の状態を確認します。多くの場合、出ている場所と見た目で診断がつきます。
必要に応じて、他の病気との区別のための検査を行うことがあります。
治療
① 抗真菌薬
マラセチアを抑えます。塗り薬やシャンプーの形で使います。この病気の治療の中心です。
② ステロイド外用薬
赤みやかゆみが強い場合に、短期間使います。炎症を早く抑えるためのもので、長く使い続ける薬ではありません。
③ 洗い方の見直し
適度に洗うことが治療の一部です。詳しくは次の項でご説明します。
④ 生活面
睡眠不足、ストレス、脂っこい食事、アルコールは悪化の要因になります。すべてを完璧にする必要はありませんが、悪化しているときは意識してみてください。
洗い方のポイント
頭
- 毎日洗って構いません。 むしろ、洗わずに皮脂が溜まるほうが悪化します
- 爪を立てない。 指の腹で、頭皮を動かすように
- シャンプーをよく泡立ててからつける
- すすぎを十分に。 すすぎ残しが刺激になります
- すぐ乾かす。 濡れたまま放置すると、カビが増えやすくなります
- 処方されたシャンプーは、数分置いてから流すことで効果が期待できます
顔
- 1日2回程度、泡でやさしく洗う
- こすらない、あぶらとり紙で取りすぎない
- スクラブ、ピーリングは控える(炎症を悪化させます)
- 保湿は、さっぱりしたものを少量。 油分の多いクリームは合わないことがあります
耳
- 綿棒でいじらない。 かゆくて触ると、必ず悪化します
- 処方された薬を使ってください
赤ちゃんの脂漏性皮膚炎について
生後2〜3か月ごろの赤ちゃんにも、頭や眉に黄色いかさぶたのようなものがつくことがあります。これも脂漏性皮膚炎と呼ばれますが、大人のものとは経過が違います。
- 母親由来のホルモンの影響で一時的に皮脂が多くなることが背景にあります
- 多くは生後6か月から1歳ごろまでに自然に落ち着きます
- 入浴時に石けんでやさしく洗うことで改善することが多くあります
かさぶたを無理にはがさないでください。 ふやかしてから、そっと洗い流します。
赤みが強い、じくじくしている、かゆがっている、範囲が広い——このような場合は、アトピー性皮膚炎など他の可能性もありますので、ご相談ください。
よくあるご質問
Q. 市販のフケ用シャンプーで治りますか?
軽い場合は落ち着くこともあります。ただし、赤みやかゆみがある場合は炎症が起きているので、それだけでは不十分です。数週間試して変わらなければご相談ください。
Q. 保湿したほうがよいですか?
顔では、さっぱりしたものを少量なら構いません。 油分の多いクリームを重ねると悪化することがあります。「乾燥しているから保湿を」という発想は、この病気には当てはまりません。
Q. 食事は関係ありますか?
脂っこい食事、甘いもの、アルコールは悪化の要因になることがあります。またビタミンB群の不足が関わるとされています。ただし食事だけで治る病気ではありません。
Q. 人にうつりますか?
うつりません。 原因のマラセチアは、誰の皮膚にもいる常在のものです。
Q. ステロイドを使い続けても大丈夫ですか?
顔では、漫然と使い続けるのは避けたい薬です。炎症を抑える目的で短期間使い、落ち着いたら抗真菌薬中心に切り替えます。この切り替えを診察で調整します。
Q. 何科を受診すればよいですか?
皮膚科でご相談いただけます。顔の赤みは複数の病気で起こるため、区別が必要です。