股関節の再生医療(変形性股関節症)
「足の付け根の痛みが続いている」「できれば人工関節の手術は避けたい」――股関節の痛みで、保存療法と手術のあいだの選択肢を探している方へ。当院では、整形外科専門医が画像評価にもとづいて股関節の状態を見きわめたうえで、お一人おひとりに応じた再生医療をご提案します。
このページでわかること
- 股関節の痛みで再生医療を検討する場面はどんなときか
- 股関節で検討できる主な治療(PRP療法・幹細胞治療など)と、その考え方
- 適応の考え方(進行度・股関節の背景による判断)
- 股関節の場合の治療の流れと、運動療法との組み合わせ
- 手術(人工股関節など)との考え方
股関節の痛みで再生医療を考えるのはどんなとき
股関節の痛みは、足の付け根(そけい部)を中心に、お尻や太ももにも響くことがあります。その原因として多いのが、股関節の軟骨が少しずつすり減っていく変形性股関節症です。日本では、生まれつき股関節の受け皿が浅い寛骨臼形成不全(臼蓋形成不全)を背景に、若いうちから少しずつ進行する方が少なくありません。
こうした股関節の痛みは、まず保険診療(内服・外用・運動療法・リハビリなど)で対応できる場合が多くあります。股関節では、膝で行われるヒアルロン酸の関節注射のような選択肢が限られる事情もあり、保存療法で痛みがコントロールしきれないときに、次の一手をどうするか迷いやすい部位でもあります。
再生医療を検討するのは、おもに次のような場面です。
- 内服やリハビリを続けているが、股関節の痛みの改善が物足りない
- 痛みで歩ける距離が短くなってきたが、手術はできれば避けたい
- 変形がまだ手術の段階ではなく、保存療法と手術のあいだの選択肢を探している
股関節でも、保存療法で十分な改善が得られないときの「手術以外の次の選択肢」として、再生医療を検討できる場合があります。股関節は膝と比べて関節が深い位置にあるため、レントゲンなどで変形の程度と痛みの出どころを確認したうえで適応を判断します。
※ 股関節の再生医療は、保険診療にとって代わるものではありません。保存療法で改善が不十分なときの選択肢という位置づけです。
股関節で検討できる主な選択肢
股関節に対しては、状態に応じて次のような再生医療を検討します。それぞれの治療の詳しい内容(しくみ・製剤・リスクなど)は各詳細ページでご説明しています。
- PRP療法(多血小板血漿):ご自身の血液から血小板を濃縮して用いる治療です。初期〜中等度の変形性股関節症や、慢性的な股関節の痛みなどに検討されます。→ PRP療法
- 幹細胞治療(MFAT):ご自身の脂肪組織を、培養せずに機械的な処理で微小化し、関節内に用いる治療です。中等度以降の変形性股関節症で、より積極的な関節内環境の改善をめざす場合に検討されます。→ 幹細胞治療(MFAT・培養幹細胞ADSCs)
いずれも、ご自身の血液や脂肪を用いる自己由来の治療で、入院不要の日帰りで行える点が特徴です。培養して幹細胞を増やす培養幹細胞治療(ADSCs)(第2種再生医療等:培養脂肪由来幹細胞(ADSC)PB7250015)も変形性股関節症を対象とした治療の選択肢となり得ます。詳しくは幹細胞治療のページでご説明しています。
※ どの治療が適しているかは、変形の程度・症状・これまでの治療歴などをもとに、整形外科専門医が判断します。治療効果には個人差があります。
股関節ではどのように治療を行うのですか?
股関節は、膝などに比べて体の深い位置にある関節です。そのため、関節の中へ確実に薬剤を届けるには、投与時に画像で位置を確認しながら行うことが大切になります。当院では、股関節への注射は超音波やX線などの画像ガイド下で行い、深い関節でも安全に、狙った場所へ投与できるよう配慮します。
治療にあたっては、レントゲンやMRIなどの画像で股関節の状態をていねいに評価します。変形の進行度や、背景にある寛骨臼形成不全の程度などを確認したうえで、その股関節に適した治療をご提案します。
※ 投与方法や適応は、診察・画像評価のうえで整形外科専門医が個別に判断します。効果には個人差があります。
股関節の状態と進行度で、適応はどう決まりますか
再生医療は、どんな股関節にも同じように適しているわけではありません。適応の判断では、おもに次の点を確認します。
- 変形の程度:レントゲンで関節のすき間や骨の変形の進み具合を評価します。
- 背景にある要因:寛骨臼形成不全など、股関節に負担がかかりやすい背景があるかを確認します。
- 軟骨・骨の状態:MRIで、レントゲンだけでは分かりにくい軟骨や骨の内部の状態を確認します。
- これまでの治療歴:内服やリハビリでの反応、痛みの経過。
変形が非常に高度で、日常生活への支障が大きい場合は、再生医療よりも手術(人工股関節など)が適していることもあります。その際は無理に自由診療をおすすめすることはなく、必要に応じて専門医療機関と連携・ご紹介します。股関節の状態を正しく見きわめ、その方に合った選択肢をご提案することを大切にしています。
治療の流れ(股関節の場合)
股関節の再生医療は、いずれも入院不要の日帰りで行える治療です。おおまかな流れは次のとおりです(詳しい手順・所要時間は各治療の詳細ページや料金・治療の流れをご覧ください)。
- 診察・画像評価:症状・治療歴をお伺いし、レントゲン・MRIなどで股関節の状態と進行度を評価します。
- 適応と治療法の判断:整形外科専門医が、股関節の状態に応じて適した治療(PRP・MFATなど)を判断し、ご提案します。
- ご説明・ご同意:治療内容・費用・リスクについて丁寧にご説明し、ご納得のうえで日程を決めます。
- 採取・準備:PRPは採血、MFATはご自身の脂肪の採取を行い、院内で調製します。
- 股関節への注射:超音波・X線などの画像で確認しながら、関節内に注射します。
- 経過観察・運動療法:治療後の経過を確認し、理学療法士と連携した運動療法を組み合わせてサポートします。
股関節の再生医療は、受けたあと安静にしていればよいのですか?
いいえ、再生医療を受けたあとの過ごし方も、股関節の回復にとって大切です。
PRP療法や幹細胞治療は、成長因子の放出や炎症環境の調整によって「修復が起こりやすい環境」を整える治療と考えられています。一方で、股関節の最終的な機能の回復には、適切な運動による刺激が欠かせません。とくに股関節は、骨盤を横から支えるお尻の筋肉(中殿筋)などの働きが安定に大きく関わるため、治療で整えた環境を、運動療法で守り育てるという組み合わせが重要になります。
治療後に過度な安静を続けると、股関節まわりの筋力の低下や、可動域の低下につながることがあります。当院では常勤の理学療法士と連携し、股関節の状態に合わせて段階的な運動療法を組み合わせることで、整えた環境を維持することをめざします。
※ 再生医療の効果や運動療法の進め方には個人差があります。運動の開始時期や内容は、股関節の状態に応じて医師・理学療法士が判断します。
手術(人工股関節)とはどう違うのですか?迷っています
股関節の再生医療と手術は、目的も体への負担も異なります。
人工股関節などの手術は、傷んだ関節を人工物に置き換えて、変形が高度に進んだ股関節の機能を回復させる、確立した治療です。痛みの改善と生活の質の回復が期待できる一方、入院や一定の回復期間を要します。これに対し、股関節の再生医療は、ご自身の血液や脂肪を用いて関節内の環境を整え、痛みや機能の改善をめざす、体への負担が比較的少ない日帰りの治療です。
どちらが適しているかは、股関節の進行度や生活への支障の程度によって変わります。「保存療法では物足りないが、手術にはまだ踏み切れない」という段階の方にとって、股関節の再生医療は、ご自身の関節で過ごせる期間を延ばすための選択肢の一つになり得ます。一方で、変形が高度な場合は手術が適していることも事実です。迷っている方も、まずは股関節の状態を評価したうえで、それぞれの選択肢をご説明しますので、ご相談ください。セカンドオピニオンとしてのご相談もお受けしています。
※ 股関節の再生医療は自由診療(保険適用外)です。効果には個人差があり、すべての方が手術を避けられることを保証するものではありません。
保険診療(整形外科)との使い分け
股関節の痛みは、まず保険診療(内服・外用・運動療法・リハビリ)で対応できる場合があります。これらで改善が不十分なときに、手術以外の次の選択肢として再生医療を検討する、という順序が基本です。股関節の痛みそのものの原因や、保存療法・セルフケアの詳しい内容は、整形外科の股関節ページでご説明しています。
→ 股関節でお悩みの方(整形外科) → 再生医療について(総合案内)
よくあるご質問
Q. 股関節にもPRPや幹細胞治療は行えますか?
はい、変形性股関節症などを対象に検討できる場合があります。股関節は体の深い位置にある関節のため、投与は超音波・X線などの画像ガイド下で行います。適応の有無は、診察・画像評価のうえで整形外科専門医が判断します。
Q. 内服やリハビリを続けています。再生医療に切り替えられますか?
内服やリハビリで改善が不十分な場合は、股関節の再生医療をご検討いただける場合があります。まずは股関節の状態を診察・画像評価のうえでご相談ください。なお、保険診療と自由診療の再生医療を同じ日に行うことはできません。初回から自由診療の「再生医療初回カウンセリング」としてご受診いただくことも可能です。
Q. 股関節ではPRPと幹細胞治療(MFAT)のどちらが向いていますか?
股関節の状態によって異なります。初期〜中等度の股関節にはPRPが、より積極的な関節内環境の改善をめざす中等度以降の股関節にはMFATが検討されることがあります。MRI評価をふまえ、整形外科専門医がご提案します。
Q. 変形がかなり進んでいても受けられますか?
変形が非常に高度な場合は、再生医療よりも手術(人工股関節など)が適していることがあります。股関節の状態を評価したうえで、無理のない選択肢をご提案し、必要に応じて専門医療機関へご紹介します。
Q. 治療後、リハビリは必要ですか?
股関節の機能の回復には、治療後の運動療法が重要と考えられています。当院では理学療法士と連携し、股関節の状態に合わせた運動療法を組み合わせてサポートします。
費用
| 治療 | 料金(税込) | 回数 |
|---|---|---|
| 白血球除去型PRP(PRGF-Endoret®) | 110,000円/回 | 3回(7〜10日間隔) |
| 高用量PRP(Angel™ HD-PRP) | 330,000円 | 1回 |
| MFAT 1部位 | 600,000円 | 1回(当日完結) |
| MFAT 2部位 | 990,000円 | 1回(当日完結) |
| 培養幹細胞(ADSCs) | 2,200,000円 | 採取→2〜4週間培養→投与 |
いずれも自由診療(保険適用外)です。初診・再診料、MRI評価の費用は別途かかります。くわしくは再生医療の料金・治療の流れをご覧ください。日本国外にお住まいの方は料金が異なります。
この治療を受けられる前に(費用・リスク・自由診療について)
股関節に対する再生医療(PRP療法・幹細胞治療)は、いずれも自由診療(保険適用外)です。
- ① 自由診療である旨と標準的な費用:各治療は自由診療で、全額自己負担となります。標準的な費用は再生医療の料金・治療の流れをご覧ください。別途、画像評価(MRI等)や検査の費用が必要になる場合があります。
- ② 主なリスク・副作用:注射・採取部位の一時的な痛み・腫れ・熱感・内出血などが生じることがあります。脂肪を採取する治療では、採取部位の皮下出血などが生じることがあります。治療効果には個人差があり、すべての方に同様の効果が得られるわけではありません。
- ③ 未承認の医薬品・医療機器を用いる場合がある旨:治療によっては、国内で承認されていない医薬品・医療機器・資材を用いる場合があります。該当の有無は各詳細ページに記載します。
- ④ 入手経路・国内の承認状況・諸外国での承認状況等:使用する製剤・機器の入手経路、国内での承認の有無、諸外国での承認状況等は、各詳細ページおよび当院の自由診療についてに記載します。