ほくろ・いぼが気になる
「ほくろが増えた気がする」「首にいぼのようなものができた」「顔のできものが大きくなってきた」——
このようなご相談は、皮膚科でとても多いものです。
そして最初にお伝えしたいのは、次のことです。
「ほくろ」「いぼ」という言葉には、まったく別の病気がいくつも含まれています。
見た目が似ていても、ウイルスによるもの、加齢によるもの、生まれつきのもの、そして注意が必要なもの——原因も、対応も、費用のかかり方も違います。
ですから、「取りたい」より先に、「これは何か」を確かめることが必要になります。
まず、急いだほうがよい特徴
次のような変化がある場合は、美容の相談としてではなく、診察としてお早めにご相談ください。
- 急に大きくなってきた
- 形が左右非対称、輪郭がギザギザしている
- 色にムラがある(黒、茶、赤、青などが混在)
- 6mmを超える大きさ、またはそれ以上に育ってきている
- 出血する、じくじくする、かさぶたになって治らない
- 痛みやかゆみがある
- 色が周囲ににじみ出している
- 足の裏、手のひら、爪にできた黒い部分
- 爪に黒い縦の線が出て、幅が広がってきた
これらに当てはまるからといって、必ず悪いものというわけではありません。 多くは心配のないものです。
ただし、確かめずに様子を見ることには意味がありません。 診察であれば、その場で判断できることがほとんどです。
自分で取ろうとしないでください
市販の器具や薬品で取ろうとする、糸で縛る、いじる——これらは避けてください。
- 傷跡が残る
- 感染する
- もし注意が必要なものだった場合、診断が難しくなる
とくに最後の点が重要です。取ってしまってから受診されると、判断の手がかりが失われます。
「ほくろ」「いぼ」の中身を分けてみます
患者さんが同じ言葉で呼ばれるものを、医学的に分けると次のようになります。
ほくろ(色素性母斑)
生まれつき、あるいは成長とともに現れる、色素細胞が集まったもの。平らなもの、盛り上がったもの、毛が生えているものなど、見た目はさまざまです。
多くは心配のないものですが、上に挙げた変化がある場合は確認が必要です。
老人性いぼ(脂漏性角化症)
加齢に伴ってできる、良性のできものです。茶色〜黒褐色で、表面がザラザラ、あるいは貼りついたように見えるのが特徴。顔、頭、体幹に多く、30代以降から増えていきます。
「ほくろが増えた」と感じられる方の多くは、実はこちらです。詳しくは脂漏性角化症(老人性いぼ)をご覧ください。
首や脇の小さいいぼ(軟性線維腫・アクロコルドン)
首、脇、そけい部にできる、やわらかく、小さく、皮膚と同じ色の突起。多発することが多く、衣類やネックレスに引っかかります。
中年以降に増え、摩擦の多い部位にできやすいのが特徴です。詳しくは軟性線維腫(アクロコルドン)をご覧ください。
ウイルス性のいぼ(尋常性疣贅)
ヒトパピローマウイルスによるものです。手、足の裏、指に多く、人にうつり、自分の体の他の場所にも広がります。
これは保険診療の対象であり、美容除去とは考え方が異なります。詳しくはいぼをご覧ください。
水いぼ(伝染性軟属腫)
お子さんに多い、中心がへこんだ光沢のある小さな粒。プールや接触で広がります。
粉瘤(アテローム)
皮膚の下にできる袋状のもの。「しこり」「おでき」と表現されることが多く、中心に小さな黒い点が見えることがあります。炎症を起こすと赤く腫れて痛みます。
いぼとは根本的に違うものです。詳しくは粉瘤(アテローム)をご覧ください。
保険診療と美容(自費)の使い分け
「ほくろを取りたい」というご相談で、最も分かりにくいのがこの点だと思います。
保険診療になるのは
- 診断のための診察・検査:これは、目的が「見た目」でなくても行います
- 注意が必要なものが疑われ、確認や切除が必要な場合
- ウイルス性のいぼ:治療の対象です
- 粉瘤:炎症を起こしている場合、大きくなっている場合など
- 日常生活に支障がある場合:出血を繰り返す、衣類に引っかかって痛むなど
自費(美容)になるのは
- 良性であることが分かっていて、見た目を理由に取る場合
つまり、順番はこうなります。
まず診察を受けて、「それが何か」を確かめる。
→ 注意が必要なものであれば、保険診療で対応します。 → 良性で、見た目のために取りたいのであれば、美容の治療をご案内します。
「美容で取ろうと思っていたら、診察が必要なものだった」ということは実際にあります。 ですから、いきなり除去の予約をされるより、まず診てもらうほうが確実です。
美容での除去についてはほくろ・いぼ除去のページで、費用やリスクを含めてご説明しています。
診察でお伝えいただきたいこと
- いつからあるか(生まれつきか、最近できたか)
- 変化があるか(大きさ、色、形、盛り上がり)
- 症状があるか(かゆみ、痛み、出血)
- ご家族に皮膚のがんの方がいるか
- 日焼けの多い生活をしてきたか
- これまでに何か処置をしたか(市販薬、他院での治療、自分でいじった)
「変化があるか」がとくに重要です。 昔の写真があれば、比べる材料になります。スマートフォンの写真で構いませんので、あればお持ちください。
当院での診察の流れ
問診と視診に加え、必要に応じてダーモスコピーという機器を用いた観察を行うことがあります。皮膚の表面に光を当てて拡大して見るもので、痛みはなく、その場で終わります。
判断が難しい場合や、確認が必要と考えられる場合には、組織の一部を採って調べる検査を行うことがあります。専門的な対応が必要な場合には、適切な医療機関へご紹介します。
良性であることが確認できれば、そのまま様子を見ていただくことも、美容の治療で除去することも選べます。
増えていく人・増えない人
「同年代の友人より、明らかに多い」と感じておられる方がいます。この差には、いくつかの理由があります。
① 紫外線を浴びた量
これが最も大きな要因です。若い頃に日焼けをたくさんした方、屋外での仕事や活動が長かった方は、加齢性のできもの(脂漏性角化症)も、しみも、多くなる傾向があります。
過去に浴びた紫外線は取り消せません。 ただし、これから浴びる量は減らせます。 日焼け止め、帽子、日傘——地味ですが、5年後10年後に差が出ます。
② 体質・家族歴
脂漏性角化症のできやすさには、体質的な要素があります。ご家族に多い方は、ご自身も多くなる傾向があります。
③ 摩擦
首や脇の小さいいぼ(軟性線維腫)は、衣類やアクセサリーがこすれる部位にできます。ネックレス、下着のライン、首まわりのきつい服。
④ 年齢
脂漏性角化症は30代から、軟性線維腫は中年以降に増えていきます。「最近増えた」という感覚は、多くの場合その通りです。
見た目のために取ることについて
「気にしすぎでしょうか」とおっしゃる方がいます。
そんなことはありません。
顔や首のできものは、毎日鏡で目に入ります。 化粧がのらない、写真に写る、人の視線が気になる——これらは、医学的な重症度とは別の、実際の負担です。
「病気ではないから我慢すべき」とは、私たちは考えていません。
ただし、順番があります。
まず、それが何かを確かめる。 そのうえで、良性であることが分かってから、取るかどうかを考える。この順番だけは、守っていただきたいと思います。
取らずに様子を見るという選択も、もちろんあります。「相談したけれど、今回は取らない」で構いません。 何か分かっただけでも、気持ちの負担は変わります。
よくあるご質問
Q. ほくろが増えている気がします。
加齢とともに増える良性のもの(脂漏性角化症)である場合が多くあります。 ただし、変化のあるものが含まれていないかは確認する価値があります。
Q. 悪いものかどうか、その場で分かりますか?
多くの場合、診察とダーモスコピーで判断できます。判断が難しいものについては、検査をご提案します。
Q. 除去したら跡は残りますか?
大きさ、深さ、部位、方法によって異なります。 まったく残らないとは申し上げられません。詳しくは診察でご説明します。
Q. 保険で取れますか?
「見た目が気になる」という理由だけでは、保険の対象になりません。 ただし、診察による確認は保険診療で行えます。
Q. 何個も取りたいのですが。
数によって、方法や回数、費用が変わります。一度に取れる範囲には限りがありますので、ご相談ください。
Q. 子どものほくろが心配です。
お子さんのほくろの多くは心配のないものですが、大きさや変化によっては確認が必要です。ご相談ください。