皮膚のかゆみ
皮膚のかゆみは、誰もが経験する身近な症状ですが、その原因はひとつではありません。乾燥によるものから、湿疹・皮膚炎、アトピー性皮膚炎、じんましん、虫さされ、特定のものに触れたことによる接触皮膚炎まで、原因によって適切なケアや治療は大きく異なります。「かゆいから、とりあえずかく」を続けていると、皮膚が傷ついてかえってかゆみが強くなり、湿疹が広がってしまうこともあります。このページでは、皮膚のかゆみが起こる仕組みと主な原因、受診の目安、ご自宅でできる応急的なケアについてご説明します。かゆみの原因を見きわめ、それぞれに合った治療につなげていくことが、つらい症状から抜け出す近道です。
かゆみはなぜ起こるのか
かゆみは、皮膚の中にある「かゆみを伝える神経」が刺激されることで生じます。皮膚が乾燥してバリア機能(外部の刺激から皮膚を守るはたらき)が低下すると、わずかな刺激でもかゆみを感じやすくなります。また、皮膚に炎症が起こると、ヒスタミンをはじめとするかゆみを引き起こす物質が放出され、それが神経を刺激してかゆみとして感じられます。汗をかいたとき、体が温まったとき、衣類がこすれたときなど、ちょっとしたきっかけでかゆみが強くなることも少なくありません。かゆみの感じ方には個人差があり、同じ皮膚の状態でも、かゆみが強く出やすい方とそうでない方がいます。
皮膚のかゆみの主な原因
かゆみを引き起こす皮膚の状態には、次のようにさまざまなものがあります。ご自身の症状がどれに近いかを知っておくと、受診の際の目安になります。
乾燥(乾皮症)
皮膚の水分や脂分が失われ、バリア機能が低下した状態です。とくに冬場や、入浴で熱いお湯を使う、洗浄力の強い石けんで体をゴシゴシ洗うといった習慣がある方に多く見られます。皮膚がカサカサして、白い粉をふいたようになり、かゆみを伴います。加齢に伴って皮膚の水分保持力が下がることも、乾燥によるかゆみの一因です。
湿疹・皮膚炎
皮膚に赤み、ぶつぶつ、じくじくといった変化とともにかゆみを伴う状態を、まとめて「湿疹」と呼びます。汗や摩擦、乾燥、特定の刺激などが重なって起こることが多く、原因がひとつに絞れないことも少なくありません。慢性的に繰り返す場合は、皮膚科での診断のもと、原因や悪化要因を整理していくことが大切です。
アトピー性皮膚炎
強いかゆみを伴う湿疹が、良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性の皮膚疾患です。もともと皮膚のバリア機能が弱い体質があり、そこに乾燥や汗、アレルギーの要素などが加わって症状が出やすくなります。子どもに多い印象がありますが、大人になってから症状が出る、あるいは続く方もいます。アトピー性皮膚炎については、アトピー性皮膚炎のページで詳しくご説明していますので、あわせてご覧ください。
じんましん(蕁麻疹)
皮膚の一部が赤く盛り上がり(膨疹)、強いかゆみを伴って、多くの場合数時間から1日程度で跡形もなく消えていくのが特徴です。消えたと思ったら別の場所に出る、といった形で繰り返すこともあります。食べ物や薬、物理的な刺激(こすれる、汗をかく、体が温まるなど)が関わることもありますが、原因がはっきりしないことも多い症状です。じんましんについては、じんましんのページで詳しくご説明しています。
虫さされ
蚊やダニ、ノミなど、虫に刺されたり咬まれたりすることで、その部位に赤み・腫れ・かゆみが生じます。虫の種類や体質によって反応の強さはさまざまで、強く腫れる、水ぶくれになるといったケースもあります。かいてしまうと皮膚が傷つき、跡が残ったり、細菌感染を起こしたりすることがあるため注意が必要です。
接触皮膚炎(かぶれ)
特定の物質が皮膚に触れたことで起こる炎症です。金属、化粧品、洗剤、植物、衣類の素材など、原因となるものは人によってさまざまです。触れた部分に一致して赤み・かゆみ・ぶつぶつが出るのが特徴で、原因となっているものを避けることが治療の第一歩になります。何が原因か思い当たらない場合も、皮膚科での診察で手がかりが見つかることがあります。
内科的な要因が関わることもあります
皮膚そのものに大きな異常が見当たらないのに、全身にかゆみが続く場合は、肝臓や腎臓、甲状腺のはたらき、糖尿病といった内科的な要因が関わっていることもあります。皮膚科での診察で皮膚の病気が否定的な場合、必要に応じて内科と連携しながら原因を調べていくこともあります。
かいてしまうと悪化する「かゆみの悪循環」
かゆいところをかくと、そのときは一時的に楽になったように感じますが、かくことで皮膚の表面が傷つき、バリア機能がさらに低下します。すると、その部分はより刺激に敏感になり、かゆみを感じやすくなります。かゆみを感じてまたかく、その結果さらにかゆみが強くなる――これを「かゆみの悪循環(itch-scratch cycle)」と呼びます。この悪循環が続くと、皮膚が厚く硬くなったり、色素沈着が残ったりすることもあります。「かゆいからかく」のはごく自然な反応ですが、この悪循環に一度入ってしまうと、セルフケアだけで抜け出すのがむずかしくなることがあります。早めに原因を見きわめ、必要な治療を受けることが、悪循環を断ち切る近道です。
受診の目安(こんなときはご相談ください)
かゆみの多くは、原因に応じたケアや治療で落ち着いていきますが、次のような場合は、自己判断で様子を見ず、早めのご相談をおすすめします。
- かゆみが1週間以上続いている、または繰り返している
- 市販の保湿剤やかゆみ止めを使っても改善しない
- かき壊してしまい、皮膚がじゅくじゅくしている、出血している
- かゆみのために夜眠れない、日常生活に支障が出ている
- 発疹やぶつぶつが体の広い範囲に広がってきた
- かゆみとあわせて発熱や倦怠感など、ほかの症状がある
- 皮膚に目立った異常がないのに、全身のかゆみが続いている
とくに、かゆみが強くて眠れない、皮膚が傷だらけになっているといった状態は、我慢を続けずに早めに皮膚科を受診してください。
ご自宅でできること(セルフケア)
原因の診断や治療とあわせて、日々の過ごし方でかゆみをやわらげられることもあります。無理のない範囲で、次の点を心がけてみてください。
- かかない:かゆくてもできるだけかかないようにしましょう。かゆみが強いときは、かく代わりに手のひらで優しく押さえる、冷やすなどで気を紛らわせる方法もあります。
- 冷やす:かゆみが強いときは、清潔なタオルで包んだ保冷剤などで患部を冷やすと、かゆみが和らぐことがあります。お風呂上がりにほてりが強い場合も同様です。
- 保湿をする:皮膚が乾燥しているとかゆみを感じやすくなります。入浴後などお肌が清潔な状態で、刺激の少ない保湿剤をこまめに塗ることが、かゆみの予防につながります。
- こすらない:入浴時にゴシゴシ体を洗う、タオルで強くふくといった摩擦は、皮膚を傷つけてかゆみを悪化させる原因になります。よく泡立てた洗浄料で優しく洗い、タオルは押さえるように水分を拭き取りましょう。
- 爪を短く切る:無意識にかいてしまったときの皮膚への傷を最小限にするため、爪は短く切っておきましょう。とくにお子さまは、寝ている間に無意識にかいてしまうこともあります。
- 熱いお湯を避ける:熱いお湯での入浴は一時的にかゆみを紛らわせますが、その後かえってかゆみが強くなることがあります。ぬるめのお湯で、長時間の入浴は控えめにしましょう。
- 衣類・室温に気を配る:チクチクする素材の衣類や、汗をかいたままの状態、暖房で肌が乾燥しやすい環境は、かゆみを誘発しやすくなります。
これらのセルフケアで改善しない場合や、そもそも原因がはっきりしない場合は、自己判断でのケアを続けるよりも、早めに皮膚科でご相談いただくことをおすすめします。
かゆみは何科を受診すればいいですか?
皮膚に何らかの症状があってかゆみが出ている場合は、皮膚科が専門です。乾燥、湿疹、アトピー性皮膚炎、じんましん、虫さされ、接触皮膚炎など、原因によって必要なケアや治療が異なるため、まずは皮膚の状態を診察のうえで原因を見きわめることが大切です。当院では、皮膚科専門医が皮膚の状態を丁寧に確認し、原因に応じた治療をご提案します。皮膚に目立った異常がないのに全身のかゆみが続く場合は、内科的な要因が関わっていることもあるため、必要に応じて内科と連携しながら対応します。
かゆみは自然に治りますか?
原因によります。虫さされなど、原因がはっきりしていて一時的なものであれば、時間の経過とともに落ち着いていくことが多いです。一方で、アトピー性皮膚炎のように良くなったり悪くなったりを繰り返す体質的な要因があるものや、じんましんのように繰り返しやすいもの、原因となっている刺激が続いている接触皮膚炎などは、そのままにしていても改善しにくいことがあります。とくに、かいてしまうことで悪循環に入っている場合は、セルフケアだけで自然に治まるのを待つよりも、早めに原因を見きわめて治療を始めたほうが、結果的に早く楽になることが多いです。
よくあるご質問
Q. かゆみ止めの市販薬を使ってもよいですか?
一時的な虫さされなど、原因がはっきりしている軽い症状であれば、市販のかゆみ止めで様子を見ていただいても構いません。ただし、症状が続く、繰り返す、範囲が広がるといった場合は、原因に合った治療が必要なことが多いため、皮膚科でのご相談をおすすめします。
Q. 子どものかゆみと大人のかゆみで、原因は違いますか?
お子さまは乾燥やアトピー性皮膚炎、あせも、虫さされによるかゆみが多い一方、大人になってからは乾燥に加えて、生活習慣や体質の変化、まれに内科的な要因が関わることもあります。年代によって多い原因は異なりますが、いずれの場合も、まずは皮膚の状態を診察して見きわめることが基本です。
Q. かゆみが夜になると強くなるのはなぜですか?
夜間は、体が温まって血流が増えることや、日中に比べて気を紛らわせるものが少ないことなどから、かゆみを強く感じやすくなるといわれています。かゆみで眠れない状態が続く場合は、我慢せずにご相談ください。
Q. ストレスでかゆみが出ることはありますか?
ストレスや疲労が、かゆみの感じ方や皮膚の状態に影響することはあるといわれています。ただし、ストレスだけが原因と自己判断せず、皮膚に湿疹やじんましんなどの変化がないかをまず確認することが大切です。
Q. 保湿剤はどのくらいの量を塗ればよいですか?
乾燥によるかゆみの予防には、十分な量の保湿剤をこまめに塗ることが大切です。適切な量や塗り方には個人差がありますので、診察の際に皮膚の状態に合わせてご案内します。