40〜50代から始める関節ケア
40〜50代は、「立ち上がりに膝が気になる」「腰が重い」「肩が動かしにくい」「朝、手がこわばる」など、関節の変化を感じ始める方が増える年代です。まだ日常生活に大きな支障はなく、「病院に行くほどではない」と感じる程度の違和感かもしれません。
しかし、変形性関節症などの関節の病気は、ある日突然始まるのではなく、この年代の小さな変化から少しずつ進んでいくことが知られています。裏を返せば、40〜50代は「これからの関節を守る対策」を始めるのにいちばん適した時期でもあります。痛みを我慢したり「歳のせい」で片づけたりせず、いまの状態を知り、進行させないケアを始めましょう。
「まだ病院に行くほどでは」の違和感こそ、ケアの始めどき
「時々痛むけれど、すぐ治まる」「動き始めだけ気になる」「正座が少しつらくなってきた」――このような段階では、多くの方が受診を先延ばしにしがちです。
けれども、関節の軟骨には痛みを感じる神経がほとんどないため、はっきりした痛みが出るころには、関節の中の変化がある程度進んでいることが少なくありません。強い痛みが出る前の「違和感」の段階は、運動や生活の工夫といった負担の少ない方法で関節を守れる、貴重な時期です。
大げさに不安になる必要はありません。この年代の違和感の多くは、筋力や柔軟性の低下、使い方のくせなど、ケアで対応できる変化です。大切なのは、「様子を見る」だけで何もしないのではなく、いまの関節に合ったケアを知って、生活に取り入れることです。
40〜50代の関節で起きはじめる変化
この年代の関節では、次のような変化が少しずつ進みます。いずれも誰にでも起こりうる標準的な変化で、早めに気づいて対策すれば進行をゆるやかにすることが期待できます。
軟骨の変化
関節の表面をおおう軟骨は、骨どうしがなめらかに動くためのクッションです。軟骨は年齢とともに水分やしなやかさが少しずつ失われ、すり減りやすくなります。一度大きくすり減った軟骨は自然には元に戻りにくいため、「すり減らせない」ことが予防の基本になります。
筋力の低下
筋肉量は、何もしなければ中年期から少しずつ減っていきます。特に太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)は膝を守る「天然のサポーター」で、ここが弱ると膝の関節に直接かかる負担が増えます。「昔より階段で疲れやすい」「つまずきやすくなった」は、筋力低下のサインかもしれません。
柔軟性の低下
筋肉や腱、関節を包む組織は、加齢や運動不足でかたくなります。関節の動く範囲(可動域)がせまくなると、動きの一部に負担が集中し、痛みや炎症のきっかけになります。肩や股関節は特に、かたさに気づかないまま進みやすい部位です。
体重の影響
歩くときに膝へかかる力は、平地の歩行で体重の2〜4倍程度、階段の上り下りではさらに大きくなると報告されています(測定条件や動作によって幅があります)。体重が数キロ増えるだけでも、関節が毎日受ける負担は大きく変わります。40〜50代は基礎代謝が下がり体重が増えやすい年代でもあるため、関節ケアと体重管理は切り離せない関係にあります。
初期サインのセルフチェック
次のような変化に心当たりはありませんか。
- 立ち上がり・歩き始めなど「動き始め」に関節が痛む、こわばる
- 正座やしゃがみ込みが以前よりつらくなってきた
- 階段の下りで膝に不安を感じる
- 関節を動かすと音がする・引っかかる感じがある
- 朝、手の指がこわばる(動かすうちに楽になる)
- 肩が上がりにくい、腕を後ろに回しにくい
- 長く歩いたあと、関節が腫れぼったい・重だるい
ひとつでも当てはまる場合、関節やその周囲で何らかの変化が始まっているサインかもしれません。すぐに治療が必要とは限りませんが、「原因を確かめたうえで、合ったケアを始める」ことをおすすめします。
今からできる関節ケア
1. 運動――関節を守るいちばんの方法
「痛くなりそうだから動かさない」は、実は逆効果になりやすい選択です。軟骨は血管が乏しく、関節が動くことで関節液から栄養を受け取っています。また、関節を支える筋力は、使わなければ確実に落ちていきます。
- 筋力の維持:椅子に座って膝をゆっくり伸ばす運動など、太ももの前の筋肉を鍛える運動は、膝への負担軽減の基本です。スクワットなどを行う場合は、痛みのない範囲・正しいフォームで。
- 柔軟性の維持:肩・股関節・太ももの裏などのストレッチを、入浴後など体が温まったタイミングで習慣にしましょう。
- 関節にやさしい有酸素運動:ウォーキング・水中運動・自転車などは、体重管理と筋力維持を兼ねられます。急に強度を上げず、少しずつ増やすのがこつです。
2. 体重管理――関節への「毎日の負担」を減らす
体重を減らすことは、膝や股関節への負担を直接減らせる、根本的な対策のひとつです。急激なダイエットは筋肉まで減らしてしまうため、食事の見直しと運動を組み合わせて、ゆるやかに調整することが大切です。極端な糖質制限や欠食よりも、たんぱく質をしっかりとりながら総量を整える方法が、筋力を守る観点からも適しています。
3. 生活動作の工夫
- 正座や深いしゃがみ込みなど、膝を深く曲げる姿勢を長く続けない
- 床の生活より、椅子・ベッドの生活のほうが膝への負担は軽くなります
- 重い荷物は片側だけで持たず、体に近づけて持つ
- デスクワークでは1時間に一度は立ち上がり、関節を動かす
- 慢性的なこわばりには温める工夫(入浴・温湿布)が向いています。一方、ひねった直後など腫れ・熱感があるときは冷やすのが基本です
更年期と関節の症状――女性に知ってほしいこと
40〜50代の女性では、更年期に女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が大きく変化します。エストロゲンは関節や腱の周囲の組織を守る働きにも関わっているとされており、この時期に「朝、手の指がこわばる」「指の関節が痛む・ふくらんできた」「手首や指の付け根が痛い」といった手の症状を感じる女性は少なくありません。
「家事もあるのに手が思うように動かない」「年齢のせいと言われて終わってしまった」――そんな思いを抱えて受診をためらう方も多くいらっしゃいます。しかし、これらの症状には、腱鞘炎やヘバーデン結節(手指の変形性関節症)など名前のついた原因があり、装具やリハビリ、生活の工夫など対応の方法があります。ひとりで抱え込まず、まずは状態を確かめることから始めてください。
また、手のこわばりが長く続く場合には、関節リウマチなど他の病気との見きわめが大切になることもあります。気になる症状が続くときは、自己判断せずご相談ください。
→ 手でお悩みの方/ヘバーデン結節/関節がこわばる(症状から探す)
なお、女性は更年期以降、骨の量(骨密度)も減り始めます。骨粗鬆症の予防と検査については、60代からの骨粗鬆症予防・骨粗鬆症外来をご覧ください。
五十肩が起こりやすい年代です
肩が上がりにくい・腕を後ろに回すと痛い・夜間に肩がうずく――このような症状で多いのが、いわゆる五十肩(肩関節周囲炎)です。その名のとおり40〜60代に多く、まさにこの年代に起こりやすい関節トラブルの代表です。
「そのうち治る」と言われることもありますが、適切な時期に適切な動かし方を始めないと、肩がかたまって動く範囲がせまいまま残ってしまうことがあります。時期に応じた対応が大切な病気ですので、詳しくは五十肩(肩関節周囲炎)のページをご覧ください。
運動すると、関節はすり減りませんか?
「動かすと軟骨が減りそうで怖い」というご質問をよくいただきますが、心配はいりません。適度な運動はむしろ関節に良い影響を与えると考えられています。関節を動かすことで軟骨に栄養が行き渡り、周囲の筋力が保たれることで関節そのものへの負担が減るためです。ウォーキング程度の運動で変形性関節症が進みやすくなるという心配は、基本的に不要とされています。
一方で、痛みや腫れがあるまま強い負荷をかけ続けることは避けるべきです。「どの程度なら動かしてよいか」は関節の状態によって異なりますので、迷ったときはご相談ください。
グルコサミンなどのサプリメントは効きますか?
グルコサミンやコンドロイチンなどのサプリメントについては、これまで多くの研究が行われてきましたが、関節症状の予防や進行抑制に対する効果の科学的根拠は限定的とされています。飲んではいけないものではありませんが、「サプリメントを飲んでいるから大丈夫」と考えて運動や体重管理をおろそかにしてしまうことのほうが、関節にとっては大きなマイナスです。
関節ケアの土台は、あくまで筋力・柔軟性の維持と体重管理です。サプリメントを検討する場合も、まずはこの土台と組み合わせて考えることをおすすめします。
医療機関でできる予防的サポート
「まだ治療というほどではない」段階でも、整形外科でできることがあります。
- いまの関節の状態を知る:診察とレントゲンなどの画像評価で、違和感の原因と関節の状態を確認します。「異常なし」を確かめられるだけでも、安心して運動に取り組めます。
- 一人ひとりに合った運動の指導:当院では、理学療法士が体の使い方・筋力・柔軟性を評価し、その方の関節の状態と生活に合った運動プログラムをご案内しています。自己流の運動で痛みを悪化させてしまう前に、正しい方法を身につけていただけます。
- 痛みがあるときの治療:違和感が痛みに変わってきた場合は、内服・リハビリテーション・物理療法(超音波・ラジオ波など)を症状に応じて組み合わせ、悪化を防ぎます。
当院は「痛みを『歳のせい』で片づけない」という姿勢で診療しています。初期のうちに原因を見きわめ、保存療法を中心に対応しながら、その先の選択肢まで一院でご案内できることが特徴です。すでに変形性関節症と診断された方・痛みが強くなってきた方の治療の選択肢(保存療法から再生医療まで)は、50代以降の変形性関節症・関節注射から再生医療への流れで詳しくご紹介しています。 ※再生医療は自由診療(保険適用外)です。効果には個人差があります。
よくあるご質問
Q. 痛みがないのに受診してもよいのでしょうか?
A. はい、問題ありません。「違和感の原因を確かめたい」「関節を守る運動を教えてほしい」というご相談も整形外科の大切な役割です。痛みが出る前の段階でこそ、できることが多くあります。
Q. 関節がポキポキ鳴るのは大丈夫ですか?
A. 痛みをともなわない音だけであれば、心配のないことがほとんどです。ただし、音と一緒に痛み・引っかかり・腫れがある場合は、半月板や軟骨などの変化が隠れていることもあるため、一度ご相談ください。
Q. 正座がつらくなってきました。もう変形性関節症でしょうか?
A. 正座のつらさだけで変形性関節症と決まるわけではありません。筋肉や関節周囲のかたさが原因のこともあります。ただし膝の変化の初期サインである場合もあるため、状態を確認したうえで、合ったケアを始めることをおすすめします。
Q. 太ってはいないのですが、体重管理は必要ですか?
A. 標準体重の方であれば、無理に減量する必要はありません。その場合は「増やさないこと」と、筋力・柔軟性の維持が関節ケアの中心になります。体組成(筋肉量と脂肪量のバランス)を意識することも有効です。
Q. どんな運動から始めればよいですか?
A. まずはウォーキングなど負担の少ない有酸素運動と、太ももの前の筋肉を保つ運動(椅子に座っての膝伸ばしなど)からがおすすめです。すでに違和感がある方は、状態に合わない運動で悪化させないよう、開始前に一度ご相談いただくと安心です。
この治療を受けられる前に(費用・リスク・自由診療について)
このページでご案内している治療のうち、次のものは自由診療(保険適用外)です。ご検討の前にご確認ください。
- PRP療法:自由診療(保険適用外)です。標準的な費用は、白血球除去型PRP(PRGF-Endoret®)110,000円/回(計3回が標準)、高用量PRP(Angel™ HD-PRP)330,000円/回(いずれも税込)。料金は1部位ごとに発生します(例:両膝にPRGFを3回で660,000円)。別途、MRI評価・血液検査の費用がかかります。主なリスクは注射部位の一時的な痛み・腫れ・熱感・内出血で、感染等のリスクは低いとされますがゼロではありません。治療効果には個人差があります。用いるPRP調製システムはいずれも国内で承認・認証を受けた医療機器です(Angel™ cPRP System 承認番号 30500BZX00054000/PRGF-Endoret® 認証番号 30500BZI00007000)。
- 幹細胞治療(MFAT・培養幹細胞):自由診療(保険適用外)です。標準的な費用は、MFAT 600,000円(1部位)/990,000円(2部位)、培養幹細胞治療 総額 2,200,000円(いずれも税込)。培養幹細胞治療は上記が総額で、MFATは別途、診察・検査の費用がかかります。症例によって追加の検査費用が必要となる場合がございます。主なリスクは脂肪採取部位の痛み・腫れ・皮下出血、関節投与後の腫れ・熱感、麻酔によるアレルギー(まれ)、培養工程での資材に伴うアレルギー(まれ)です。治療効果には個人差があります。MFATの調製には国内で承認を受けた高度管理医療機器「LIPOGEMS O キット」(承認番号 30400BZX00092000)を用います。なお、培養に用いる資材には国内承認を受けていないものを使用する場合があります。
- 入手経路・国内の承認状況:いずれも国内の正規流通経路で導入しています。医師の個人輸入は行っておりません。くわしくは当院の自由診療についてをご覧ください。