むちうち(頚椎捻挫)
交通事故などで、首に急な力が加わって起こるけがです。
正式には、頚椎捻挫、外傷性頚部症候群などと呼ばれます。
車の追突で、頭が鞭(むち)のようにしなることから、この名前がついています。
事故直後は、痛くないことがあります
「その場では平気だったのに、翌日から痛くなった」
これは、非常によくある経過です。 決して珍しいことではありません。
理由があります。
事故の直後は、緊張と興奮で、痛みを感じにくい状態になっています。体が非常事態に対応しているためです。
それが落ち着いてから、症状が出てきます。
多くは、事故の当日夜から翌日、遅い方では2〜3日後に痛みを感じ始めます。
だから、早めに受診してください
「痛くないから大丈夫」と判断せず、事故に遭われたら、早めに医療機関を受診してください。
理由は2つあります。
① 見逃してはいけないけががあります
骨折や、頭部・神経の損傷が隠れていることがあります。痛みがなくても、確認が必要です。
② 時間が空くと、事故との関係が説明しにくくなります
これは、医学的な話というより実務的な話です。 事故から受診まで日が空くほど、「その症状が事故によるものか」の説明が難しくなります。
ご自身のために、早めの受診をおすすめします。
どんな症状が出るか
首まわり
- 首の痛み、動かしにくさ
- 首から肩、背中にかけての張り
- 後ろを振り向けない
首以外にも出ます
- 頭痛(後頭部が多い)
- めまい、ふらつき
- 吐き気
- 腕や手のしびれ
- 耳鳴り
- だるさ、集中しにくさ
- よく眠れない
「首のけがなのに、なぜ頭痛やめまいが」と思われるかもしれません。
首には、神経や血管が集まっています。 そのため、首以外の症状として現れることがあります。
症状は、ひとつとは限りません。 気になることは、すべてお伝えください。
次の症状があれば、急いでください
時間帯を問わず、救急対応が可能な医療機関へご相談ください。
- 頭を打った。意識が一瞬でも遠のいた
- 強い頭痛が続く、だんだん強くなる
- 繰り返し吐く
- 手足に力が入らない
- ろれつが回らない、物が二重に見える
- 激しい首の痛みで、まったく動かせない
- 手足のしびれが、広がってきている
とくに、頭を打った場合は、その場では症状がなくても、後から出てくることがあります。
画像に写らないことがあります
「レントゲンを撮ったが、異常なしと言われた。でも痛い」
これも、よくあるお話です。
むちうちの多くは、レントゲンに写りません。
レントゲンが写すのは骨です。むちうちで傷んでいるのは、筋肉、靭帯、関節を包む組織——レントゲンに写らないものが中心だからです。
「異常なし=けがをしていない」ではありません。
では、何のために撮るのか
骨折や、骨のずれがないかを確認するためです。それを除外することに意味があります。
当院では、超音波(エコー)も併せて使います。 超音波なら、筋肉や靭帯の状態を見ることができます。
しびれが強い場合や、神経の症状が疑われる場合には、MRIをご紹介することがあります。
経過について
多くの方は、数週間から数か月で軽くなっていきます。
ただし、まっすぐ良くなっていくとは限りません。
良くなったり、また戻ったりを繰り返しながら、少しずつ——これが実際の経過です。
天候、疲れ、姿勢で変動することもよくあります。
「治らないのでは」と感じる時期があります
ある程度良くなったところで、変化が止まったように感じる時期があります。
多くの方が、ここで不安になられます。
しかし、そこから時間をかけて戻っていくことは、珍しくありません。
焦らないでください。 そして、その時期こそ、自己判断で通院をやめないでください。
治療
急性期(事故直後〜数日)
- 安静。ただし、必要以上に固定しません
- 炎症を抑える:外用薬、内服薬
- 無理に動かさない
首を固定する装具(カラー)について
長く着け続けることは、おすすめしていません。
固定している間、首の筋肉は使われず、弱っていきます。 結果として、外したときに、かえって痛みが長引くことがあります。
使う場合も、期間を決めて、短くというのが基本です。
回復期
- リハビリテーション:動く範囲を戻し、筋肉の緊張をやわらげます
- 姿勢の見直し:首に負担のかかる姿勢が続くと、戻りにくくなります
- 少しずつ、日常の動きに戻していく
当院では、理学療法士が担当します。
「痛いから動かさない」を続けると、かえって長引きます。 どこまで動かしてよいかを確かめながら、進めていきます。
ご自身でできること
- 温める:急性期を過ぎたら、温めると楽になることが多くあります
- 枕の高さを見直す:高すぎる枕は、首に負担がかかります
- 同じ姿勢を続けない:デスクワーク、スマートフォン
- こまめに休む
- 痛みが強い日は、無理をしない
「早く治そう」として無理に動かすと、かえって長引きます。
通院について
症状に応じて、必要な期間、必要な頻度で通っていただきます。
自己判断で中断されると、良くなりかけていたものが戻ってしまうことがあります。やめどきは、診察でご相談ください。
交通事故によるけがの場合、費用の扱いや必要な手続きが通常の受診と異なります。詳しくは交通事故診療をご覧ください。
受診の際は、保険会社の担当者名・連絡先をお伝えください。
ご家族・周囲の方へ
むちうちは、見た目に分かりません。
ギプスもなく、傷もなく、松葉杖もつきません。外から見て、けがをしていることが分からない——これが、この症状の難しさです。
そのため、周囲から理解されにくいことがあります。
- 「もう治ったでしょう」
- 「気のせいでは」
- 「大げさなのでは」
ご本人にとって、これは症状そのものと同じくらいつらいものです。
実際に、痛みも、頭痛も、だるさも起きています。 見えないだけです。
ご家族の方には、次のことを知っておいていただけると助かります。
- 経過は、まっすぐ良くなりません。 良い日と悪い日を繰り返します
- 天候や疲れで変動します。 「昨日は平気だったのに」は、よくあることです
- 本人が最もつらいのは、先が見えないことです
そして、ご本人へ。
周囲に理解されないことを、ご自身の中だけで抱えないでください。 診察でお話しいただければ、経過の見通しをお伝えできますし、必要であれば、状態を記した書類をお出しすることもできます。
よくあるご質問
Q. 事故から数日経ってしまいました。今からでも受診できますか?
受診してください。 早いほうがよいのは確かですが、時間が経っていても、診察と治療の意味はあります。
Q. レントゲンで異常なしと言われました。
むちうちの多くは、レントゲンに写りません。 骨折がないことを確認するための検査です。「異常なし=けがをしていない」ではありません。
Q. どのくらいで治りますか?
数週間から数か月が一般的ですが、個人差が大きいけがです。良くなったり戻ったりしながら、少しずつ回復していきます。
Q. 首のコルセットは着けたほうがよいですか?
長期間の固定は、おすすめしていません。 使う場合も、期間を決めて短くが基本です。
Q. 温めてよいですか、冷やすべきですか?
事故直後の数日は冷やし、その後は温めるのが一般的です。楽に感じるほうを優先していただいて構いません。
Q. 整骨院と併用できますか?
保険の取り扱いに関わる部分がありますので、加入されている保険会社にご確認ください。 当院での治療内容については、診察でご説明します。
Q. 頭痛やめまいも、事故と関係ありますか?
関係することがあります。 首には神経や血管が集まっているためです。気になる症状は、すべてお伝えください。
Q. 何科を受診すればよいですか?
整形外科でご相談いただけます。頭を打った場合、意識が遠のいた場合は、時間帯を問わず、救急対応が可能な医療機関へご相談ください。