腰椎すべり症
腰椎すべり症は、腰の骨(椎骨)が、その下の骨に対して前方にずれてしまう状態です。
「すべり症」と一言で呼ばれますが、実際には起こり方の異なる2つの種類があり、年代も、対応も、注意すべき点も違います。
- 分離すべり症:成長期のスポーツが背景。10代で見つかれば、骨がつく可能性があります
- 変性すべり症:加齢に伴う変化。中高年、とくに女性に多くみられます
まずこの2つの違いを知っていただくことが、ご自身の状態を理解する近道になります。
① 分離すべり症
何が起きているのか
腰椎の後ろ側には、上下の骨をつなぐ関節と、それを支える細い骨の部分があります。成長期に、腰を反らす・ひねる動作を繰り返すと、この細い部分に疲労骨折が起こることがあります。これが腰椎分離症です。
分離した状態で成長し、骨が支えを失うと、その骨が前方にずれていくことがあります。これが分離すべり症です。
起こりやすい方
10〜15歳ごろの、スポーツをしているお子さんに多くみられます。
- 腰を反らす動作:バレーボール(スパイク)、体操、水泳(バタフライ・平泳ぎ)、剣道
- 腰をひねる動作:野球(投球・打撃)、ゴルフ、テニス
- 腰に衝撃が加わる動作:サッカー、バスケットボール、陸上
成長期に早く見つけることの意味
これが、この病気で最もお伝えしたい点です。
分離症は疲労骨折ですので、早い段階で見つけて適切に対応すれば、骨がつく(癒合する)可能性があります。 ところが、時間が経って分離が完成してしまうと、骨はつかなくなります。
そして、分離症の初期はレントゲンに写らないことがあります。 「レントゲンで異常なし」と言われて練習を続け、後になって分離が完成した状態で見つかる——という経過は、実際によくあります。
成長期のお子さんで、腰を反らすと痛む状態が2週間以上続く場合は、レントゲンで異常がなくても、MRIでの確認を検討する価値があります。 MRIでは、レントゲンに写る前の段階の骨の変化を捉えることができます。
症状
- 腰を反らすと痛む
- 運動中・運動後に痛む
- 進行すると、お尻や太ももに痛みが広がることがある
- 分離しただけの段階では、日常生活では痛まないことも多い
② 変性すべり症
何が起きているのか
加齢に伴い、椎間板が薄くなる、関節が緩む、靭帯が弱くなるといった変化が進むと、骨と骨のつながりが不安定になり、上の骨が前方にずれていきます。
分離すべり症と違って、骨は分離していません。 支える構造が緩んだ結果として、ずれが生じます。
起こりやすい方
- 50代以降、とくに女性
- 第4腰椎(腰の下のほう)に起こりやすい
- 閉経後のホルモンの変化が関わるとされています
症状
ずれによって神経の通り道が狭くなるため、脊柱管狭窄症と似た症状が出ます。
- 腰痛:立っていると、動いていると痛む
- お尻から脚にかけての痛み・しびれ
- 間欠性跛行:しばらく歩くと脚がしびれ、休むとまた歩ける
- 前かがみになると楽になる(自転車は平気、という方が多くいらっしゃいます)
間欠性跛行については歩くと脚がしびれる(間欠性跛行)のページで、血管が原因の場合との見分け方をご説明しています。あわせてご覧ください。
診断
問診では、いつから・どんな動作で痛むか、スポーツの状況(成長期の場合)、歩ける距離、前かがみで楽になるかをうかがいます。
診察では、腰を反らす・曲げる動作での痛み、脚の感覚・筋力・反射を確認します。
レントゲンで、骨のずれの有無と程度を確認します。前かがみと反らした姿勢で撮影し、姿勢によってずれが変化するか(不安定性)を確かめることもあります。
MRIは、神経の圧迫の程度を確認するために用います。また、成長期の分離症では、レントゲンに写る前の段階を捉えるために重要です。当院にMRIはありませんので、連携医療機関での撮影となります。
CTは、分離の状態を詳しく評価する際に用いられることがあります。
治療
分離すべり症(成長期)
① 骨がつく可能性がある段階
スポーツを休み、コルセットで腰の動きを制限して骨の癒合を待ちます。期間は数か月に及ぶことがあります。
「そんなに休めない」というお気持ちはよく分かります。ただ、この時期にきちんと休めるかどうかで、その後が変わります。 骨がつけば、将来のすべりや腰痛のリスクを減らせます。
休んでいる間も、痛みの出ない範囲で体幹・下肢のトレーニングは続けられます。 完全に何もしないわけではありません。
② 分離が完成している段階
骨の癒合は期待できませんが、分離があっても症状なく生活している方は大勢いらっしゃいます。 体幹の筋力を保ち、腰への負担を減らすことで、痛みなく競技を続けられることも多くあります。
変性すべり症(中高年)
保存的な治療が基本です。
- お薬:痛みやしびれに応じた内服・外用
- リハビリテーション:体幹の筋力強化、股関節周囲の柔軟性改善、姿勢の見直し。当院には理学療法士が常勤しており、保険診療の範囲で受けていただけます
- コルセット:痛みが強い時期に一時的に用いることがあります。長く使うと筋力が落ちるため、期間を決めて使います
- 生活の工夫:前かがみで楽になる方は、その姿勢を上手に使う(買い物カートを押す、自転車を使う)。重い物を持たない
手術
次のような場合には、手術が検討されます。
- 保存的な治療でも歩ける距離が短くなっていく
- 脚の筋力低下が進んでいる
- 排尿の変化がある
- 痛みで日常生活が大きく制限される
当院では手術は行っておりません。 必要と判断した場合には、専門的な治療を行う医療機関へご紹介します。手術後のリハビリテーションについては、当院で継続して受けていただくことができます。
よくあるご質問
Q. 「すべり症」と言われましたが、手術が必要ですか?
多くの場合、まず保存的な治療から始めます。手術が検討されるのは、歩行距離が短くなっていく、筋力低下がある、排尿の変化がある、といった場合です。
Q. ずれた骨は元に戻りますか?
ずれそのものが元に戻ることは通常ありません。治療の目的は、症状を抑え、進行を防ぎ、日常生活を保つことになります。
Q. 子どもが腰を痛がります。成長痛でしょうか?
腰を反らすと痛む状態が続く場合は、分離症を念頭に置いて確かめる価値があります。 成長痛は夜に痛み、場所が一定しないのが特徴です。詳しくは成長期の子どもの関節の痛みのページをご覧ください。
Q. レントゲンで異常なしと言われましたが、痛みが続きます。
初期の分離症はレントゲンに写らないことがあります。症状が続く場合は、MRIでの確認をご検討ください。
Q. 運動は続けてよいですか?
成長期で骨がつく可能性がある段階では、一定期間お休みいただくことをおすすめします。分離が完成している場合や、変性すべり症の場合は、痛みの程度に応じて調整します。
Q. コルセットはずっと着けるのですか?
目的と期間が異なります。分離症の癒合を目指す場合は数か月、痛みを抑える目的の場合は一時的です。長期使用は筋力低下につながるため、外す時期も含めてご相談します。
Q. 何科を受診すればよいですか?
腰の痛みは整形外科でご相談いただけます。当院では整形外科専門医が診察・検査を行い、状態に応じた対応をご提案します。