ブシャール結節

ブシャール結節は、指の第二関節(真ん中の関節)に起こる変形性関節症です。関節の軟骨がすり減り、腫れや変形、痛みが生じます。

爪に近い第一関節に起こるヘバーデン結節の名前は聞いたことがあっても、ブシャール結節はご存じない方が多いかもしれません。この認知度の低さが、ひとつの問題を生んでいます。

関節リウマチと間違われやすいのです。

関節リウマチも指の第二関節が腫れる病気であり、「指の真ん中の関節が腫れてきた」という症状だけでは、ご自身では区別がつきません。「リウマチかもしれない」と不安を抱えて受診される方が多くいらっしゃいます。

何が起きているのか

指の関節も、他の関節と同じように軟骨で覆われています。加齢や、手を使う負担の積み重ねによって、この軟骨がすり減っていきます。

軟骨が減ると、骨と骨が近づき、関節のふちに骨のとげ(骨棘)ができます。これが関節の横のふくらみ(結節)として現れます。同時に、関節を包む膜に炎症が起こり、腫れや痛みを生じます。

ヘバーデン結節と同じ性質の変化が、起こる関節の位置だけ違う——それがブシャール結節です。実際、両方が同時にある方も多くいらっしゃいます。

起こりやすい方

  • 40代以降の女性:ヘバーデン結節と同様、女性に多くみられます
  • 手をよく使うお仕事・趣味の方
  • ご家族に同じ変化がある方

症状

  • 指の第二関節が腫れる、太くなる
  • 関節の横に硬いふくらみができる
  • 曲げ伸ばしがしにくくなる、握りにくい
  • 指が横に曲がってくることがある
  • 動かすときに痛む
  • 進行すると、指が完全には曲がらない・伸びない

痛みは、進行するにつれて落ち着いていくことが多いのも特徴です。腫れや変形は残っても、痛みは軽くなっていきます。

関節リウマチとの見分け

これが本ページで最もお伝えしたい点です。同じ「第二関節の腫れ」でも、次の違いがあります。

ブシャール結節関節リウマチ
腫れの感触骨ばって硬いやわらかく、ぶよぶよ
左右対称性対称とは限らない左右対称のことが多い
朝のこわばり短時間(数分〜)30分〜1時間以上続く
付け根の関節通常は腫れない付け根の関節も腫れる
全身症状なしだるさ・微熱を伴うことがある
進行ゆっくり、痛みは軽くなっていく治療しないと関節破壊が進む

最も分かりやすいのは、「触った感じ」と「朝のこわばりの長さ」です。

ただし、これはあくまで目安です。初期には典型的な形をとらないこともありますし、両方が併存していることもあります。血液検査と画像で確かめることで、はっきりする部分が大きい病気です。

「リウマチではない」と分かること自体に意味があります。 不安を抱えたまま過ごすより、一度確かめておくことをおすすめします。

診断

問診では、いつから、どの関節が腫れているか、朝のこわばりの長さ、左右差、手首や足の症状、だるさや微熱の有無をうかがいます。

診察では、腫れている関節を実際に触って、硬い骨ばった膨らみか、やわらかい滑膜の腫れかを確かめます。動かせる範囲、指の変形の程度も確認します。

レントゲンでは、関節の隙間の狭さ、骨のとげを確認します。関節リウマチでみられる骨びらん(骨の一部が欠ける所見)の有無も、鑑別の助けになります。

超音波(エコー)検査では、関節の中の炎症の程度を観察できます。当院では院内で行えます。

血液検査では、炎症の値、リウマトイド因子、抗CCP抗体などを確認し、関節リウマチとの区別を行います。

治療

変形そのものを元に戻すことはできません。 治療の目的は、痛みを抑えること、進行をゆるやかにすること、日常生活の使いやすさを保つことです。

① 手の使い方の見直し

  • 指先や第二関節に強い力をかける動作を減らす:ふたを開ける、雑巾を絞る、強く握る
  • 道具を使う:オープナー、電動工具、軽い調理器具
  • 持ち手を太くする:細いものを強く握るほど、関節にかかる力が大きくなります

② 装具・テーピング

指の関節を軽く支えることで、痛みが軽くなることがあります。使う場面を絞って用いるのが基本です。

③ お薬

痛みや炎症を抑える外用・内服を用います。

④ 温める

入浴時などに温めると、こわばりや痛みが和らぐことがあります。

やらないほうがよいこと

  • こぶを強く揉む:小さくなることはなく、炎症が強まることがあります
  • 痛みを我慢して強く握る動作を繰り返す
  • 自己流の強いストレッチ

手の変形と、生活の中の困りごと

指の第二関節が太くなると、痛み以外にもさまざまな不便が生じます。診察の際、こうした困りごとを具体的にお話しいただけると、対応の工夫をご提案しやすくなります。

握る・つまむ動作
第二関節が曲がりにくくなると、しっかり握り込めなくなります。フライパン、包丁、ドライバー、ペン、ハサミ。持ち手を太くする、軽いものに替えるといった工夫で楽になることがあります。

指輪
関節が太くなると、指輪が通らなくなります。無理に抜こうとして炎症が強まることもありますので、困っている場合はご相談ください。サイズ直しやリング状の補助具という方法もあります。

細かい作業
ボタン、ファスナー、小銭、書類をめくる、スマートフォンの操作。ボタンエイドなどの自助具が役立つことがあります。

見た目
手は人目に触れる場所です。人前で手を隠すようになった、握手をためらうようになった——こうしたお気持ちは、医学的には「症状」に数えられませんが、生活の質に直結します。

「こんなことを相談してよいのか」と迷われる必要はありません。変形そのものを戻すことはできませんが、痛みへの対応、進み方をゆるやかにする工夫、道具や自助具の選び方など、できることはあります。 気になっていることをそのままお話しください。

経過について

ブシャール結節は、ゆっくり進む病気です。年単位で変化していきますが、次のような経過をたどることが多くみられます。

初期:関節が腫れ、動かすと痛む。この時期がいちばんつらいと感じる方が多くいらっしゃいます。

中期:変形が目立ってくる。曲げ伸ばしがしにくくなる。

後期:痛みは軽くなっていくことが多い。関節が硬くなり、動く範囲は狭くなるが、痛みという点では落ち着く。

「痛みがずっと続くわけではない」という点は、知っておいていただくと安心につながるかもしれません。ただし、経過には個人差がありますし、痛みが強い時期を我慢して過ごす必要はありません。その時期を楽に過ごせるようにすることが、治療の目的です。

よくあるご質問

Q. ヘバーデン結節とどう違うのですか?
起こる関節の位置が違うだけで、性質は同じです。ヘバーデン結節は第一関節(爪に近い側)、ブシャール結節は第二関節(真ん中)です。両方ある方も多くいらっしゃいます。

Q. リウマチではないと言われましたが、本当に大丈夫ですか?
血液検査と画像所見、診察所見をあわせて判断しています。ご不安が残る場合は、経過をみながら再度確認することもできますので、遠慮なくお伝えください。

Q. 腫れは引きますか?
関節の変形による腫れは、引かないことが多くあります。ただし、炎症による腫れであれば、落ち着くことがあります。

Q. 遺伝しますか?
家族に同じ変化がある方が多い傾向が知られています。ただし、必ず起こるというものではありません。

Q. 手を使わないほうがよいですか?
まったく使わないと硬くなってしまいます。「強い力をかける動作を減らす」「道具に力を肩代わりさせる」という考え方で進めましょう。

Q. 何科を受診すればよいですか?
指の関節の腫れ・変形は整形外科でご相談いただけます。当院では整形外科専門医が診察・検査を行い、関節リウマチとの区別を含めて確認します。

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