アキレス腱炎・アキレス腱周囲炎

「走ったあと、かかとの少し上が痛む」「朝、起きて最初の一歩がつらい」「以前より腱が太くなった気がする」——アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉とかかとの骨をつなぐ、体でもっとも太い腱です。

歩く・走る・跳ぶといった動作のたびに、体重の何倍もの力がかかります。使いすぎや、急に負荷が増えたときに炎症が起こります。

大切なのは、痛む場所です。 かかとの骨に近い場所と、そこから数センチ上とでは、治り方も、やってよいことも変わります。

まず確認:断裂ではありませんか

次のような場合は、アキレス腱が切れている(断裂)可能性があります。

  • 「ふくらはぎを蹴られた」「ボールが当たった」ような衝撃があった
  • バチッ、ブチッという音がした
  • つま先立ちができない
  • かかとの上にへこみを触れる
  • 歩けるが、地面を蹴れない

断裂しても歩けることがあります。 「歩けるから切れていない」とは言えません。スポーツ中や、階段を踏み外したときなどに起こりやすく、30〜50代のスポーツ愛好者に多いとされています。

心当たりがある場合は、様子を見ずにご相談ください。

痛む場所で2つに分かれます

① かかとの骨から2〜6cm上あたりが痛む(腱の中央部)

もっとも多い型です。腱そのものに負担が積み重なって起こります。この部分は血流が乏しく、治りにくいという特徴があります。

  • 朝の一歩目、動き始めが痛い
  • 動いているうちに軽くなるが、運動後にまた痛む
  • 腱が太くなった感じがする、押すと痛い

② かかとの骨のきわが痛む(付着部)

腱がかかとの骨につく部分で起こります。中央部より治りにくく、時間がかかる傾向があります。

  • 靴のかかとが当たって痛い
  • かかとの骨のとげ(骨棘)ができていることがある
  • ストレッチでかえって痛みが強まることがある

この違いは治療に直結します。 ①ではふくらはぎを伸ばすストレッチが有効なことが多い一方、②では強く伸ばすと悪化することがあります。 「アキレス腱が痛いからストレッチ」と一律に進めないほうがよい理由がここにあります。

なぜ起こるのか

  • 急に運動量が増えた(久しぶりの運動、練習量を上げた、マラソン前の走り込み)
  • 硬い路面・坂道での走行
  • 靴の変更(クッションの少ない靴、すり減った靴)
  • ふくらはぎの柔軟性の低下
  • 扁平足・足のアーチの崩れ
  • 加齢:腱の組織そのものが弱くなります
  • 一部の抗菌薬:腱の障害と関連が指摘されているものがあります

「使いすぎ」だけでなく、「急に変えた」ことが引き金になることが多いのが特徴です。何をどう変えたかを思い出していただくと、原因の手がかりになります。

当院での診察

  1. 問診:いつから、どこが痛むか、運動の内容と量の変化、靴、通院中の病気とお薬をうかがいます。
  2. 診察:押して痛む場所(中央部か付着部か)、腫れ・太さ、足首の動く範囲、ふくらはぎの柔軟性を確認します。断裂が疑われる場合は、ふくらはぎを握って足首が動くかを確認します。
  3. レントゲン:かかとの骨のとげや、石灰の沈着を確認します。
  4. 画像による評価:腱の状態をくわしく確認する必要がある場合は、追加の検査をご提案します。

治療の考え方

運動療法が治療の中心です

アキレス腱の痛みでは、安静にするだけでは治りにくいことが知られています。腱に適切な負荷をかけることが、回復につながると考えられています。

理学療法士が、痛む場所と時期に合わせて負荷を組み立てます。かかとを下ろす動きをゆっくり行う運動が中心になりますが、付着部の痛みでは方法を変える必要があります。自己流で始めると悪化することがあるため、確認のうえで進めてください。

負荷の調整

痛みが強い時期は、走る距離やジャンプを減らします。完全に休むのではなく、痛みの出ない範囲で動かすのが基本です。自転車や水中運動など、腱への負担が少ない方法に切り替える方もいらっしゃいます。

靴・装具

かかとを少し高くする(ヒールリフト)ことで、腱への張力を減らせることがあります。すり減った靴の見直しも同時に行います。

痛みへの対応

炎症が強い時期は、内服・外用を併用しながら運動療法を進めます。

アキレス腱そのものへのステロイド注射は、当院では行いません。 一時的に痛みが軽くなることはありますが、腱が弱くなり、断裂につながる可能性が指摘されているためです。

改善が乏しいとき

十分な運動療法を続けても改善しない場合、体外衝撃波治療や再生医療が選択肢として検討されることがあります。適応は状態によって異なりますので、診察のうえでご説明します。

→ スポーツ障害の再生医療

手術が望ましいと判断した場合は、連携する専門医療機関へご紹介します。

ご自宅でできること

  • 痛みが強い時期は、走る・跳ぶを減らす。 ただし完全に動かさないことは避けてください。
  • 靴のかかとを確認する。 すり減っている、かかとが柔らかくなっている靴は負担が増えます。
  • ふくらはぎをほぐす。 ただしかかとのきわが痛む場合、強く伸ばすと悪化することがあります。
  • 運動量を急に戻さない。 痛みが引いても、元の量に一気に戻すと再発します。
  • 朝の一歩目の痛みを記録する。 治り方の目安になります。この痛みが軽くなってきたら、回復のサインです。

よくあるご質問

Q. どのくらいで治りますか?
腱の回復には時間がかかります。とくにかかとのきわ(付着部)の痛みは長引く傾向があります。数週間で楽になる方もいれば、数か月かかる方もいらっしゃいます。運動療法を続けられたかどうかが、経過に影響します。

Q. 湿布とストレッチで様子を見てもよいですか?
数日で軽くなるようなら差し支えありません。ただし痛む場所によってはストレッチが逆効果になります。繰り返している、朝の一歩目がつらい状態が続く場合は、一度確かめることをおすすめします。

Q. 運動はやめたほうがよいですか?
完全にやめる必要はないことが多くあります。痛みの出ない範囲で続けるほうが回復によいと考えられています。どこまでやってよいかは、状態によって変わります。

Q. 切れる前ぶれはありますか?
必ずしも前ぶれがあるわけではありません。ただ、痛みを我慢して運動を続けている状態は、腱に負担が積み重なっています。 痛みが続く場合は確かめておくことをおすすめします。

Q. 何科を受診すればよいですか?
アキレス腱の痛みは整形外科が専門です。当院では整形外科専門医が診察し、断裂の有無を確認したうえで方針をご提案します。

この治療を受けられる前に(費用・リスク・自由診療について)

このページでご案内している治療のうち、次のものは自由診療(保険適用外)です。ご検討の前にご確認ください。

  • 体外衝撃波治療:対象となる疾患・条件により、保険診療となる場合と自由診療(保険適用外)となる場合があります。自由診療の場合の標準的な費用は、初回 5,500円/2〜3回目 8,800円/4回目以降の一連治療 5,500円(いずれも税込・2026年10月改定)。一連の治療は、前回の治療から2ヶ月以内を基準とし、2ヶ月を超えて間隔があいた場合はあらためて初回からの料金となります。主なリスクは照射部位の一時的な痛み・発赤・内出血です。治療効果には個人差があります。用いる機器は国内で承認を受けた医療機器です(BTL-6000 Focus® 承認番号 30300BZX00272000)。
  • 入手経路・国内の承認状況:いずれも国内の正規流通経路で導入しています。医師の個人輸入は行っておりません。くわしくは当院の自由診療についてをご覧ください。

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