軟性線維腫(アクロコルドン)
軟性線維腫は、首、脇、そけい部などにできる、やわらかく小さな突起です。
アクロコルドン、スキンタッグとも呼ばれます。医学的には良性のできもので、健康上の問題は起こりません。
ただし、この病気には特有の困り方があります。
できる場所が、人の目につく場所であるという点です。
首は、人と話すときに相手の視線が向かう部位です。「首が汚れているように見える」「年齢を感じさせる」——そう感じて受診される方が多くいらっしゃいます。
医学的には放っておいて構わないものですが、気にされること自体は、まったく不自然ではありません。
どんなものか
- 色:皮膚と同じ色、または少し茶色っぽい
- 形:細い茎でぶら下がるようになっているものと、丸く盛り上がっているもの
- 手触り:やわらかい。押すとつぶれるような感触
- 大きさ:1〜3mm程度の小さなものが多く、数ミリから1cm程度まで
- 数:多発するのが特徴。 数個から、数十個できることもあります
- 症状:普段は痛みもかゆみもありません
できやすい場所
首(とくに首のまわり)、脇の下、そけい部、まぶた、胸の下。
共通しているのは、「皮膚と皮膚がこすれる場所」「衣類がこすれる場所」です。
なぜできるのか
はっきりした原因はまだ分かっていませんが、次の要素が関わっていると考えられています。
① 摩擦
最大の要素とされています。皮膚同士がこすれる部位、衣類やアクセサリーが当たる部位に集中してできます。
② 加齢
中年以降に増えていきます。 20代でできる方は多くありません。
③ 体質・家族歴
ご家族に多い方は、ご自身も多くなる傾向があります。
④ 体型
皮膚同士がこすれる部位が多いほど、できやすくなります。
⑤ 妊娠
妊娠中に増える方がいらっしゃいます。ホルモンの影響と考えられています。出産後に自然に減ることもあります。
⑥ 生活習慣病との関連
糖尿病や、血糖・脂質の状態との関連が指摘されることがあります。ただし、あるからといって必ず病気があるわけではありません。 数が急に増えた場合には、健康診断の結果を確認していただくとよいかもしれません、という程度のものです。
糸で縛らないでください
このページで、最もお伝えしたいことです。
インターネット上に「糸で縛って取る」「爪切りで切る」という方法が出回っています。実際に試された方が、少なからず受診されます。
やめてください。
何が起こるか
- 出血が止まらない:小さく見えても血管が通っています。首は血流の豊富な部位です
- 感染する:不潔な器具で切ると、細菌が入ります。首や脇は蒸れやすく、感染しやすい部位です
- 強い痛み:縛ると、数日かけて痛みが続きます
- 色素沈着が残る:取れたあとに、茶色いしみのような跡が残ることがあります
- かえって目立つ跡になる:もともとの突起より、跡のほうが目立つことがあります
- 別のものだった場合、診断ができなくなる
最後の点が、最も重要です。
見た目がよく似ていても、確認が必要なものが混ざっていることがあります。 自分で取ってしまうと、それを確かめる手段が失われます。
「小さいから、自分でできそう」に見えるのが、この病気の落とし穴です。
増えるのを抑えるために
一度できたものは自然に消えませんが、新しくできるのを減らす工夫はあります。
摩擦が最大の要因ですから、こすれを減らすことが対策になります。
首
- きつい襟、タートルネックが当たり続けていないか
- ネックレスのチェーン:細く硬いものは、こすれます。長時間つけっぱなしにしない
- マフラー、ストールの素材:チクチクするものは避ける
- 洗うとき、こすらない:泡でやさしく
脇・そけい部
- 下着のゴム、縫い目の位置
- サイズが合っているか:締めつけが強いと、こすれます
- 汗を放置しない:蒸れた状態での摩擦が、いちばん皮膚を傷めます
胸の下
- ブラジャーのワイヤー、アンダーバストの当たり方
- サイズの見直しで改善することがあります
共通して
- 保湿:乾燥した皮膚は摩擦に弱くなります
- 汗をかいたら流す、拭く
地味な話ですが、こすれる時間を減らすことが、いちばん確実な予防です。
こんなときはご相談ください
良性のものですが、次の場合は確認する価値があります。
- 急に大きくなってきた
- 色が黒く変わってきた
- 出血する、痛みがある
- ねじれて、紫色になった(茎がねじれて血流が途絶えることがあります)
- 短期間に急に増えた
- 形が左右非対称、輪郭が不規則
また、衣類やアクセサリーに引っかかって出血する、痛むといった場合は、生活上の不都合として対応を検討します。
診断と治療
診察では、大きさ、色、形、やわらかさ、茎の有無、分布を確認します。多くの場合、見た目と手触りで診断がつきます。
判断が難しい場合には、ダーモスコピーでの観察や、組織を採って調べる検査を行うことがあります。
治療の選択肢
① そのままにする
良性ですので、何もしないという選択が第一にあります。 健康上の問題は起こりません。
② 取る
見た目を理由に取る場合は、自費(美容)の治療になります。方法や費用についてはほくろ・いぼ除去のページでご説明しています。
③ 保険診療の対象になる場合
出血を繰り返す、衣類に引っかかって痛むなど、日常生活に支障がある場合には、保険診療の対象となることがあります。診断のための診察は保険診療で行います。
多発している場合、一度にすべてを取るとは限りません。 大きさや部位に応じて、回数を分けることがあります。
似ているけれど、別のもの
首や脇にできる小さな突起には、軟性線維腫以外のものも含まれます。見分けは、専門的に見れば難しくありませんが、ご自身では判断できません。
ウイルス性のいぼ(尋常性疣贅)
表面がザラザラして硬く、人にうつり、自分の体の他の場所にも広がります。 軟性線維腫はやわらかく、うつりません。この違いは重要で、うつるものであれば保険診療で治療します。
水いぼ(伝染性軟属腫)
中心がへこんだ、光沢のある粒。お子さんに多いものです。
脂漏性角化症(老人性いぼ)
茶色〜黒で、表面がザラザラして硬い。首にできることもあり、軟性線維腫と混在していることもよくあります。
粉瘤(アテローム)
皮膚の下にできるしこり。突起ではなく、皮膚に埋まっています。
汗管腫
目の周りに多い、小さく硬い盛り上がり。多発します。
稗粒腫(はいりゅうしゅ)
白く小さな粒。目の周りに多くみられます。
首や脇に複数の種類が混在していることは、珍しくありません。 それぞれ対応が違うため、まとめて「いぼ」として扱わず、一度確認する価値があります。
受診をためらっておられる方へ
「こんな小さなことで受診してよいのか」——このように感じておられる方が、実際に多くいらっしゃいます。
受診していただいて構いません。
小さなできものであっても、首は人の視線が向かう場所です。気にしながら過ごす時間が積み重なることは、それ自体が負担です。
また、確認すること自体に意味があります。
- 良性だと分かれば、気にせずに済むようになります
- 別のものが混ざっていれば、そちらに対応できます
- 取るかどうかは、分かってから決めれば十分です
「相談したけれど、今回は取らない」で構いません。 むしろ、それが最も多い結果です。
そして、自分で取ろうとしてしまう前にお越しください。 自己処置のあとに来院される方が実際にいらっしゃいますが、跡が残ってしまってからでは、できることが限られます。
よくあるご質問
Q. 自然になくなりますか?
通常はなくなりません。 ただし、妊娠中に増えたものは、出産後に減ることがあります。
Q. うつりますか?
うつりません。 ウイルス性のいぼとは別のものです。ご家族に多いのは、体質が似ているためです。
Q. 取ったら、もう出ませんか?
取った場所には出にくくなりますが、他の場所に新しくできることは防げません。 摩擦を減らす対策と併せてお考えください。
Q. 何個くらいまで一度に取れますか?
方法や部位によって変わります。診察でご相談ください。
Q. まぶたにもできています。
まぶたは皮膚が薄く、目に近い部位ですので、方法の選択に注意が必要です。 必ず診察のうえで判断します。
Q. 妊娠中ですが取れますか?
妊娠中は、急がない処置は控えることが一般的です。出産後に自然に減ることもありますので、経過を見ていただくことをおすすめします。
Q. 何科を受診すればよいですか?
皮膚科でご相談いただけます。自分で取ろうとする前に、一度ご相談ください。