虫刺され・毛虫皮膚炎
虫に刺された、あるいは虫に触れたことで起こる皮膚の炎症です。
多くは数日で治まりますが、次の3点は知っておいていただきたいと思います。
① 虫の種類によって、対応がまったく違います。 とくに毛虫は、普通の虫刺されと同じ対応をすると悪化します。
② 刺された直後ではなく、翌日以降に腫れてくるタイプがあります。
③ 掻き壊すと、細菌感染(とびひ・蜂窩織炎)につながります。 虫刺されそのものより、こちらのほうが問題になることがあります。
毛虫に触れたら——最初の対応が結果を決めます
チャドクガという毛虫の被害が、初夏(4〜6月)と初秋(8〜9月)に多くみられます。
ツバキ、サザンカ、お茶の木につく毛虫です。庭木の手入れ、公園、通学路で被害が起こります。
毛虫がやっかいな理由
毛虫そのものに触らなくても、風で飛んできた細かい毒針毛(どくしんもう)が皮膚につくだけで症状が出ます。長さ0.1mm程度で、目には見えません。
「毛虫を見ていないのに、なぜ」という方が多いのは、このためです。
症状
- 数時間後に、細かく赤いブツブツが多数
- 激しいかゆみ
- 首、腕、胸など、衣類から出ている部分に集中
- 1〜2週間続くことがあります
やってはいけないこと
① こする、掻く
毒針毛が皮膚にさらに刺さり込み、範囲が広がります。
② タオルでゴシゴシ拭く
同じ理由で、広げてしまいます。
③ そのまま服を脱ぐ
首や顔に毒針毛が移ります。 脱ぐときは、慎重に。
正しい対応
① セロハンテープで、毒針毛を取り除く
粘着面を軽く当てて、そっと剥がす。 こすらずに、貼って剥がすを繰り返します。これが最も有効です。
② シャワーで洗い流す
強い流水で、こすらずに流します。石けんは泡でやさしく。
③ 服はすぐに脱いで、別に洗う
毒針毛が繊維に残ります。他の洗濯物と一緒に洗わないでください。洗濯機で洗ったあと、高温で乾燥させると処理できます。
④ 早めに受診
市販薬では十分に抑えられないことが多く、適切な強さの塗り薬が必要になります。かゆみが強い場合は内服も併用します。
この最初の対応で、その後の経過がかなり変わります。
虫の種類によって、こう違います
蚊
最も一般的です。刺された直後にかゆみと膨らみ。多くは1〜数日で治まります。
お子さんや、刺され慣れていない方では、翌日にかけて赤く大きく腫れることがあります。これは遅れて出るタイプの反応で、心配のないことが多いものの、範囲が広ければ受診をおすすめします。
ブヨ(ブユ)
渓流、キャンプ場、山間部に多い虫です。
刺された直後は気づかず、半日〜翌日から強く腫れて、激しくかゆくなるのが特徴。足首やふくらはぎを刺されることが多く、腫れが大きく、長引きます。
「昨日は何ともなかったのに、今日パンパンに腫れた」という場合、ブヨの可能性があります。市販薬では足りないことが多く、受診をおすすめします。
ハチ
刺された直後に強い痛みと腫れ。
注意が必要なのは、次の場合です。
- 息苦しい、声がかすれる、のどが締まる感じ
- 全身にじんましん
- 吐き気、腹痛
- めまい、意識がもうろうとする
- 顔色が悪い、冷や汗
これらは刺されて数分〜30分以内に起こることが多く、緊急の対応が必要です。ためらわず救急車を呼んでください。
過去にハチに刺されたことがある方は、2回目以降に強い反応が起こることがあります。 心当たりのある方は、屋外での活動時にご注意ください。
ムカデ
強い痛みと腫れ。夜間、室内で刺されることが多いのが特徴です。梅雨時から夏にかけて、家の中に入ってきます。
刺された直後は激しく痛み、その後腫れが強くなります。 ハチと同様に、全身症状が出ることがあります。
刺された直後は、43度程度の温水で温めると痛みが和らぐとされています(冷やすより効果的な場合があります)。
ダニ(屋内)
お腹、太もも、脇など、衣類で覆われた柔らかい部分に、数個まとまって刺されます。かゆみが強く、なかなか治りません。
家族の複数が同時にかゆがっている場合は、屋内のダニを疑います。
マダニ(屋外)
皮膚に食いついたまま離れないのが特徴です。山林、草むら、キャンプ場で。
無理に引き抜かないでください。 口の部分が皮膚に残ったり、体液が逆流したりすることがあります。そのままの状態で受診してください。
刺されたあとに発熱、だるさが出た場合は、必ずお伝えください。
掻き壊しが、いちばんの問題です
虫刺されそのものより、掻き壊したあとに起こることのほうが厄介です。
とびひ(伝染性膿痂疹)
掻いた手を介して、次々に広がる細菌感染。お子さんに多く、夏に集中します。詳しくはとびひをご覧ください。
蜂窩織炎
皮膚の深い部分に細菌が入り、赤く腫れて熱をもち、痛みます。 発熱を伴うこともあります。詳しくは皮膚が赤く腫れて熱をもつ・痛いをご覧ください。
色素沈着
掻き壊した跡が、茶色く残ります。 消えるまで数か月から年単位かかることがあり、とくに脚では目立ちます。
結節性痒疹
掻き続けることで、硬いしこりのような盛り上がりになり、何か月も強いかゆみが続くことがあります。
「掻かなければいい」と言われても難しいのは分かります。 だからこそ、かゆみを薬で抑えることが、これらを防ぐ手段になります。
こんなときはご相談ください
- 腫れが大きい、広がっている
- 強い痛みがある
- 赤く腫れて熱をもってきた(細菌感染の可能性)
- 発熱がある
- 市販薬を数日使っても良くならない
- 毛虫に触れた、その可能性がある
- マダニが食いついている(取らずにお越しください)
- 掻き壊してじくじくしている
- お子さんで、腫れが強い
- 同じ場所が硬いしこりになって、かゆみが続いている
診断と治療
問診では、いつ、どこで、どんな状況で刺されたか、心当たりの虫、症状の出方(すぐか、翌日か)、これまでの経過、使った市販薬、過去に同じことがあったかをうかがいます。
「どこで刺されたか」が手がかりになります。 山、川、庭、室内——場所によって虫が絞れます。
診察では、皮疹の形、数、分布、腫れの程度、細菌感染の有無を確認します。
治療
- ステロイド外用薬:炎症とかゆみを抑えます。部位と程度に応じた強さを選びます
- かゆみ止めの内服:かゆみが強い場合
- 細菌感染がある場合:抗菌薬
- 毛虫の場合:市販薬では不足することが多く、適切な強さの薬を使います
予防
- 虫よけを使う:屋外での活動時。汗をかいたら塗り直す
- 肌の露出を減らす:長袖、長ズボン、明るい色の服
- 庭木の手入れに注意:ツバキ・サザンカ・お茶の木のそばでは、長袖・手袋・帽子
- 屋外から戻ったら、着替えとシャワー
- 室内のダニ対策:寝具の洗濯、掃除機、湿度を下げる
- 家の周りの水たまりをなくす:蚊の発生源になります
よくあるご質問
Q. 市販薬で様子を見てよいですか?
軽い蚊刺されであれば、市販薬で構いません。 ただし、腫れが大きい、痛い、熱をもつ、数日で良くならない場合は受診してください。毛虫の場合は、市販薬では不足することが多くあります。
Q. 冷やしたほうがよいですか?
かゆみには冷やすのが有効です。ただし、ムカデの場合は温めるほうが痛みが和らぐとされています。
Q. 刺された跡が茶色く残っています。
掻き壊しによる色素沈着です。時間とともに薄れますが、数か月から年単位かかることがあります。日焼けすると濃くなるため、紫外線対策が有効です。
Q. 子どもが刺されて、大きく腫れました。
お子さんは反応が強く出やすく、翌日にかけて腫れが増すことがよくあります。範囲が広い、熱をもつ場合は受診してください。
Q. マダニが食いついています。
引き抜かず、そのままお越しください。 無理に取ると口の部分が残ることがあります。
Q. 毎年ひどく刺されます。
刺されやすさには個人差があります。虫よけの使い方、服装の見直しで、被害はかなり減らせます。
Q. 何科を受診すればよいですか?
皮膚科でご相談いただけます。ハチに刺されて息苦しさ、全身のじんましん、意識がもうろうとするといった症状がある場合は、ためらわず救急車を呼んでください。