蜂窩織炎(ほうかしきえん)
蜂窩織炎は、皮膚の深い部分(真皮の深部から皮下組織)に細菌が入り込み、炎症を起こした状態です。
赤み・腫れ・熱感・痛み——この4つがそろって現れます。すね(下腿)に起こることが最も多く、次いで顔、腕、足の甲などにみられます。
多くは適切な抗菌薬で改善しますが、次の2点を知っておいていただきたいと思います。
① 進行が速いことがあります。 「昨日より広がった」という変化があれば、急ぐ理由になります。
② 「治りかけ」で薬をやめると、ぶり返します。 これが、この病気でもっとも多い失敗です。
なぜ起こるのか
皮膚の表面には、常に細菌がいます。これは正常なことで、健康な皮膚はバリアとして働き、細菌が中に入るのを防いでいます。
問題は、そのバリアに切れ目ができたときです。
- 小さな傷・すり傷
- 虫刺され(掻いたところから)
- 水虫:足の指の間の皮むけ
- 乾燥によるひび割れ
- 巻き爪・陥入爪
- むくみ:皮膚が引き伸ばされ、弱くなります
- 手術やけがのあと
入口は、本人が気づかないほど小さいことも珍しくありません。 「思い当たる傷がない」という方も多くいらっしゃいます。
起こりやすい方
- 足にむくみのある方
- 水虫がある方
- 糖尿病のある方
- 免疫を抑える治療を受けている方
- 透析を受けている方
- 過去に同じ場所に起こしたことがある方
症状
- 境界がややぼんやりした赤みが、まとまった範囲に広がる
- 腫れ
- 触ると熱い
- 押すと痛い、じんじんする
- 進行すると、発熱・寒気・だるさ
- 足の付け根やわきのリンパ節が腫れることがあります
- 重い場合には、水ぶくれや皮膚の変色
多くは片側に起こります。両足が同時に、というのはあまり一般的ではありません。
急いだほうがよい状態(発熱、急速な拡大、強すぎる痛み、皮膚の変色など)については、皮膚が赤く腫れて熱をもつ・痛いのページで詳しくご説明しています。
診断
問診では、いつから、どこが、どのように腫れてきたか、きっかけ(傷・虫刺され・水虫など)、昨日と比べてどう変わったか、発熱の有無、過去に同じことがあったか、持病とお薬をうかがいます。
診察では、赤みの範囲と境界、熱感、圧痛、腫れの程度、リンパ節の腫れを確認します。足の指の間に水虫がないかも、あわせて確認します。
血液検査で炎症の程度を確認することがあります。
ほかの病気との区別
- 深部静脈血栓症:片側のふくらはぎの腫れと痛み。息苦しさを伴う場合は急を要します
- 痛風・偽痛風:関節そのものが急に赤く腫れて激しく痛む
- 接触皮膚炎:かゆみが主体で、熱感や発熱を伴わない
- うっ滞性皮膚炎:むくみが長く続く方の、両足の慢性的な変化
- 帯状疱疹:片側に帯状の水ぶくれと痛み
判断が難しい場合や、より重い感染が疑われる場合には、追加の検査や専門的な医療機関へのご紹介を行います。
治療
抗菌薬
治療の中心は抗菌薬です。原因となる細菌に対応した薬を選びます。
- 軽症〜中等症:内服で治療します
- 重症、または内服で改善しない場合:点滴が必要になります。この場合は入院可能な医療機関へご紹介します
安静と患部の挙上
足であれば、横になって足を心臓より高い位置に置く——これは、薬と同じくらい大切です。
歩き回ると、腫れが引きにくく、経過が長引きます。「動けるから大丈夫」ではなく、意識して休んでください。
痛みへの対応
痛みが強い場合には、鎮痛薬を併用します。
「治りかけ」でやめないでください
この病気でもっとも多い失敗をお伝えします。
赤みと痛みが引いてきた3〜4日目に、抗菌薬を飲むのをやめてしまうことです。
症状が良くなるのは、細菌が減ってきた証拠です。しかし、この時点ではまだ細菌が残っています。 ここで薬をやめると、残った細菌が再び増え、ぶり返します。
しかも、ぶり返した場合は最初より治りにくいことがあります。
指示された期間、飲みきってください。 「もう良くなったのにもったいない」と感じられるかもしれませんが、飲みきることが治療の一部です。
なお、逆に「2〜3日飲んでも良くならない」場合も、ご連絡ください。 薬が合っていない可能性があり、変更が必要なことがあります。自己判断で飲み続けるのではなく、経過をお伝えいただくのが確実です。
経過の目安
- 2〜3日:発熱があれば下がり始め、痛みが軽くなってきます
- 3〜5日:赤みの範囲が縮小に転じます
- 1〜2週間:赤みが引き、皮膚が薄く色づいて残ることがあります
- 色素の変化:しばらく残ることがありますが、時間とともに薄れていきます
赤みが完全に引くまでには時間がかかります。 治療が終わったあとも、しばらく色が残ることは珍しくありません。
繰り返す方へ
同じ場所に何度も蜂窩織炎を起こす方がいらっしゃいます。この場合、背景に必ず理由があります。
そして、繰り返すこと自体が、次を起こしやすくします。 炎症のたびにリンパの流れが悪くなり、むくみが強くなり、さらに細菌が入りやすくなる——という循環に入ることがあります。
この循環を断つには、症状が落ち着いている時期の対応が必要です。
落ち着いている時期にやること
① 水虫を治す
足の指の間の皮むけは、細菌の入口として最も多いもののひとつです。水虫の治療が、そのまま蜂窩織炎の予防になります。 塗り薬でも、爪に及んでいる場合は内服が必要なこともあります。
② むくみに対応する
足を高くする時間をつくる、必要に応じて弾性ストッキングを使うなど。むくみの原因(心臓・腎臓・静脈・リンパ)によって対応が変わりますので、ご相談ください。
③ 皮膚を保湿する
乾燥によるひび割れも入口になります。
④ 爪を適切に整える
深爪や巻き爪は、傷の原因になります。
⑤ 小さな傷を放置しない
虫刺されを掻き壊さない、傷は清潔に保つ。
⑥ 糖尿病がある方は血糖の管理を
感染しやすさに直結します。
「また腫れた」を繰り返しておられる方は、腫れているときだけでなく、落ち着いている時期に一度ご相談ください。 そこで対応することが、次を防ぎます。
顔に起こった場合
蜂窩織炎は足に多い病気ですが、顔に起こることもあります。 この場合、いくつか注意点が変わります。
入口になりやすいもの
- にきびを潰した
- 鼻をいじった、鼻毛を抜いた
- 虫刺され
- ひげそりの傷
- アトピー性皮膚炎や湿疹の掻き壊し
- 歯や歯ぐきのトラブル:歯の根の炎症が広がることがあります
顔の場合、とくに注意していただきたいこと
- 目の周囲、まぶたの腫れ:目の奥に炎症が及ぶと、視力や目の動きに影響することがあります。まぶたが腫れて目が開けにくい、目を動かすと痛い、ものが二重に見える——このような場合は急いでください
- 鼻から上唇にかけての範囲:この部分は、深い部分の血管とつながりがあるため、注意が必要とされています。にきびを潰さない、おできを触らない、というのは、このためでもあります
- 歯や歯ぐきに痛みがある場合:歯科での確認が必要になることがあります
顔の腫れは見た目の変化が大きく、不安になられると思います。「たかが腫れ」と様子を見ず、早めにご相談ください。
よくあるご質問
Q. 温めたほうがよいですか?
温めないでください。 炎症が広がることがあります。冷やして楽になる場合は、保冷剤をタオルで包んで軽く当てる程度にとどめてください。
Q. 揉んだりマッサージしたりしてもよいですか?
避けてください。 炎症を広げる可能性があります。
Q. お風呂に入ってもよいですか?
熱があるうち、腫れが強いうちは、湯船につかるのは避けてください。 シャワーで清潔に保つ程度にとどめ、経過をみて医師にご確認ください。
Q. 人にうつりますか?
蜂窩織炎そのものが人にうつることは、通常ありません。
Q. 仕事を休む必要がありますか?
足に起こった場合は、立ち仕事や歩き回る仕事は経過を悪くします。 状態によっては休養が必要です。ご相談ください。
Q. 市販の塗り薬でよくなりますか?
皮膚の深い部分の感染ですので、塗り薬では届きません。 また、市販のステロイド外用薬はかえって悪化させることがあります。
Q. 何科を受診すればよいですか?
皮膚科でご相談いただけます。発熱を伴う場合や急速に広がっている場合は、時間帯を問わず救急対応が可能な医療機関へご相談ください。