ニキビ(尋常性ざ瘡)

ニキビは、思春期だけの一時的なものではなく、大人になっても繰り返す「治療できる皮膚疾患」です。医学的には「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」と呼ばれ、放置すると赤みや色素沈着、へこみといった「ニキビ跡」が残ってしまうことがあります。跡になってからでは治療の負担が大きくなるため、跡を残さないうちに、できにくくする・早く治すことがとても大切です。市販薬でよくならない、同じ場所に繰り返しできるといった場合も、あきらめる必要はありません。このページでは、ニキビができる仕組みから、保険診療でできる治療、難治例の選択肢までをわかりやすくご説明します。

ニキビは「治療できる皮膚疾患」です

「ニキビは体質だから」「そのうち治るから」と、治療をせずに様子を見ている方は少なくありません。しかし、ニキビは原因のはっきりした皮膚の病気であり、適切な治療で「できにくくする」「できても跡にしない」ことができます。

とくに気をつけたいのが、赤く腫れたニキビや、膿をもったニキビをそのままにすることです。炎症が強い状態が続いたり、無理に潰したりすると、皮膚の深い部分が傷つき、赤みの残る跡や、へこんだ跡(瘢痕)として残ってしまうことがあります。いったんできた跡は、ニキビそのものよりも治療がむずかしくなります。だからこそ、跡が残る前の段階で治療を始めることが大切です。

当院は、保険診療によるニキビ治療を大切にしています。多くの方が、まず保険診療でしっかり治療することで、肌の状態を整えることができます。

ニキビができる仕組み(毛穴の詰まり・アクネ菌・炎症)

ニキビは、毛穴(毛包)で起こる次のような変化が積み重なって生じます。

  • 毛穴の詰まり:毛穴の出口の角質が厚くなり、皮脂の通り道がふさがれます。すると、毛穴の中に皮脂がたまっていきます。これが、目に見えないニキビの始まり(微小面皰)です。
  • 皮脂の過剰な分泌:思春期のホルモン変化や体質、生活習慣などにより皮脂の分泌が増えると、詰まった毛穴の中に皮脂がたまりやすくなります。
  • アクネ菌の増殖:毛穴の中は、皮膚に常在する「アクネ菌(アクネ桿菌)」が増えやすい環境になります。アクネ菌は皮脂を好むため、詰まった毛穴の中で増えていきます。
  • 炎症:アクネ菌の増殖や、それに対する体の反応によって、毛穴のまわりに炎症が起こります。これが、赤く腫れる・膿をもつといった症状につながります。

このように、ニキビは「毛穴の詰まり」を出発点に、「皮脂」「アクネ菌」「炎症」が関わって進んでいきます。治療では、これらの要因のどこに働きかけるかを考えて、お薬や処置を組み合わせていきます。

ニキビの段階(白ニキビ・黒ニキビ〜赤ニキビ〜膿〜ニキビ跡)

ニキビは、進み方によって見た目や状態が変わります。段階を知っておくと、いま自分がどの状態なのか、早めに受診したほうがよいのかの目安になります。

  • 白ニキビ(閉鎖面皰):毛穴が詰まって、皮脂が中にたまった状態です。小さくポツンと白っぽく盛り上がって見えます。まだ炎症は起きていません。
  • 黒ニキビ(開放面皰):詰まった毛穴の出口が開き、たまった皮脂の表面が酸化して黒く見える状態です。汚れではなく、酸化による色です。
  • 赤ニキビ(炎症性丘疹):毛穴の中でアクネ菌が増え、炎症が起きて赤く腫れた状態です。痛みやかゆみを伴うこともあります。
  • 膿をもったニキビ(膿疱):炎症がさらに進み、毛穴に膿がたまった状態です。目立ちやすく、跡が残りやすい段階です。
  • ニキビ跡(瘢痕・色素沈着):炎症が強かったり、繰り返したりすると、赤みの残る跡、茶色い色素沈着、へこんだ跡などが残ることがあります。

白ニキビ・黒ニキビの段階でケアを始められれば、炎症の強いニキビに進みにくくなります。赤ニキビや膿をもった状態になっているときは、跡を残さないためにも、早めのご相談をおすすめします。

保険診療でできるニキビ治療

保険診療のニキビ治療は、「今あるニキビを治す」だけでなく、「新しいニキビをできにくくする」ことを目標にします。症状の段階や肌の状態に合わせて、外用薬(塗り薬)・内服薬(飲み薬)・処置を組み合わせていきます。

外用薬(塗り薬)

現在のニキビ治療の中心となるのが外用薬です。毛穴の詰まりや炎症、アクネ菌に働きかけるお薬を、症状に応じて使い分けます。

  • アダパレン(レチノイド外用薬):毛穴の出口の角化(詰まり)を整え、面皰(白ニキビ・黒ニキビ)そのものをできにくくするお薬です。目に見えるニキビだけでなく、その手前の状態にも働きかけます。
  • 過酸化ベンゾイル(BPO):アクネ菌を減らし、毛穴の詰まりを取る作用があります。塗るタイプのほか、洗い流すタイプもあり、肌の状態や使いやすさに合わせて選べます。
  • これらを組み合わせた配合外用薬:詰まりと炎症の両方に働きかけるため、多くのニキビ治療で用いられます。

外用薬は、使い始めに一時的な赤み・かさつき・ヒリつきなどが出ることがあります。これは多くの場合、使い続けるうちに落ち着いてきます。刺激が気になって途中でやめてしまう方が多いのですが、量や使い方を調整することで続けやすくなりますので、自己判断で中止せず、まずはご相談ください。

内服薬(飲み薬)

炎症の強い赤ニキビや、膿をもったニキビが広がっている場合には、外用薬に加えて内服薬を使うことがあります。

  • 抗菌薬(抗生物質):炎症をやわらげ、アクネ菌の増殖を抑える目的で、一定期間用います。だらだらと長く続けるのではなく、炎症が落ち着いてきたら外用薬中心の治療へ切り替えていくのが一般的です。
  • ビタミン剤など:肌の状態に応じて、補助的に用いることがあります。

面皰圧出(めんぽうあっしゅつ)

詰まった毛穴の内容物(皮脂や角質)を、専用の器具を使って安全に押し出す処置です。赤く腫れる前のニキビの内容を取り除くことで、治りを早め、跡を残しにくくすることが期待できます。ご自身で潰すと皮膚を傷つけ、かえって跡が残りやすくなるため、処置は医療機関で行うことが大切です。

治療は「続けること」が大切です

ニキビ治療は、数日でぱっと治るものではありません。新しいニキビができにくい肌に整えていくには、少なくとも数か月、症状によってはそれ以上、根気よく治療を続けることが重要です。「効かなかった」と感じて途中でやめてしまう前に、お薬の使い方や治療の見直しについてご相談ください。

難治のニキビ・重症のニキビの選択肢について

保険診療の外用薬・内服薬をしっかり続けても改善が不十分な、繰り返す中等度〜重度のニキビに対しては、自由診療の選択肢として「イソトレチノイン」という内服薬による治療があります。皮脂の分泌や毛穴の詰まりに根本的に働きかけるお薬で、欧米では標準的なニキビ治療として用いられていますが、日本では現時点で保険が適用されず、国内で承認された医薬品もありません。

イソトレチノインは、効果が期待できる一方で、副作用の管理が欠かせないお薬です。とくに、妊娠中・妊娠の可能性のある方・授乳中の方は使用できません(胎児への重い影響が報告されているためです)。皮膚や粘膜の乾燥をはじめ、さまざまな副作用が知られており、治療中は定期的な検査による確認が必要です。

このお薬が向いているか、安全に使えるかは、一人ひとりの状態を丁寧に確認したうえで判断します。適応・費用・リスクの詳しいご説明はページ下部の「この治療を受けられる前に」をご覧ください。まずは保険診療での治療を十分に行い、それでも改善が不十分な場合の選択肢として位置づけています。

※イソトレチノインによる治療は自由診療(保険適用外)です。効果には個人差があります。国内未承認の医薬品を用いるため、下記「この治療を受けられる前に」を必ずご確認ください。

保険診療のニキビ治療と美容診療の使い分け

保険診療で治療できるのは、「今あるニキビ」と「新しくできるニキビ」です。一方で、炎症が治まった後に残ったニキビ跡(へこみ・赤み・色素沈着)は、保険診療のお薬では改善がむずかしく、自由診療(美容診療)の対象となります。

つまり、まずは保険診療でニキビ自体をしっかり治し、跡を残さないようにすること。そのうえで、すでに残ってしまった跡が気になる場合に、美容診療を検討するという流れが基本です。ニキビ跡の治療をお考えの方は、ニキビ・ニキビ跡が気になる方へ(美容診療)のページもあわせてご覧ください。

※ニキビ跡に対する美容診療は自由診療(保険適用外)です。効果には個人差があります。

ニキビは潰していいですか?

自分で潰すのはおすすめできません。指や器具で無理に潰すと、皮膚の深い部分まで傷つけてしまい、かえって炎症が悪化したり、赤みやへこみといった跡が残りやすくなったりします。とくに赤く腫れたニキビや膿をもったニキビは、潰したくなるお気持ちはわかりますが、そのままにして、早めにご相談ください。医療機関では、面皰圧出という安全な処置で毛穴の内容を取り除くことができます。

ニキビ跡は消えますか?

ニキビ跡には、赤み・茶色い色素沈着・へこみ(瘢痕)など、いくつかのタイプがあります。赤みや色素沈着は時間の経過とともにうすくなっていくこともありますが、深いへこみは自然には元に戻りにくいのが実際のところです。だからこそ、「跡になる前に治す」ことがいちばんの近道です。すでに残ってしまった跡については、タイプに応じた対応を美容診療で検討します。まずは、これ以上跡を増やさないために、今あるニキビの治療を始めることをおすすめします。

ニキビは何科を受診すればいいですか?

ニキビは皮膚の病気ですので、皮膚科が専門です。市販薬やセルフケアでよくならない、繰り返す、赤く腫れている、跡になりそうで心配、といった場合は、皮膚科でのご相談をおすすめします。当院では、皮膚科専門医が肌の状態を診たうえで、保険診療のお薬や処置を組み合わせ、一人ひとりに合った治療をご提案します。

ご自宅でできること(セルフケア)

治療とあわせて、日々のケアもニキビの改善を支えます。無理のない範囲で、次のことを心がけてみてください。

  • 潰さない・触らない:気になっても、指で触ったり潰したりしないようにしましょう。手の刺激や雑菌が、悪化や跡の原因になります。
  • こすらない:洗顔のときにゴシゴシこするのは逆効果です。よく泡立てた洗顔料でやさしく洗い、こすらずに落とします。こすると赤みや色素沈着の原因になります。
  • 洗いすぎない:皮脂を落とそうと1日に何度も洗うと、かえって乾燥し、肌のバリアが乱れます。洗顔は基本的に朝晩の2回で十分です。
  • 保湿をする:ニキビ肌でも保湿は大切です。ノンコメドジェニック(ニキビのできにくさを考えた)表示のある、刺激の少ない保湿剤を選びましょう。
  • 生活習慣:睡眠不足や偏った食事は、肌の状態に影響することがあります。できる範囲で整えていきましょう。

セルフケアだけで改善しない、悪化してきたというときは、我慢せず医療機関にご相談ください。

よくあるご質問

Q. 大人になってからのニキビも治療できますか?
はい。大人のニキビ(大人ニキビ)も、思春期のニキビと同じく「治療できる皮膚疾患」です。あごや口まわり、フェイスラインに繰り返しできることが多く、生活習慣やスキンケア、肌の乾燥などが関わることもあります。皮膚の状態に合わせて治療をご提案します。

Q. 市販薬でよくならないのですが、受診したほうがよいですか?
市販薬でよくならない、繰り返す、赤く腫れている、跡になりそうといった場合は、皮膚科での治療をおすすめします。医療機関では、面皰そのものをできにくくする外用薬や、炎症を抑える内服薬、面皰圧出などの処置を用いることができます。

Q. どのくらいで治りますか?
ニキビ治療は、数か月かけて「新しいニキビができにくい肌」に整えていくものです。効果の出方には個人差があり、症状が軽くなった後も、再発を防ぐために外用薬を続けることが大切です。焦らず、根気よく続けていきましょう。

Q. 外用薬を塗ると赤くなったりヒリヒリしたりします。やめたほうがよいですか?
アダパレンや過酸化ベンゾイルなどの外用薬は、使い始めに一時的な赤み・かさつき・ヒリつきが出ることがあります。多くは使い続けるうちに落ち着きますが、症状が強いときは自己判断で中止せず、量や使い方を調整しますのでご相談ください。

この治療を受けられる前に(費用・リスク・自由診療について)

以下は、難治・重症例の選択肢としてご案内する「イソトレチノイン(内服)」に関する情報です。保険診療の外用薬・内服薬・面皰圧出には該当しません。

  • 自由診療である旨・標準的費用:イソトレチノインによる治療は自由診療(保険適用外)です。アクネトレント20mg 30カプセル(1か月分)22,000円、定期的な血液検査 5,500円(いずれも税込)。服用中は、肝機能や中性脂肪などを確認するため定期的な血液検査が必要です。
  • 主なリスク・副作用:皮膚・粘膜の乾燥(唇・鼻・肌・目など)、肝機能障害、脂質異常症、気分の落ち込みなどの精神面への影響、筋肉や関節の痛みなどが報告されています。治療中は定期的な血液検査で状態を確認します。とくに、妊娠中・妊娠の可能性のある方・妊活中の方(男女とも)・授乳中の方は使用できません。服用中および服用後一定期間は、確実な避妊・献血の回避が必要です。
  • 未承認医薬品である旨:イソトレチノインは国内未承認の医薬品です。国内で同程度の効能・効果で承認された医薬品はありません。
  • 入手経路・国内承認の有無・諸外国での承認:当院医師の判断のもと、個人輸入により入手します。米国のFDA(食品医薬品局)など諸外国で承認されていますが、催奇形性や精神面への影響などの副作用も報告されています。

適応の可否は、皮膚科専門医が一人ひとりの状態を確認したうえで判断します。ご不明な点は診察時におたずねください。

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