股関節でお悩みの方

足の付け根が痛い、歩き始めや立ち上がりがつらい、長く歩くと痛みが強くなる、あぐらや靴下の着脱がしにくい――股関節の痛みには、このような特徴的なサインがあります。

股関節は、体重を支えながら脚を動かす、からだの中でも特に大きな関節です。日本では、生まれつき股関節の受け皿が浅いこと(寛骨臼形成不全)が背景にある方が多く、自覚のないまま少しずつ軟骨のすり減りが進んでいることも珍しくありません。「疲れのせい」「歳のせい」と様子を見ているうちに進行してしまう前に、いまの股関節の状態を確かめておくことが大切です。まずは整形外科専門医が診察・画像評価で原因を見きわめますので、お気軽にご相談ください。

こんな症状はありませんか

  • 足の付け根(そけい部)が痛む
  • 歩き始め・立ち上がりに股関節のあたりが痛む
  • 長く歩くと痛みが強くなり、歩ける距離が短くなってきた
  • あぐらがかきにくい、股を開く動作がつらい
  • 靴下の着脱や足の爪切りがしにくくなった
  • お尻や太ももが痛む、ときに膝のあたりまで痛みが響く
  • 左右で脚の動きや長さに差がある気がする、脚を引きずることがある

ひとつでも当てはまる場合は、股関節に何らかの変化が起きているサインかもしれません。

股関節の痛みはどこに出るのですか?

股関節の痛みで最も典型的なのは、足の付け根(そけい部)の痛みです。ただし、股関節は体の深い位置にある関節のため、痛みの出る場所は意外と幅広く、お尻・太ももの前や外側、ときには膝の近くにまで痛みが響くことがあります。

このため、「膝が痛い」と思って調べたら原因は股関節だった、あるいは逆に、股関節のまわりの痛みの原因が腰の神経にあった、ということが実際に起こります。股関節・腰・膝は痛みの場所が重なりやすく、自己判断がむずかしい部位です。診察では、痛む場所だけでなく、関節の動く範囲や歩き方、腰の状態もあわせて確認し、「痛みの本当の出どころ」を見きわめることから始めます。

症状のパターンから考えられる主な原因

歩き始め・立ち上がりに足の付け根が痛む

動き始めに足の付け根が痛み、しばらくすると少し楽になる。長く歩くと痛みが強くなる。このパターンで最も多いのは、股関節の軟骨が少しずつすり減る変形性股関節症です。日本では、生まれつき股関節の受け皿(寛骨臼)が浅い寛骨臼形成不全が背景にある方が多く、特に女性に多くみられます。進行すると、あぐらや靴下の着脱がしづらくなる、脚が短くなったように感じる、夜間や安静時にも痛むといった症状が加わってきます。

あぐらや深くしゃがむと、付け根が引っかかる・鋭く痛む

股を開く・深く曲げる・ひねるといった動作で、付け根に引っかかる感じや鋭い痛みが出る場合は、受け皿の縁にある軟骨(股関節唇)の損傷が考えられます。スポーツでの繰り返し動作のほか、寛骨臼形成不全のある方にも起こりやすいことが知られています。

スポーツのとき・そのあとに足の付け根が痛む

サッカーなどキック動作や切り返しの多い競技で、そけい部やその周囲が痛む場合は、使いすぎによる筋肉・腱の炎症(いわゆるそけい部痛症候群/グロインペイン)が考えられます。休むと楽になるが再開すると痛む、を繰り返すのが特徴です。

お尻から太ももにかけて痛む・しびれる

お尻から太ももの後ろや外側にかけての痛みで、しびれを伴う、座っていても痛むという場合は、股関節ではなく腰の神経の病気(腰部脊柱管狭窄症・椎間板ヘルニアなど)が原因のことがあります。また、太ももの外側の出っぱり(大転子)のまわりの腱や滑液包の炎症でも、横向きに寝ると痛むなどの症状が出ます。股関節と腰のどちらが原因かの見きわめが、治療の第一歩になります。

このほかの原因

まれに、骨の血流が悪くなる大腿骨頭壊死症や、関節リウマチ、疲労骨折などが股関節の痛みの原因となることもあります。頻度は高くありませんが、治療法が大きく異なるため、痛みが長引く場合は自己判断せず、診察と画像評価で確認しておくことをおすすめします。

年代によって多い股関節の悩み

  • 10〜20代:スポーツによる股関節唇の損傷やそけい部痛、成長期の使いすぎによる付け根の痛みが中心です。
  • 30〜50代:寛骨臼形成不全を背景にした変形性股関節症の初期症状が出やすい時期です。特に女性で、「歩き始めに付け根が痛む」「あぐらがかきにくい」といったサインがこの年代から始まることがあります。
  • 60代以降:変形性股関節症の進行による痛み・歩行のしづらさが多くなります。腰の病気による痛みが重なっていることも少なくありません。

年代はあくまで目安です。実際には診察と画像評価で原因を確認したうえで、治療方針をご提案します。

当院の股関節の診療

当院では、股関節の痛みに対して「正確な診断→保存療法→改善が不十分な場合の次の選択肢」という段階を大切にしています。

1. 診察・画像評価で原因を見きわめる

症状の経過や生活・運動の状況をお伺いし、関節の動く範囲や歩き方を確認したうえで、レントゲンで骨・関節の状態と変形の進行度を評価します。関節唇や軟骨、骨の内部の状態を詳しく調べる必要がある場合は、MRI検査を行います(連携施設での検査に対応しています)。股関節は腰や膝と痛みの場所が紛らわしいため、痛みの原因が本当に股関節にあるのかを正確に評価することが、治療と同じくらい大切だと考えています。

2. 保存療法(保険診療が基本)

原因と進行度に応じて、次のような治療を組み合わせます。

  • 内服・外用:痛みと炎症を抑えるお薬・湿布など
  • 運動療法(リハビリテーション):理学療法士が、骨盤を支えるお尻の横の筋肉(中殿筋)などの筋力訓練を中心に、股関節への負担を減らす体の使い方を指導します
  • 生活指導:体重の管理、深いしゃがみ込みや重い物の運搬を減らす工夫、必要に応じて杖の使用など、股関節への負担を軽くする日常生活の工夫をご案内します
  • 物理療法:症状に応じて、物理療法の機器を併用します

3. 改善が不十分な場合の「手術以外の選択肢」

保存療法を続けても痛みが十分に改善しない方に、再生医療(PRP療法・幹細胞治療など)という選択肢をご提案できる場合があります。股関節(変形性股関節症)も対象で、適応の有無は画像評価をもとに整形外科専門医が判断します。院長はスタンフォード大学整形外科で再生医療・幹細胞の研究に従事した整形外科専門医・医学博士であり、「再生医療だから勧める」のではなく、股関節の状態に照らして適応があるかどうかを評価したうえでご提案します。

※再生医療は自由診療(保険適用外)です。効果には個人差があります。

→ 股関節の再生医療/関節注射から再生医療への流れ

変形が進行している場合や、骨切り術・人工股関節などの手術が適していると判断した場合は、連携する専門医療機関へ責任を持ってご紹介します。

人工股関節をすすめられたら、手術しかないのでしょうか?

人工股関節の手術は、痛みの改善と生活の質の回復が期待できる確立した治療です。ただし、「すすめられたらすぐに受けなければならない」ものではなく、手術のタイミングは、痛みの程度や日常生活への支障をふまえて、患者さんご自身が納得して決めるものです。

変形の進行度によっては、運動療法や生活の工夫で痛みを抑えながら、ご自身の関節で過ごせる期間を延ばせる場合があります。また、保存療法で改善が不十分な場合にも、手術の前に再生医療(自由診療)という選択肢を検討できることがあります。一方で、変形が高度で日常生活への支障が大きい場合は、手術が適していることも事実です。大切なのは、レントゲンやMRIによる評価をもとに「いまの股関節に、どの選択肢があるのか」を知ったうえで判断することです。セカンドオピニオンとしてのご相談もお受けしています。

受診の目安(こんなときはご相談ください)

  • 足の付け根・お尻・太ももの痛みが2週間以上続いている、または繰り返す
  • 歩き始めの痛みが続く、痛みのために歩ける距離が短くなってきた
  • あぐら・靴下の着脱・足の爪切りがしにくくなってきた
  • 脚を引きずる、左右の脚の長さが違う感じがする
  • 夜間や安静にしていても股関節のあたりが痛む
  • 転倒したあと、股関節が痛くて立てない・体重をかけられない(この場合は骨折の可能性があるため、すみやかに受診してください)

変形性股関節症は、痛みをかばう期間が長くなるほど、お尻や太ももの筋力が落ちて股関節への負担がさらに増えるという悪循環に入りやすい病気です。「これくらいで」と思う段階でのご相談が、結果的に自分の関節を長く使うことにつながります。

ご自宅でできること(セルフケア)

股関節が痛いとき、温める?冷やす?

医学的には温めるのも冷やすのもどちらも痛みの軽減に有効で、症状とタイミングによる使い分けが大切です。スポーツや転倒のあとなど、急に痛くなって熱っぽさがあるとき(受傷からおよそ48時間)は冷やすのが向いています。慢性的な股関節の痛みやこわばり、朝の動き始めのつらさには、入浴などで温めて血行を良くするのが向いています。

体重と日常生活の工夫

股関節には、歩くだけでも体重の数倍の力がかかるとされています。体重の管理は、股関節への負担を減らす最も基本的な対策のひとつです。あわせて、深いしゃがみ込みや床からの立ち座りの繰り返し、重い物の運搬をできるだけ減らし、椅子・ベッド中心の生活に近づけることも負担軽減につながります。

筋力の維持

骨盤を横から支えるお尻の筋肉(中殿筋)は、歩くときに股関節を安定させる重要な筋肉です。横向きに寝て上側の脚をゆっくり上げ下げする運動など、痛みのない範囲での筋力維持が股関節を守ることにつながります。体重の負荷がかからない水中歩行も、股関節にやさしい運動としておすすめできます。ただし、どの運動が適しているかは股関節の状態によって異なり、自己流で痛みが強くなる場合は中止してください。当院ではリハビリテーションで一人ひとりに合った運動をご案内しています。

よくあるご質問

Q. 股関節が痛いのですが、歩いて鍛えたほうがいいですか?
A. 痛みを我慢しての長距離歩行は、かえって股関節の負担になることがあります。運動は大切ですが、「痛みのない範囲で」「負荷の少ない方法で」が原則です。水中歩行や、寝た姿勢・座った姿勢でできる筋力訓練など、股関節の状態に合った運動をご案内しますので、まずはご相談ください。

Q. レントゲンで「異常なし」と言われたのに、股関節が痛みます。
A. ごく初期の軟骨の変化や股関節唇の損傷、筋肉・腱の炎症、腰の神経が原因の痛みは、レントゲンには写りにくいことがあります。症状が続く場合は、MRI検査(連携施設に対応)や腰の評価を含めて、原因をあらためて調べることができます。

Q. 「臼蓋形成不全(寛骨臼形成不全)」と言われました。必ず変形性股関節症になりますか?
A. 全員が進行するわけではありません。ただし、股関節にかかる負担が大きくなりやすいため、体重の管理と股関節まわりの筋力維持、そして定期的なチェックが大切です。足の付け根の痛みが出始めたときは、早めにご相談ください。

Q. 股関節の再生医療は、最初から自由診療になりますか?
A. いいえ。股関節の痛みも、まずは保険診療での診察・検査から始めていただけます。画像で変形の程度を確認したうえで、再生医療が選択肢になるかをご相談ください。なお、保険診療と自由診療の再生医療を同じ日に行うことはできません。初回から自由診療の「再生医療初回カウンセリング」としてご受診いただくことも可能です。

この治療を受けられる前に(費用・リスク・自由診療について)

このページでご案内している治療のうち、次のものは自由診療(保険適用外)です。ご検討の前にご確認ください。

  • PRP療法:自由診療(保険適用外)です。標準的な費用は、白血球除去型PRP(PRGF-Endoret®)110,000円/回(計3回が標準)、高用量PRP(Angel™ HD-PRP)330,000円/回(いずれも税込)。料金は1部位ごとに発生します(例:両膝にPRGFを3回で660,000円)。別途、MRI評価・血液検査の費用がかかります。主なリスクは注射部位の一時的な痛み・腫れ・熱感・内出血で、感染等のリスクは低いとされますがゼロではありません。治療効果には個人差があります。用いるPRP調製システムはいずれも国内で承認・認証を受けた医療機器です(Angel™ cPRP System 承認番号 30500BZX00054000/PRGF-Endoret® 認証番号 30500BZI00007000)。
  • 幹細胞治療(MFAT・培養幹細胞):自由診療(保険適用外)です。標準的な費用は、MFAT 600,000円(1部位)/990,000円(2部位)、培養幹細胞治療 総額 2,200,000円(いずれも税込)。培養幹細胞治療は上記が総額で、MFATは別途、診察・検査の費用がかかります。症例によって追加の検査費用が必要となる場合がございます。主なリスクは脂肪採取部位の痛み・腫れ・皮下出血、関節投与後の腫れ・熱感、麻酔によるアレルギー(まれ)、培養工程での資材に伴うアレルギー(まれ)です。治療効果には個人差があります。MFATの調製には国内で承認を受けた高度管理医療機器「LIPOGEMS O キット」(承認番号 30400BZX00092000)を用います。なお、培養に用いる資材には国内承認を受けていないものを使用する場合があります。
  • 入手経路・国内の承認状況:いずれも国内の正規流通経路で導入しています。医師の個人輸入は行っておりません。くわしくは当院の自由診療についてをご覧ください。

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