肘でお悩みの方

物を持ち上げると肘の外側が痛い、タオルを絞るとズキッとする、パソコン作業のあと肘から前腕がだるい、小指側がしびれる――肘の症状は、原因によって適した対処が異なります。

肘は、手を使うすべての動作を支えている関節です。使いすぎによる腱の付着部の炎症(テニス肘・ゴルフ肘)が代表的ですが、ほかにも神経の圧迫によるしびれ、加齢や酷使による関節の変形、成長期のお子さんの投球障害(野球肘)や、腕を引っ張られたあとの肘内障(ちゅうないしょう)など、年代や場面によってさまざまな原因があります。「使いすぎだから休めば治る」と自己判断しているうちに慢性化してしまう方も少なくありません。まずは整形外科専門医が診察と画像評価で原因を見きわめますので、お気軽にご相談ください。

こんな症状はありませんか

肘の痛み
  • 物をつかんで持ち上げる、タオルを絞る、ドアノブを回すと肘の外側が痛い
  • 手首を手のひら側に曲げる、物を強く握ると肘の内側が痛い
  • パソコンのキーボード・マウス操作を続けると肘から前腕が痛む・だるい
  • 小指と薬指のあたりがしびれる、細かい手作業がしにくくなった
  • 肘の曲げ伸ばしがしにくい、動かすと引っかかる感じがする
  • お子さんが腕を引っ張られたあと、急に腕を動かさなくなった
  • 野球などの投球のあと、お子さんが肘の痛みを訴える

ひとつでも当てはまる場合は、肘のどこかに負担や変化が起きているサインかもしれません。

痛む場所・場面から考えられる主な原因

肘の関節は、上腕の骨と前腕の2本の骨で構成され、その周囲を腱・靭帯・神経が取り囲んでいます。「肘のどこが・どんな動作で」つらいのかによって、考えやすい原因が変わります。

肘の外側が痛い(物をつかむ・タオルを絞る・ドアノブを回す)

物を持ち上げる・絞る・ひねる動作で肘の外側が痛む場合、まず考えられるのはテニス肘(上腕骨外側上顆炎)です。手首や指を反らす筋肉の腱が、肘の骨への付着部で炎症を起こした状態で、テニスをしない方にも、デスクワーク・家事・重い物を扱う仕事など日常動作の繰り返しで多く発症します。→ テニス肘・ゴルフ肘

肘の内側が痛い(手首を曲げる・強く握る)

手首を手のひら側に曲げる動作や、物を強く握る動作で肘の内側が痛む場合は、ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)が考えられます。テニス肘と同じ腱付着部炎で、こちらも日常の手の使いすぎで起こります。→ テニス肘・ゴルフ肘

小指側がしびれる・細かい作業がしにくい

小指と薬指の小指側のしびれは、肘の内側で神経(尺骨神経)が圧迫・引き伸ばされて起こる肘部管症候群(ちゅうぶかんしょうこうぐん)が代表的です。進行すると、手の筋肉がやせて、箸使いやボタンかけなど細かい作業がしにくくなることがあります。神経の障害は進行してからでは回復しにくいため、しびれが続く場合は早めの評価が大切です。

曲げ伸ばしがしにくい・引っかかる

肘の曲げ伸ばしの範囲がせまくなってきた、動きの終わりで痛む、ときに急に動かなくなる――このような場合は、軟骨のすり減りによる変形性肘関節症が考えられます。スポーツや重労働で長年肘を使ってきた方に多く、関節内にできた骨や軟骨のかけら(遊離体)が引っかかりの原因になることもあります。

成長期のお子さんの投球後の痛み(野球肘)

野球などの投球動作を繰り返す成長期のお子さんが肘の痛みを訴える場合、野球肘と呼ばれる投球障害の可能性があります。成長期の骨は大人より弱く、「投げすぎ」のサインとして肘に痛みが出ます。特に肘の外側に起こるタイプは、初期には症状が軽くても進行すると治療に時間がかかることがあるため、痛みを我慢して投げ続けないことが重要です。

お子さんの肘のトラブル(肘内障)

小さなお子さん(1〜6歳ごろ)が、手を引っ張られたあとに急に腕を動かさなくなり、だらんと下げたままにしている――このような場合は、肘内障が考えられます。肘の靭帯から前腕の骨(橈骨)の先端が外れかかった状態で、脱臼や骨折とは異なり、多くは医師が徒手的に元に戻す処置で改善します。

ただし、転んだあとや腫れが強い場合などは骨折との見きわめが必要です。無理に動かしたりご家庭で戻そうとしたりせず、腕を動かさないようにして受診してください。

当院の肘の診療

当院では、肘の症状に対して「正確な診断→保存療法→改善が不十分な場合の次の選択肢」という段階を大切にしています。

1. 診察・画像評価で原因を見きわめる

痛む場所・痛みが出る動作・お仕事やスポーツなどの生活背景を丁寧にお伺いし、レントゲンや超音波(エコー)で腱・骨の状態を確認します。腱の傷み具合や関節の中を詳しく評価したい場合は、MRI検査を行います(連携施設での検査に対応しています)。今の症状の原因が何であるのかを正確に評価することが、治療と同じくらい大切だと考えています。

2. 保存療法(保険診療が基本)

原因に応じて、次のような治療を組み合わせます。

  • 安静・活動調整:痛みを起こす動作を整理し、腱や神経への負担を減らします
  • 装具:テニス肘用バンドなどで、腱の付着部にかかる力を分散させます
  • 内服・外用:痛みと炎症をやわらげる飲み薬・貼り薬・塗り薬
  • 運動療法(リハビリテーション):理学療法士が、前腕の柔軟性の改善や、負担のかかりにくい動作・負荷の調整を指導します
  • 注射:痛みが強い場合には、局所への注射を検討することがあります

3. 改善が不十分な場合の選択肢

保存療法を続けても痛みが長引く難治性の腱付着部炎(テニス肘・ゴルフ肘など)には、体の外から衝撃波を当てて血流の改善や組織修復を促す刺激を与える体外衝撃波治療を検討できます。治療の仕組み・流れ・費用は体外衝撃波治療のページをご覧ください。

また、ご自身の血液の血小板成分を利用して組織修復をサポートするPRP療法も、肘の腱付着部炎に対して痛みの軽減や機能改善が報告されており、症状の経過・画像評価・生活背景をふまえて医師が適応を判断したうえでご提案できる場合があります。すべての方に必要な治療ではありません。

※ PRP療法は自由診療(保険適用外)です。効果には個人差があります。体外衝撃波治療の保険適用は難治性足底腱膜炎に限られ、テニス肘・ゴルフ肘は自由診療です。

肘部管症候群の進行例や、変形・遊離体により手術が適していると判断した場合は、連携する専門医療機関へ責任を持ってご紹介します。

肘の痛みは、放っておいても治りますか?

軽い使いすぎによる痛みは、負担を減らすことで自然にやわらぐこともあります。一方で、テニス肘・ゴルフ肘は、仕事や家事で手を使い続けることで慢性化しやすく、痛みが長引いてスポーツや日常生活に支障をきたすことがあります。また、肘部管症候群のしびれは、進行して手の筋肉がやせてしまうと回復がむずかしくなることがあり、成長期の野球肘は、痛みを我慢して投げ続けると骨や軟骨の傷みが進むことがあります。「そのうち治る」と様子を見てよい状態かどうかの見きわめこそ、受診していただく価値のある部分です。

受診の目安(こんなときはご相談ください)

  • 物を持つ・絞る・握る動作での肘の痛みが2週間以上続いている、または繰り返す
  • 湿布や市販薬で様子を見ても、痛みが引かない
  • 小指側のしびれが続いている、細かい手作業がしにくくなってきた
  • 肘の曲げ伸ばしの範囲がせまくなってきた、引っかかって動かないことがある
  • お子さんが腕を動かさなくなった、投球のあとに肘の痛みを訴える
  • ほかの医療機関で治療を続けているが、なかなか改善しない

ご自宅でできること(セルフケア)

  • 痛みを起こす動作を減らす工夫:物を持つときは手のひらを上に向ける・両手で持つ・肘を体に近づけると、腱への負担が減ります。パソコン作業では、手首が反りすぎない位置にキーボードやマウスを調整しましょう。
  • 温める・冷やすの使い分け:使ったあとに熱をもってズキズキ痛むときは冷やすことが、慢性的な痛みやこわばりには温めて血流をよくすることが向いています。
  • 肘を曲げ続けない:小指側のしびれがある方は、長電話や頬づえ、肘を深く曲げたまま眠る姿勢を避けると、神経への負担をやわらげられます。
  • お子さんの予防:小さなお子さんの手を急に強く引っ張らないことが肘内障の予防になります。投球をするお子さんは、痛みがあるときに投げ続けないことが何より大切です。

ストレッチや装具の使い方など、テニス肘・ゴルフ肘の詳しいセルフケアは疾患ページでご紹介しています。セルフケアだけで痛みやしびれが続く場合は、無理をせずご相談ください。

よくあるご質問

Q. 子どもの「腕が抜けた」(肘内障)はくせになりますか?
A. 一度起こしたお子さんは繰り返しやすい傾向がありますが、骨や靭帯の成長とともに起こりにくくなっていきます。予防として、手や前腕を急に引っ張らないようにしてあげてください。繰り返す場合や腫れをともなう場合は、ほかのケガとの見きわめのため受診をおすすめします。

Q. 野球肘は、痛みがなくなればすぐ投球を再開してよいですか?
A. 自己判断での再開はおすすめできません。成長期の野球肘は、痛みが引いても骨や軟骨の修復が追いついていないことがあるためです。レントゲンや超音波で状態を確認し、段階的に投球を再開していくことが再発予防につながります。

Q. 手のしびれは、整形外科を受診してよいのでしょうか?
A. はい。手のしびれは、肘(肘部管症候群)や手首・首での神経の圧迫が原因であることが多く、整形外科で評価できます。しびれの範囲や誘発される姿勢から原因の部位を推定し、必要な検査をご案内します。なお、急に片側の手足の力が入らない・ろれつが回らないなどの症状をともなう場合は、脳の病気の可能性があるためすぐに救急医療機関を受診してください。

Q. テニス肘のバンド(サポーター)は市販品を使ってもよいですか?
A. 市販品でも構いませんが、装着する位置や強さによって効果が変わります。診察の際に、症状に合わせた装具の選び方・使い方をご案内しますので、お気軽にご相談ください。

この治療を受けられる前に(費用・リスク・自由診療について)

このページでご案内している治療のうち、次のものは自由診療(保険適用外)です。ご検討の前にご確認ください。

  • PRP療法:自由診療(保険適用外)です。標準的な費用は、白血球除去型PRP(PRGF-Endoret®)110,000円/回(計3回が標準)、高用量PRP(Angel™ HD-PRP)330,000円/回(いずれも税込)。料金は1部位ごとに発生します(例:両膝にPRGFを3回で660,000円)。別途、MRI評価・血液検査の費用がかかります。主なリスクは注射部位の一時的な痛み・腫れ・熱感・内出血で、感染等のリスクは低いとされますがゼロではありません。治療効果には個人差があります。用いるPRP調製システムはいずれも国内で承認・認証を受けた医療機器です(Angel™ cPRP System 承認番号 30500BZX00054000/PRGF-Endoret® 認証番号 30500BZI00007000)。
  • 体外衝撃波治療:対象となる疾患・条件により、保険診療となる場合と自由診療(保険適用外)となる場合があります。自由診療の場合の標準的な費用は、初回 5,500円/2〜3回目 8,800円/4回目以降の一連治療 5,500円(いずれも税込・2026年10月改定)。一連の治療は、前回の治療から2ヶ月以内を基準とし、2ヶ月を超えて間隔があいた場合はあらためて初回からの料金となります。主なリスクは照射部位の一時的な痛み・発赤・内出血です。治療効果には個人差があります。用いる機器は国内で承認を受けた医療機器です(BTL-6000 Focus® 承認番号 30300BZX00272000)。
  • 入手経路・国内の承認状況:いずれも国内の正規流通経路で導入しています。医師の個人輸入は行っておりません。くわしくは当院の自由診療についてをご覧ください。

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