とびひ(伝染性膿痂疹)

とびひは、皮膚に細菌がつき、掻いた手を介して次々に新しい場所へ広がっていく感染症です。正式には伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)といいます。

火事の「飛び火」のように、あっという間に離れた場所へ移っていく——この見た目から、とびひと呼ばれます。

夏に、小さなお子さんに多い病気ですが、大人にも起こります。

まず、親御さんへ

診察でよくうかがうのが、「私がちゃんと見ていなかったから」というお言葉です。

そうではありません。

とびひは、虫刺され、あせも、湿疹、すり傷といった、子どもなら誰にでもあるものから始まります。そこを掻いてしまうのは、かゆいからです。避けようのないきっかけから起こる、ごくありふれた病気です。

大切なのは、気づいた時点で、広がりを止めること。ここからのことをお伝えします。

保育園・学校はどうするか

もっとも気になる点だと思いますので、先にお答えします。

とびひは、学校において出席停止が定められた感染症ではありません。

ただし実際には、患部の状態と、園や学校ごとの方針によって判断が変わります。

一般的な考え方

  • 患部を覆えて、じくじくが他の子に触れない状態であれば、通常は登園・登校できると考えられています
  • 範囲が広い、覆いきれない、じくじくが強い場合は、控えることが望ましいことがあります
  • 発熱がある場合は、休んでください

実際には

園や学校によって、独自の方針を定めていることがあります。 「治癒証明が必要」「医師の許可があれば可」など、対応はさまざまです。

まず園・学校に確認していただき、必要な書類があれば診察時にお伝えください。 その場で対応できます。

プールは

治るまでお休みしてください。 水を介してうつるわけではありませんが、肌が直接触れ合うこと、タオルやビート板の共用で広がる可能性があります。

広がりを止める3つのこと

とびひが広がるのは、掻いた手が細菌を運ぶからです。逆に言えば、この経路を断てば広がりは止まります。

① 爪を短く切る

これが最も効きます。 爪が短ければ、掻いても皮膚が壊れにくく、爪の間に細菌が入りにくくなります。

気づいた日に、まず爪を切ってください。

② 患部を覆う

ガーゼで覆い、テープでとめます。他の場所や、他の人に触れないようにするのが目的です。

じくじくした部分は、1日に何度か交換します。

③ 石けんでやさしく洗う

「洗うと広がるのでは」と思われるかもしれませんが、逆です。

シャワーで、石けんを泡立てて、やさしく洗ってください。 細菌や、じくじくした分泌物を落とすことが治療になります。

こすらないでください。 泡でなでるように洗い、しっかり流します。

湯船につかるのは、治るまで控えてください。 兄弟がいる場合はとくに、湯船の共有で広がることがあります。シャワーだけにして、順番は最後に。

家庭で気をつけること

  • タオルを分ける:これは必ず。使い回さない
  • 衣類・タオルは通常の洗濯で構いません
  • 兄弟の入浴は先に、本人は最後にシャワー
  • こまめに手を洗う:本人も、お世話をする方も
  • 鼻をいじる癖に注意:鼻の中に細菌がいることがあり、そこから広がることがあります
  • プール・水遊びは治るまで休む
  • 肌が直接触れ合う遊び、格闘技系のスポーツは控える

症状と種類

水ぶくれができるタイプ(水疱性膿痂疹)

小さなお子さんに多く、夏に多いタイプです。

  • 透明な水ぶくれができる
  • 破れて、じくじくした赤い面が出る
  • かゆみがある
  • 掻いた手で触った場所に、次々に新しい病変ができる
  • 鼻の周り、口の周り、手足から始まることが多い

かさぶたができるタイプ(痂皮性膿痂疹)

  • 厚いかさぶたができる
  • 赤みと痛み
  • 発熱、のどの痛みを伴うことがあります
  • 季節を問わず、大人にもみられます

こんなときはご相談ください

  • 範囲が急に広がってきた
  • 発熱がある
  • 患部の周りが赤く腫れて、熱をもってきた
  • 食欲がない、元気がない
  • 顔、とくに目の周りに広がってきた
  • アトピー性皮膚炎のあるお子さんで、とびひができた
  • 治療しているのに、数日経っても良くならない
  • おしっこの色が濃い、量が減った、まぶたが腫れる(治ったあと数週間以内に)

アトピー性皮膚炎のあるお子さんは、皮膚のバリアが弱いため、広がりやすく、治りにくいことがあります。 早めにご相談ください。

診断と治療

問診では、いつから、どこから始まったか、きっかけ(虫刺され・湿疹・すり傷)、広がり方、発熱、ご家族に同じ症状の方がいないか、アトピー性皮膚炎などの持病をうかがいます。

診察では、水ぶくれ・びらん・かさぶたの状態、分布、範囲、周囲の炎症を確認します。多くの場合、見た目と経過で診断がつきます。

必要に応じて、患部から検体を採って細菌の種類と有効な薬を調べる検査を行うことがあります。

治療

  • 抗菌薬の塗り薬:患部に塗ります
  • 抗菌薬の内服:範囲が広い場合、発熱がある場合など
  • かゆみ止めの内服:掻くことを減らすのが治療の一部ですので、かゆみが強い場合には併用します
  • もとになった湿疹・虫刺されへの対応:ここを治さないと繰り返します

多くは、数日で新しい病変が出なくなり、1〜2週間で落ち着きます。

内服の抗菌薬が出た場合は、指示された期間、飲みきってください。 良くなったからといって途中でやめると、ぶり返すことがあります。

もとになった原因への対応が、再発を防ぎます

とびひは、何もないところには起こりません。 必ず、きっかけになった皮膚のトラブルがあります。

  • 虫刺され
  • あせも
  • 湿疹・アトピー性皮膚炎
  • すり傷

とびひが治っても、この「もと」が残っていれば、また掻いて、またとびひになります。

夏に何度も繰り返すお子さんは、あせもや湿疹のコントロールができていないことが多いのです。

とびひが治ったあと、もとの皮膚の状態を整えておく——これが、次の夏を楽にします。とびひの治療が終わったタイミングで、そのご相談もあわせてどうぞ。

夏に多い理由と、季節ごとの備え

とびひは6月から9月に集中します。理由を知っておくと、備えができます。

なぜ夏に多いのか

  • 汗をかく:あせもができ、かゆくて掻く。そこが入口になります
  • 虫に刺される:屋外遊びが増え、刺されたところを掻きます
  • 肌の露出が増える:すり傷、虫刺されができやすく、また覆いにくい
  • プール・水遊び:肌が直接触れ合う機会が増えます
  • 細菌が増えやすい:高温多湿の環境

つまり、「掻くきっかけ」が夏に集中するということです。

夏の前にやっておくとよいこと

① 湿疹・あせもを整えておく
すでに湿疹があるお子さんは、梅雨に入る前に治しておくと、夏が楽になります。

② 虫よけの準備
虫刺されは最も多いきっかけのひとつです。虫よけと、刺されたあとの早めの対応を。

③ 爪を短く保つ習慣
夏の間は、週に一度は爪を確認するくらいの意識でちょうどよいと思います。

④ 汗をこまめに流す
汗をかいたらシャワーで流し、しっかり乾かす。あせもの予防になります。

毎年繰り返しているお子さんは、6月ごろに一度ご相談ください。 症状が出る前に皮膚の状態を整えておくことが、いちばん確実な予防になります。

よくあるご質問

Q. 大人にもうつりますか?
うつることがあります。お世話をされる方は、触れたあとに手を洗ってください。 ただし、大人は皮膚のバリアがしっかりしているため、お子さんほど広がりやすくはありません。

Q. 兄弟にうつさないためには?
タオルを分ける、湯船を共有しない(本人は最後にシャワー)、患部を覆う——この3つで、かなり防げます。

Q. 冷やしてもよいですか?
かゆみが強いときに、保冷剤をタオルで包んで軽く当てる程度は構いません。患部を直接冷やしすぎないようにしてください。

Q. 市販の薬でよいですか?
市販のステロイド外用薬は、細菌感染では悪化させることがあります。 とびひが疑われる場合は、自己判断で使わずご相談ください。

Q. 保育園から治癒証明を求められました。
診察のうえ対応できます。園の書式がある場合はお持ちください。

Q. 何度も繰り返します。
もとになる皮膚のトラブル(あせも・湿疹・アトピー性皮膚炎)が残っていることが多くあります。そちらへの対応が再発予防になります。

Q. 何科を受診すればよいですか?
皮膚科でご相談いただけます。お子さんの皮膚のトラブルにも対応しています。

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